第8話
1999年の中国の荒れた街を後にして、おれはレスポールとともにタイムマシンに乗っていた。
「君のせいなんかじゃないよ。あの子は、あそこで死ぬ運命だったんだ。それは例え僕たちが未来から来た存在であっても変えることはできない」
目頭にうっすらと涙を浮かべ、レスポールは言う。
何か話そうとしても心の奥でそれをせき止められ、ただ黙っていることしかできなかった。
「次に強い反応を検知したから、そこに向かうね」
やはりまだ悲しみは拭い切れず、声に元気がない。
それがわかってしまうのでやるせない気持ちになる。
ふと目を閉じればおれが魔法を外したシーンが蘇る。
「で、君があまりに早く魔法を習得できたことだし、偉大なる10人のことについて説明するね」
レスポールは空元気でそう言うと設置してある椅子に座るように促す。
「偉大なる10人。彼らは、今の僕たちにあるように"潜在魔力"があったんだ。そして彼らは突如現れた魔獣を封印すべく、その魔力を用いて1つの
「それが封印に必要な宝玉?」
「そう。そしてその宝玉は何故か"ココロ島"に封印された。まだ航海術さえ存在しなかった時代なのにね」
次々と生まれる謎をとりあえずは触れずに気になったことを訊く。
「それで、その宝玉は効き目あったの?」
「あったよ。魔獣が出てこなくなるほどね。でも効力が弱まったり、足りなかったり……。
そうなると必ず潜在魔力のある人が産まれたんだ。そして今、その宝玉が奪われたことによって、異常事態が発生してるってわけ」
「もし、だよ。最初言ってたように、魔獣を使役する者がいたならば、その力は伝承されてるってこと?」
「おそらく」
険しい表情をするレスポールにおれは声をかけることができず固唾を飲んだ。
「よし、着いた」
すると、レスポールがそう呟いた。案外早いんだな。世界軸を歪ませるって言ってたからもっと1日とかかかるのかと思ってたよ。
「降りるよ。次こそ、成功させてやる!」
大きな声ではなかった。でも、強い意志のこもった言葉だった。
「あれ?」
外に出たおれは驚いた。
先ほどみたいな死体はどこにもなく、時代背景も大きく変わっている。
テレビのニュースや新聞の記事の写真などでよく見たことある風景。
摩天楼の並ぶ臨海部。モクモクと立ち上がる薄灰色の煙。
「ここは、2015年の中国だよ」
レスポールはおれの表情を伺いながらサラッと告げる。
「それにしてもこの2015年って年に魔力保持者が2人もいるなんて」
不思議そうに呟きながらレスポールは魔力検知の場所を確認するためホログラムの画面を腕時計から出現させた。
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