第6話 ランチをしようかな

 俺は座ると俺のひざに手持ちの弁当を包んでいる風呂敷を広げる。正直に言って教室や食堂で食べるか弁当はあきらめパンを購買で買い食べるかしたかった。だが近衛さんの中学生の頃のクラスメートがいるから教室も食堂も購買にもいけないのだろう。

 屋上には誰も居ないので誰の目もない。もしあるとしたら神様の目だろう。だけど、何か俺が近衛さんの彼氏だと勘違いされそうな気がする。気のせいだ、


「スクーーープを発見しました!!!」

「誰だよ!!」

「あのクールな鈴さんに弁当を一緒に食べるような男が居た!これはスクープです。新聞部に入れます」

「だから、誰だよ。というかボッチ飯が当たり前みたいに言うなよ。近衛さんに失礼だろ」

「登校中に鈴さんを見つけて馴れ馴れしくした女子高生MOB1です」

「MOBはそんなに影が濃くねぇよ!」

「冗談ですよ。噂大好き、スクープ大好き、アニメ好きの津田 佳奈つだ かなです。キラッ」

「キラッ。じゃねぇよ。何でみくるビームみたいな動作をしているのに言葉でキラッとか言ってんの」

「ニワカ乙ですね。これは某超時空シンデレラがやっていた奴ですよ。あの名作を知らないとは」


 何だこの非常にハイテンションな奴は。さすがにこのテンションを昼食中に持ち込まれても困るんだ。恐らくこの子は四六時中このテンションなのだろう。俺もたまにテンションが上がることがあるが持続は全然しないし、あそこまでハイテンションでもない。


「卵焼きを作りすぎたのだが卵焼きを食べてはくれないだろうか」

「無視か。まあ、確かにそれが一番かもな。相変わらずのドジ、!!」

「天然言うな」


 俺の口に喋っている途中なのに卵焼きがねじ込まれる。近衛さんが心なしか頬が朱色に染まっている気がする。いや、そうなんだろう。ドジといわれるのは近衛さんの性格からすれば恥ずかしいことだろう。

 というか万人なら恥ずかしく思うことだろう。というかたくさん作りすぎた卵焼きを貰うとか近衛さんは俺に気があるのでは?いや、そんなことは無い。それは傲慢というやつだ。俺のスペックはすべてが普通、もしくはちょっと上ぐらい。近衛さんをヒーローのように助けたことすらも無い。


 要するに近衛さんが俺を好く理由がない。そうやって勘違いするのは俺が恥ずかしいし近衛さんにも悪いな。なるべく勘違いしないようにしよう。


「お、これは学園ラブコメ系主人公にありがちなイベントが発生していますね。ということはもう鈴さんは攻略されてしまっているということでしょう。私も攻略されてしまうかもしれません」

「そんな俺を危険物のような目で見るなよ。アニメじゃないんだから。現実とアニメを混同するなよ」

「バ、バカな。某ギャルゲの神の主人公は女を落としまくってたのに」

「いや、それもアニメだから」


 突然津田はガクリと首をうなだれた。アニメと現実は違うという事実を耳にしてそうとうショックだったらしい。意味がわからない。というかリアクションも大げさだ。

 俺は津田がそのまま帰ったので(大丈夫かな)と一抹の不安を覚えながら、弁当を食べだした。



「コンピューター部から何で文芸部に変えたんだ?」

「な、なぜかというとだな。・・・最近読書を始めたので興味を持ったんだ」

「そうか」


 こんな会話をしながら楽しくおいしく弁当を食べた。

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