第7話

 不安で胸がいっぱいになる。本当に当てられるのか。誤って孫権の末裔に当ててしまわないか。

 そんな迷いが立ち込めるなか魔法を放ったことで最悪の事態を招いてしまった。


 魔獣が動き魔法が外れたのだ。

 更に女の子は突然の氷塊に驚き、魔獣が動いたことに気づくことが遅れた。

 負のスパイラルへと陥り、女の子は魔獣の攻撃を直接受けた。


「っ!」


 目を見開き、息を呑む。女の子は頭から血を流し倒れている。


「や、やばい! 反応が薄くなる!」


 レスポールは慌てて女の子の元へ駆け寄りながら叫ぶ。


「もう一度! もう一度撃って!」


 おれは迷った。でも、決めた。次こそは……、成功させてやる!


氷塊オルム・ブルト


 空中に白い冷気を纏いながら現れた氷塊は、おれの心を読み解くように魔獣へと向かった。

 今度はあやふやな進路をたどることなく真っ直ぐに、ひたすら真っ直ぐに魔獣へと向かった。

 クリーンヒット、そう言ってもいい程寸分違わずに魔獣の頭を撃ち抜いた。


 魔獣は、体育館の時同様に跡形もなく煙のように消えた。


「レスポール!」


 それを確認したおれはそう叫び、レスポールと倒れている女の子の元へ駆け寄った。


「やっぱり、この子だったんだ。偉大なる10人の血を引く"孫近周"は。今、完全に反応が消えた」

 孫周近と思われる人の首を右手で頭を左で抱え、続ける。

「僕が……僕がもっともっと強ければ……。あの力が……」

 レスポールは怒りと悲しみを含んだ声音でそう呟く。

 おれはその様子を黙って見つめた。

 自分の迷いで孫近周を死なせてしまったこと。おれが1発で魔獣に氷塊をぶつけていたら……。

 自分の弱さ、惨めさを肌に感じながらあらゆる重圧に押しつぶされそうになる。

 かすれた、覇気の無い声でただ「ごめん」と、謝ることしか今のおれにできることはなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る