第13話
「民に接触……?」
おれはレスポールの言葉を繰り返した。
「そう、接触」
それから少し間を開けてからレスポールは口を開いた。
「いま僕が剛くんをここに連れ出しているけど、君がいるべき世界の君はどうなっていると思う?」
レスポールの質問の意味を理解するまでに時間がかかり答えるまでに時間がかかる。
「……、いなくなってる?」
レスポールは少し俯く。
「半分正解だね。最初は単に家出みたいな感じでいなくなってるだけなんだけど、あまりに長い間、君がいないとその世界に最初からいなかったことになるんだよ」
「えぇ。そ、それは、ど、どういう?」
「本当はもっと複雑なんだけど、簡単に言えば忘れられるってことなんだ」
息を呑んだ。存在が無かったことに……。嘘だろ……。
畏れを抱きながら喉を鳴らし、震えた声で尋ねる。
「親、からも?」
「そうだね。世界が君を拒むようになるから、君の写った写真も君だげが消えたりするんだ」
「……。そ、それってどれくらい世界を離れると起こるの?」
「1年がリミットだね。ごめんね、巻き込んじゃって」
バツが悪そうに顔を歪めながら小さく言う。
「ホントだよって言いたいところだけど、あのまま元の世界にいたところで家族とか、友だちとか失うだけだったと思うから……」
「そう言ってもらえて良かった。1年以内にやり遂げよう」
こくり、と頷く。それを見てレスポールは続けた。
「それでね、もしその2つのうち1つでも破ぶると処刑されるんだ」
あまりのことにおれは言葉すらでなかった。
いきなり展開すぎるだろ。しょ、処刑ってやり遂げる前に死ぬじゃねぇーかよ!
「僕はいま、それを2つとも犯している。捕まれば終わりだ」
自虐的な笑みを浮かべながらそう吐く。
「で、僕はそれを撒こうと思うんだ。剛くんは君の世界で降ろしてあげる。それで、君の世界の午後7時に君の家の前に迎えに行く」
「わ、わかった」
「じゃ、降りて!」
あまりの急展開に驚きを隠せない。しかし、レスポールはそんなことはお構い無しで、おれをタイムマシンから押し出す。
「寝ているうちに到着するように設定してたんだ。じゃ、行って!
また後でね!」
「う、うん」
戸惑いを隠せない声音で返事をする。
「迎えに来れなかったら、その時は……ごめんね」
おれを追い出し、ドアを閉める寸前にそう呟いたのが風に乗っておれの耳まで届いた。
慌てて「そんなこと言うなよ!」と言おうと振り返った。
しかし、タイムマシンの姿はもう無く、旅立った後だった。
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