第4話

 封印が解かれる……。渦中を掻き立てる単語に畏怖の念を抱くが言葉を紡ぐ。


「どういう意味……なの?」


「魔晶が張ってあったのさ」


「魔晶?」


「あぁ、魔力で張られた結界のこと。だから普通では入るどころから見ることすらできないはずなのに」


「じゃ、これは人によって引き起こされた事件ということ?」


「可能性はかなり高い。それにもしそれが真実ならば僕が今まで話したことさえ全て嘘となる」


「えっ?」


 理解出来ずに思わず声が漏らす。


「今のは僕の世界の学者たちの仮説の1つ。1番信ぴょう性が高いと言われてたもの。でも、この事件が起きて、もしさっき言ったことが事実ならば魔獣たちはある人間、おそらくある一族によって産み出された存在かもしれない」


 体が小刻みに震えている。知らない単語の連続で未だに全てが事実だと信じ難いが、現状が現状。体は否応なく震える。現実味のないことは百も承知。でも、あの体育館で見た血が頭をかすめ、全てを事実だと告げているように感じる。


「震えなくても大丈夫。きっと大丈夫 」


「う、うん」


 年下の少年に笑顔でそう言われ、おれは少しホッとした。


「ところで、レスポールのいた世界って?」


「2014年のフランスだよ」


「えっー!?」


 驚きのあまり大きな声になる。今は2015年。だからレスポールのいた世界は去年になる。でも、あんな仮説を聞いたことがない。ましてや魔獣や魔力、魔晶なんて単語も知らない。


「剛くんとは違う時間軸にある2014年だよ。んーと、平行世界って言えばいいかな?」


 平行世界。つまりパラレルワールド。じゃあ、交わることはないはずなのに。


「君の考えてることはあってるよ。でもこのタイムマシンは普通とは少し違うから。

 僕たちが今移動しいてる世界は時間軸と世界軸が存在するんだ。通常のタイムマシンは時間軸を歪ませることによって過去に行ったり未来に行くことができるんだ」

 初めて見て、初めて乗るタイムマシンの説明に口がポカーンと半開きになる。

「でも、このタイムマシンは時間軸プラス世界軸も歪ませることができる。つまり平行世界を行き来できるってこと」

「う、うん……」

 ピンとこない話に相槌をうつ。

「この世界に来る前に僕は1番強い魔法反応を示した僕の世界のきみは目の前で殺されちゃったから……。本当に良かった。きみを救えて……」

「えっ……」


 血の気が引く、とはこの事だ。さきほど死ぬとは思った。でもそれは別の世界軸上では本当に起こったことであった。なんでおれだけって思ったけど……、おれすらも助からない世界もある……のか。


「偉大なる10人の1人、"卑弥呼"の血を引く君を救えた。これであと8人だ」

 レスポールのその声がタイムマシン内のマンションの1室のような部屋に木霊した。

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