第5話 ランチ前


「ホームルームの時間だ。あれ、二人来ていないようだね。たしかー。神崎と船堀が居ないな」

「特に報告はない。時間割りや委員会、部活などの連絡を書いておくから見てくれ」

「以上」


 教師はめんどくさがりな感じの人だった。この高校は自由な高校なので服装のことをいちいち注意したりしないで済みそうなのでこういうめんどくさがりな人にはまだましな部類にはいるのではないのだろうか。

 もしかしたらこの高校ならば顧問が部活を見る必要がないとかありそうだ。生徒の自主性に任せるとかどうとかで。授業は大丈夫だろうか、なんだか不安になってきたな。


「今日は自由にこの教科書を読んで勉強しましょう」とかありそうだ。まあそこまで行くと放任しているだけになってしまうので無いとは思うが。


「一時間目は英語だ。英語は比較的得意なんだ。わからないことがあったらランチのときに教えてやる」

「ありがとう」


 まあ近衛さんは英語は得意なんだろうけどどの教科も微々たる差なんだよな。取り合えず男友達を作りたいな。ということで後ろを見るとノートにマンガを一心不乱に描き続けている男子が居た。

 今話しかけられそうな雰囲気じゃないな。後ろの男子は漫画家志望なのだろう。前の男子はー寝ている。まあ、焦らなくても大丈夫だ。他のクラスには知り合いがいるし、隣にはそこそこ仲が親しい近衛さんも居るしな。


 前の男は寝続け、後ろの男はマンガを描き続けて四時間目になった。ちなみに授業は俺が危惧していたようなことにはならず普通の授業だった。良かった。


「では屋上にでも行こう」

「そうだな」


 いつものことなんだが高校生になってからこうして近衛さんとやり取りをすると何だが俺に気が有るのではないかと思ってしまう。

 だが、相手にはそんな気は微塵も無い。恐らく俺が青春らしい青春を求めるがゆえの勘違いだ。というかこういう些細なことで相手は俺に惚れているという勘違いは男子共通の勘違いだろう。俺だけではないはずだ。弁当を取り出しながら俺は心の中で自分に弁明をする。


 屋上に着くと太陽の温かさを感じる。この時期の屋上はとてもポカポカしていて気持ちがいいものだ。あまりの気持ちよさに思わず俺は目を細めてしまう。


「ここのベンチで食べよう」

「ああ」


 俺は近衛さんが座っているベンチへと向かい、座った。

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