第12話
「早く起きてっ! た、大変なんだ!」
まだ眠気が残っている状態のおれに、レスポールは緊迫した声音で叫んだ。
「……。ど、どうしたんだよ」
寝起き特有の口の中のパサつきを感じながら、邪魔くさそうに言う。
「
「た、時空記録管理局?」
おれは聞き慣れない単語を思われず復唱してしまう。
「タイムマシンによる時間旅行に関することを管理している組織だよ」
おれは寝起きということもあるが、話の意味が全く分からず首をかしげる。
「タイムマシンは本来、過去や未来を忠実に知るために、研究者や学者、学生などが使用するものなんだ。それで、タイムマシンの使用にあたって決まりがあるの。その1つは、出来事に無干渉でいること」
レスポールは早口で説明する。
「出来事に無干渉……?」
「そう。例えば、日本の戦国時代に行ったとして、織田信長が本能寺の変で明智光秀の裏切りによって死ぬってことを本人に告げ、その当日に本能寺に行かせなければどうなると思う?」
「死なずに天下統一したかもしれない……」
おれは小声で呟く。それにレスポールは頷き、続きを話す。
「つまり、歴史が変わるの。そうなると、新たな世界軸で
「……。平行世界が生み出されたら何がダメなんだ?」
「それは、平行世界の数が時空記録管理局によって決められてるからなんだ」
漢字の羅列に頭を混乱させながらも、おれは必死に理解に励む。
「ど、どういう意味なのかさっぱりわからない」
寝起きの頼りない頭をフル回転させるも理解できない内容をさらに問う。
「時空記録管理局は世界軸の数を決めてるんだよ。それでも人は違った選択することはある。でもそれは修正の効かないものじゃない。だから彼らはどこかで選択を強制する。そして平行世界の数を一定に保つ、それが彼らの仕事なんだ。
でも、死ぬ未来を変えるなんて大それたことをすると修正が効かなくなる。だから出来事に無干渉でいないといけないの」
曖昧な理解しかできていないがこくこくと頷いた。そして、その機関に見つかって何がまずいのか、わからなかった。
「そして、もう一つ。その世界の民に接触しないこと」
レスポールはまくし立てるように告げた。
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