中二部!
龍虎
中二部!いち。
中二部集結
第1話 運命の書《アカッシクレコード》に書かれし出会い
「ああ、良い天気だなー」
空には澄み渡る青い空と俺の体をポカポカさせてくれる太陽がある。まるで、俺が甘酸っぱい恋が出来る良い青春らしい青春が訪れることを示唆しているような良い天気だ。
中学生時代は甘酸っぱい恋が出来る青春らしい青春が始まると思っていたのだが恋にまつわる出来事は一切起きなかった。そう一切起きなかったのだ。
だが、今回はそんなことは万が一にも起こることはない。なぜか、といえば高校見学のときに文芸部の女の子に一目惚れしたからだ。
中学校の時は好きな女子も好みのタイプである儚げな少女に当てはまる女子は一切いなかった。なので、俺から告白するということは無かったが、今回は好きな女子がいるので甘酸っぱい恋が出来る青春はイレギュラーなことが無い限りあるだろう。
そんな風に薔薇色の青春を思い描いていると十字路に差しかかるというところでカッカッカ、足音がしてきた。これは少女マンガなどで昔あったシチュエーションかもしれない。
そのシュチエーションとは主人公である少女が遅刻してトーストを口に咥えながら「遅刻、遅刻~」といいながら走る。そして、今目の前にあるような十字路や曲がり角で運命の人とぶつかるのだ。
ということはそのお約束通りなら相手は俺を好きになる人だろう。そして、ぶつかってきたのが先輩ならば両思いということになり、俺が告白すれば恋人同士になってデートというのが出来るようになるはずだ。
俺は(先輩ならばいいな)と思いつつ十字路に出た。音のするほうに向くとなにやら変な模様が書かれた手の平が見えた瞬間、ゴン。誰かと結構な勢いで激突した。
反射的に閉じてしまった目を(痛いなー)と思いながら腰をさすりつつ開くと、少女が居た。その少女は白いマーカーで魔方陣と思われる幾何学模様が書かれた黒い眼帯を右目に付けていて、腕をまくっており右腕には変な模様が手の平につながるように書かれている。
制服は俺の入学した東京自由高校の制服を着ているので同級生か先輩だろう。
確かにあの高校のパンフレットには『自由を愛する高校です』とでかく書かれた高校の名前の次に大きく書いてあったが目の前の少女の格好は大丈夫なのか?
少なくとも一般の都立高校ならば校則違反で厳重注意、重い場合は停学にまで発展することだろう。やはり、現実は少女マンガなどという創作物とは大きく違う(と思いたい)。この少女の運命の人が俺ではないだろう(と思いたい)。
中二病患者は中二病患者がちょうど良いと思う。あの先輩かもしれないと思ったのだが、あの先輩ではなかった残念だ。そんなことを思っていると、痛々しい少女が痛々しいセリフをはき始めた。
「よくやった。罪深き龍であるパラドックスよ。邪悪な龍である貴様を封印しわざわざ使役した甲斐があった」
「ネーミングセンスねぇな!!」
つい、アイツのネーミングセンスが無さ過ぎて初対面なのにツッコんでしまった。それにしてもこの声は聞いたことがある。恐らく高校見学であったのだろう。
だが、高校見学の時には中二病は見た覚えがない。そのときは声だけ聞いたのだろうか。そんなことを考えていると少女は俺のツッコミを無かったことにして話し続けた。
「君に『この世界を紡ぐのに選ばれし者が一堂に会する機関』に入ってもらいたい」
「やっぱり、お前ネーミングセンスねぇな。無理やり中二感を出そうとして無駄に長くなっているし。えーっと要するにその部活はー、文芸部か!?」
「選ばれし者以外はそう呼んでいる」
ということはだ。もしも文芸部が二つ無かったとしたらあの先輩もコイツと同じ部活に所属していることになる。
だが、なぜ俺にその部活に入って欲しいかは解らないのでその問題は置いておいて(思考停止とも言う)それについて聞いてみた。
「なぜ俺にその部活に入って欲しいんだ?」
「選ばれし者以外の一般人があの部活には居ない。なので一般人にも入って欲しいのだ。それでこの私の右半身に封印されている罪深き龍、パラドックスが入ってくれそうな者を探してくれ、そして君に辿り着いた」
「選ばれし者というのは?」
「私のように邪悪な龍を封印していたり、魔術を行使できたり、墜天使の生まれ変わりだったりする者だ」
「OK、わかった」
要するに中二病ということだろう。そして、中二病しか今の文芸部には居ないらしい。ということはあの少女はもう文芸部に居ないのだろう。
念のために俺が高校見学に来たときに中二しかいなかったのか聞いてみた。
「ちゅう・・・ゴホン。もう選ばれし者しか最後の高校見学のときには居なかったのか?」
「ああ、居なかった。だからといって、もう入ってくれる人が居なかったからな。一年が入ってくるまで待つことにした」
俺はガックリとうなだれた。あの
たが、俺はあの先輩が儚げな感じの中二だと願って了承してしまった。
「ああ、入ってもいいよ」
確かに、俺は少女マンガ通りに運命の出会いは果たしたのであった。
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