第5話
おれは唖然としていた。自分でも知らなかった新事実『おれが卑弥呼の末裔』だったということに。
「た、ただ名前が似てるだけじゃあ……」
「違うよ。れっきとした卑弥呼の末裔。史実上途絶えたとされている卑弥呼の血は受け継がれているんだよ。証拠として君には潜在魔力がある」
「潜在魔力……?」
「そう、潜在魔力。体のそこに眠っている魔法を使うために必要なエネルギー。普通の人はこれがないんだ。だから魔法は使えない。
それで、きみは僕が撃った光線が見えただろ?」
「う、うん」
「あれは僕の魔力を糧にしてるんだよ」
「えっ。じゃ……、君も?」
「僕はナポレオン・ボナパルトの末裔さ」
ここに来てから驚きしかない。おれが卑弥呼の末裔であることですら驚いたというのに、このレスポールは日本で聞いても知らない人はいないだろうナポレオンの末裔。白馬に乗り、赤いマントをした黒い帽子をかぶった絵はあまりにも有名だ。その上さらに魔力まで存在しているというのだ。おれの頭脳をもってしても理解が追いつかない。
「で、今から中国史に残る偉大なる10人の1人"孫権"の血を引く人の元へ行くよ」
孫権……。名前は聞いたことがある。劉備、曹操と共に三国志で有名な。
「で、その前に君に覚えて欲しいことがあるんだ」
「覚えて欲しいこと?」
見た事のない文字列のボタンを押しながらレスポールは話す。
「魔力の使い方だよ」
本当にあるのかすら半信半疑の魔力。でも、あるのなら見てみたい。昔読んだマンガでは魔法を放つシーンがあった。あれを見た頃はポーズやらを取って魔法を出そうとしていた頃の自分が蘇る。
でもある時それは絶対に無いと、ありえないとわかった。しかしそれが今ここで覆えり、魔力が自分に存在すると告げられた。おれは厨二病なんて病ではない。でも、人とは違う。優れている。そう分かれば、人と比べるくせがある人間の1人であるおれは嬉しい。
「これに手を当てて」
無色の球状の物体。地球儀ほどの大きさだ。
おれはそれにゆっくり手を当てる。
瞬間。無色だった球状の物体が白色に染まった。そして何故かその表面に霜がおりたように感じられた。
「す、凄い。こんな魔力見たことない……」
レスポールが驚きを見せた。何にそんなに驚いたのかはさっぱりだが、してやった感じがして誇らしくなる。
「そ、そんなになのか?」
喜びが声にも現れているのが耳に入った自分の声でわかる。
「うん! これだけあれば僕みたいにデバイスを使わなくても魔法単体で使えるよ!」
「魔法単体?」
「んー、そうだなー。思いのままに氷を出したり、かな?」
この時のおれはそれがどんなに凄くて便利なのか見当もつかなかった。あの瞬間までは。
「じゃ、練習しよっか。魔法を出す」
そう言ってレスポールはおれに魔法を出すためのレクチャーを始めた。
「まず、利き手の手を開いた状態で前に突き出して」
おれはレスポールの指示通り、利き手である右手を手を開いた状態で前に突き出す。
「じゃ次は手から氷出すイメージを頭の中に浮かべて」
おれは集中して頭の中で昔みたアニメや漫画で見たことのあったような物をイメージする。
「ダメッ! もっと集中してっ!」
レスポールは叫ぶ。おれは静かに頷き、より一層集中する。
すると微かに手に冷たさを感じた。
「今出たよ! その感じ忘れないで」
レスポールは楽しそうに上ずった声でそう告げた。
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