第11話

「ど、どうしたんだよ!」


 先を駆けるレスポールに声をかける。

 返事が返ってくるわけでもなく、レスポールはただただ戻ることに専念しているようだ。


「何なんだよ」


 ため息混じりにそう吐き、後を追う。




 タイムマシンに戻った2人の間には、微妙な空気が流れていた。


「な、なぁ」


 それを断ち切るかのようにそう切り出した。

 すると、レスポールが勢いよく「ごめん!」と叫ぶ様に言いながら頭を垂れた。


 おれは状況が飲み込めずキョトンとした顔を浮かべていた。


「さっきは、ごめん」


「え、えっと……」


 返事に困る。それを見てもレスポールは、ただひたすらに謝るだけだった。


「うん、まぁ。いいんじゃない」


 何度も何度も謝るのが理由も解らないし、おれが許しを出すのもどうかと思ったがそう言った。

 それを聞いたレスポールの表情は、パッと明るくなり「ありがとう」と小さくつぶやいた。


「なぁ、お願いがあるんだけど」


 それを見てからおれはそう呟いた。


「なんだい?」


 いつもの調子に戻ったレスポールが応える。


「一旦家に戻りたいんだ。服も今着てる制服しかないと不便だし……、色々持ってきたいんだけど……」


「なんだ、そんなことか。全然いいよ、丁度世界軸も時間軸も同じだし」


 レスポールはそう応えると、謎のボタンを操作しだした。


「ねぇ、さっきの」


 操作しながらそう呟くレスポール。

 また謝るのか?

 心底でそんな疑問が湧き上がったが、どうやら違うらしい。


「影の操り人形ファントム・パペットって、やっぱり……」


「おれもそう思う。やっぱりあの魔獣は誰かに意図的に産み出されてる」


「だ、だよね。ってことは、宝玉ミスリルストーンを盗み出したのも、もしかして……」


 ボタンの操作を終えたレスポールは、こちらに向かって歩きながらぼそぼそとつぶやく。


「ねぇ、どう思う?」


 どこに対してどう思うだ? レスポールの意図が伝わりにくい質問に、おれは少し顔をしかめる。


「さぁ、わかんねぇ」


 とりあえず、の答えを告げた。

 ふわぁ。と大きなアクビが1つ。それに釣られるようにレスポールも1つ。


「なんか眠たいね」


 レスポールが微笑しながらそう語りかけるように告げる。


「いま何時なんだ?」


 あまり気にはしてなかった時間がアクビにより気になり訊く。


「んーと、恐らくだけど夜中の2時頃かな?」


 さらっと言うレスポールにおれは目を丸くして驚く。


「に、2時……。そんな時間、テスト前でも起きてたこと無いぞ……」


「あはは、ごめんね。タイムトラベルって、時間かかるんだ」


 自嘲気味にそう告げるレスポールにおれは大きく息を吐いて、その場に寝転がった。

 そんなにかかったように思わなかったのにな……。そんな思考が巡るも眠気には勝つことはできなかった。


「じゃ、おやすみ」


 大の字で転がった状態で瞼を閉じてからそう告げた。

 それからレスポールに起こされるまでおれは泥のように眠っていた。

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