第2話 登校

 中二病の集まりである文芸部に入ったところで俺はこのまま中二病になってしまう訳ではない。

 文芸部に入ったって問題無いだろう。入りたい部活も文芸部以外は無かったし、クラスメイトとも普通に接すれば中二病じゃないということはわかってくれるだろう。


 そんなことを思っているとなんだかんだで一緒に登校していた痛々しい少女が唐突に言い出した。


「目がぁ。暴れるなパラドックス!!く、制御系の魔方陣の不備か。見直さないとダメだねこれは」

「リ、なんでもない」


 つい、「リアルだな」なんてことを言ってしまいそうだったが、何とかこらえた。本当に思っているからか、やけに演技がリアルなのだ。

 たぶん、この子が今のように自分の設定をロールプレイするぐらいの演技力が常に出せるのならば、ドラマに出れるだろう。それぐらいの演技力なのだ。


 ところで別に隣に居てくれてもいいのだが、なんでこの子は隣にいるのだろう?気になる。まあ、理由にこの子の中二病の設定が関わってくることは九分九厘間違いないだろう。

 思い直して見るとこの子は面白いのだが、やはり隣に居るとまずいかもしれない。


 このままいけば、話すら聞いてもらえない可能性がある。そしたら誤解を解くとかそういう次元の話ではなくなってしまうな。

 悪いけど、ひとまず隣を歩いてもらうのを止めてもらおう。


「悪いんだが、勘違いされる恐れがあるからひとまず一緒に歩くの止めないか」

「ああ、確かにな。君まで、異世界から来た客人に勘違いされる恐れがあるな。じゃあ、入ってくれよ」

「ああ、」


 あっさり離れてくれたな。何となく俺の隣を歩いていたのかもしれない。言い訳に使って気づいたが恋人同士の関係に見られちゃう恐れもあったな。

 ただ、普通の人は無言で一緒に歩く男女同士を恋人同士とは見ないか。もしも噂を立てられると鎮火するのには苦労しそうだ。


 クラスのイケメンが学年のマドンナ的存在の女の子と一緒に歩いただけで「美男美女のお似合いカップルが誕生した」という噂が一ヶ月間とちょっと流れたからな。

 俺の経験則だが、面白い噂ほどなかなか鎮火しないと思っている。そして今回のは噂になった場合そこそこ面白い噂にはなりそうだと思う。


「あの痛い○○さんと入学直前から付き合っている物好きの一年生がいる」


 ほら、なかなか面白いだろう。たぶんイケメンと美女が付き合ったというよりも興味が惹かれる人も多いと思う。

 ていうことは一ヶ月弱は流れたらこの噂が続くのか、困るな。もしかしたら、もっとこの高校では長引くかもしれないな。新聞部とかあるし。そういえば、新聞部が二つあった。

 第一と第二が。なにがあったんだろう。まあ、どうでもいいか。そんなことを思いながら俺は高校に着いた。


 高校に着くと毎回目を引かれるのはアニメとかマンガで良く見るさくら並木があるべき場所に変なオブジェが立ち並んでいる姿だ。

 しかも、形が変なわけだけではなく、ご丁寧に色まで変な色使いをされていて、見ると目が痛くなる。そして、おかしいことにオブジェのおくには校舎と同じ材質の白い壁とその前に良くある木に紙が張っているタイプの看板が設置されており、看板には『落書き自由』と大きく書いてある。


 落書きする奴は結構いるらしく、『モテてぇー』、『我が名はアーク』という文字の落書きからうんちやハートを絵で書いてある落書きもある。

 うんちは消せよ。風紀委員とか居ないのか?それにしてもこんなフリーダムな学校なのによく偏差値60を越えているな。


 人気だから必然的に偏差値があがるんだろう。そうじゃないと説明がつかない。そんなことを思いつつ俺は高校に入った。

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