第4話 琥珀と由妃


その頃、琥珀は叔父さんのことを思い出していた。


琥珀

(確か此処の記憶では叔父さんもいたよね?

何度か会いに来てくれていたけど私が越したせいで会えなくなったし曹操の所にいるはずよね?)


兗州に入った頃、琥珀の耳に鬼の一族は幽州に居る事を聞くのだった。


琥珀

(幽州にね・・・、幽州に向かわなくてはいけないのね。)


歩き出す琥珀。


公孫賛は趙雲にも愛した相手の事を話していた。


趙雲

「そうだったのですか・・・・・・・。」


公孫賛

「ああ、もし生きていれば会いたい。

私と結婚していればあの関羽と同じ歳ぐらいの娘もいたかもな・・・・・・・・・。」


趙雲

「俺も協力して探してみます。」


公孫賛

「有難う趙雲よ、本当に娘が居たらお前と結婚させたのだかな。」


趙雲

「身に余るお言葉です」


趙雲は関羽達の所に向かうのだった。


関羽

「それが・・・・・・」


趙雲

「何か分かったのか?」


関羽

「白蓮さんの本当の名前は蘭麗と言ってもう亡くなっているの・・・・・・・・・。」


趙雲

「そうか・・・・・・・・・亡くなって居るのか・・・・・・・・・。」


関羽

「それがね、娘さんが居たようで?」


趙雲

「まさか公孫賛様の娘!?」


関羽

「私と叔父さんもそう思っているのだけど何処に行ったか分からないらしいの・・・・・・・。

それに期待させて娘ではなかったら気落ちしてしまうのではないかと思って言えないでいるのだけど。」


趙雲

「関羽有難う、少しの情報でも助かる!!

もう少し探してみて本当の事を公孫賛様に話そう。」


関羽

「そうね」


それから2週間が過ぎた頃やっと琥珀は幽州に入った。


琥珀

(確か・・・ここの村よね?)


琥珀が最初に声をかけたのが趙雲だった。


琥珀

「あの〜お尋ねしたいのですが?」


趙雲

「なんだい?」


琥珀

「ここに鬼の一族の方々がいると聞いたのですがここで間違いないでしょうか?」

(ヒロさんそっくりだわ・・・・・・・・・)


趙雲

「ああ、確かに居るが君は?」


琥珀

「これは失礼しました、私は琥珀と申します。

叔父さんに会いに来たのですがここを通してもらって良いでしょうか?」


琥珀は羽織っていたマントを頭だけ下ろすと趙雲は驚く。


趙雲

「ああ、すまない!俺が案内するよ。」

(なんと美しい方なんだ。)

「俺は趙雲という宜しくな」


琥珀

「こちらこそ。」


趙雲と琥珀が歩いているところを公孫賛が見かけたのである。


公孫賛

「!?」

(あ、あれは白蓮!!)


部屋に居てもたっても居られなくなり屋敷を出るのだった。


趙雲は既に琥珀に心奪われていた。


趙雲

「君は鬼の一族なのかい?人間と変わらないようだが?」


琥珀

「クス、私は人間と鬼の間に生まれた混血ですよ。」


趙雲

「だが・・・目の色が赤くないが・・・・?」


琥珀

「外に出るときは目の色を変えるのです、こうして」


趙雲

「君は術を使かえるんだね!?」


琥珀

「はい、少しの間、仙人の元にいましたから」


鬼の住む村に着くのだった。


琥珀

「あっ!叔父さーん!!」


琥珀が駆け寄ると叔父さんは驚くのだった


叔父さん

「お前は!?」


琥珀

「クスクス、長い間会ってないから名前忘れましたか?」


叔父さん

「琥珀・・・久しぶりだな。」


琥珀

「はい」


叔父さん

「ここでなんだ長旅で疲れてだろう?中へ」


琥珀

「はい、それと趙雲さん案内有難うございます」


趙雲

「いや・・・。」


叔父さんと琥珀だけ中に入るがすぐに外が騒がしくなりいきなり世平の家の戸が開き公孫賛が入ってきた。


公孫賛

「白蓮!生きていたのだな・・・・・」


琥珀を抱き締めるのだった。


琥珀

「!!」


驚き動揺するが冷静さを取り戻し言う。


琥珀

「申し訳ありません、私は白蓮と言う女性ではありません。琥珀と申します。」

(白蓮・・・母がよく使っていた偽名だわ!この人もしかして・・・・・・・。)


公孫賛

「す、すまない・・・・・・・あまりにも愛した女性に瓜二つだったのでな。私は公孫賛と言う。」


公孫賛は離れるのだった。


琥珀

「公孫賛様ですね。」


琥珀は公孫賛に微笑みかける。


公孫賛

「ああ、そなたは今此処に来たばかりなのか?」


琥珀

「はい。呉から長旅をしてきましたので。」


公孫賛

「そうであったか・・・・・・

夜にでも私の屋敷で食事でもいかがかな?

そなたと話がしたい。」


琥珀

「お誘い有難う御座います。

では後で参ります。」


公孫賛は帰っていつたが琥珀の様子が変なのに気付いた世平。


世平

「琥珀?」


琥珀は動揺したのか泣いていたのである。


世平

「まさか!?公孫賛様が琥珀の父親なのか?」


琥珀

「分からないわ。

でも母が死ぬ時、一度だけ言ったの公孫賛様の名を呼んで愛していると・・・・・・・・。」


世平

「なら、公孫賛様に何故言わない?」


琥珀

「母は口癖のように言っていたの彼は高貴な方で鬼が奥方だと迷惑がかかるから身を引いたと・・・・・・・・・。

だから私が子でも迷惑がかかるから絶対に会っちゃ駄目とだから死ぬ時まで名前は一切言わなかったわ!」


世平

「だが、公孫賛様はそう思っていない。

会いたがっているんだぞ!」


琥珀

「じゃ、あんなに愛してたなら何故自分で探したりしなかったの?

矢張りこの国を捨てる事が出来なかったからでしょう。

だから私もこのままで良いと思っているの。」


世平

「公孫賛様は今病気を患い永くないようなんだよ・・・・・・・・・。

俺たち鬼の一族は公孫賛様の計らいでこの土地に住まわさせて貰っている、だから喜ばせてあげたいんだ。」


琥珀

「叔父さんは公孫賛様に私が貴方の子だと言えと言うの?」


世平

「そうだ、それがお互いに幸せになれると俺は思う。」


琥珀

「だけど・・・迷惑ではないの?

私は半分人間だけど半分鬼なのよ!」


世平

「目が赤いだけで他は人間と変わらないじゃないか、お前もそうやって暮らしていたのだろう?」


琥珀

「そうだけど・・・・・・。」


世平

「趙雲、居るんだろ?」


何も言わず趙雲は入ってきた。


世平

「話は聞いていたな。」


趙雲

「ああ、だが公孫賛様の子だと分かるような何かかあれば疑われないと思うのだが・・・?」


琥珀

「これは母が父から初めて貰ったものだと大切にしていた物です。

それを見せたらどうでしょうか?」


綺麗な匂い袋を出してきた。


趙雲

「これは此処でしか作ってない布地で高価なものだか公孫賛様が覚えていらしたら良いのだが・・・・・・・・・。」


世平

「取り敢えず情報が入ったと趙雲は公孫賛様に話してはどうだ?」


趙雲

「公孫賛様に白蓮と言う女性は蘭麗と言う女性でもう亡くなっていて娘がいると言う感じで良いのか?」


世平

「そうだ、そんな感じで後は公孫賛様次第だと思うぞ。

琥珀もそれで良いな!?」


琥珀

「ええ・・・・・・・・・

公孫賛様に会うのは夜でしょ?

叔父さん少し休みたいのだけど良いですか?」


世平

「ああ、部屋は一番奥にある、そこの部屋をつかっていてくれ。」


琥珀は部屋で寝台に寝転んだ。


琥珀

「はぁ・・・良いのかな?

私が今出来る事をしなくちゃね・・・・・・」


眠りにつくが夕方辺りに誰かが頭を撫でる感触で起きる。


琥珀

(まさか公孫賛様ではないでしょうね?)


琥珀は薄眼を開けると頭を撫でていたのは趙雲だった。


琥珀

(どうして、趙雲さんが?)


趙雲

「一人で苦労したのであろうな?

もうこうして触れられないな・・・・・・

公孫賛様の娘なのだから・・・・・・・

だが美しい・・・・・・」


琥珀

「もう時間ですか趙雲さん?」


趙雲

「ああ!!」


琥珀

「お風呂に入ってから支度しますので何処でお待ちになりますか?」


趙雲

「世平殿と一緒に居るよ」


琥珀

「分かりました。

それと頭を撫でて頂き有難う」


趙雲

「っ!!

・・・・・・いつから起きていたんだい?」


趙雲は顔を赤くしながら言う


琥珀

「クスッ、頭を撫でたところで起きていました、寝たふりをしていてごめんなさい。」


趙雲

「いや・・・俺は初めて君を見たときに一目惚れした、それだけだ。」


琥珀の部屋から出て行くのだった。


琥珀

(素敵な方ね・・・

現代の展示会の蝋人形と同じだわ。

ヒロさん元気かしら?)


琥珀は思いつつも公孫賛の屋敷に行く支度をするのだった


琥珀

(これは母が大切にしていた服、父からもらったものだと聞いているけど公孫賛様が父であれば気付くはずだけど?)


母の服を少し仕立て着るのだった。


琥珀

「叔父さん、趙雲さんこんな感じでいいですか?」


二人は琥珀を見たまま言葉が出なかった。


琥珀

「・・・・・・・・変ですか?」


趙雲

「綺麗だよ・・・行こうか。」


琥珀

「はい・・・・・・・。

皆さんも行かないのですか?」


趙雲

「公孫賛様が今日は君だけだそうだよ。」


琥珀

「・・・・・・・そうですか。

なんだか緊張しちゃって。」


趙雲

「大丈夫だよ、公孫賛様は優しい方だから。」


趙雲と琥珀は向かうのだった。


由妃は長安の街に入っていた。

馬騰からの贈物の馬のお陰で予定より早く着いていた。


由妃

「ふぅ〜疲れたわ」

(呂布が暴れ董卓将軍を討ったと言ってたけど街はそんなに荒れているわけでは無いようね。

呂布達は姿を消したと言っていたけどどうなっているのかしら?)


馬を休ませ暫く歩き宿を取るのだった

翌日少し必要な物を買い足し宿に戻ろうとした時いきなり引き寄せる腕があった。


由妃

「なっ!!」

(油断した!!全く気配が感じなかった。)


ガバッ!!


張遼

「会いたかった・・・愛しい人。」


ビクッ!!


由妃

「ケン!!」


張遼

「いえ、此処では張遼です。

ケンは仮の名ですよ由妃」


由妃

「私を元の世界に戻して!!」


張遼

「貴女は元々此処の人間なのです。

もう帰れませんよ。」


由妃

「なっ、嘘言わないで!!」


張遼

「本当です。

だから私は貴女を此処に連れてきたのです。

次第に記憶は戻ってきます。」


由妃

「・・・・・・・・・。

ではあの記憶は本当の私の記憶という事。

琥珀も此処の世界の人という事なのね・・・・・・・・・・。」


張遼

「そうです、そして貴女と琥珀さんは・・・・・・・・・。」


由妃

「本当だと言う証拠は?」


張遼

「それはありません。

でも、貴女は私の妻です。

今は一緒に暮らせませんが後々祝言も挙げ幸せになるのです。」


由妃

「それは貴方の身勝手じゃない!!」


張遼

「でも、もう私は貴女をあの異世界に帰えしたくない!!」


いきなり抱き締められ由妃の首元に顔を埋める張遼


ちくり!!


由妃

「うっ!痛い!!何するの張遼!!」


張遼は由妃の首元に噛みつき印を残すのだった。


張遼

「貴女は私の物です。

では又会いましょう。」


宿に戻った由妃は張遼が噛んだ首元の跡を見て思うのだった。


由妃

「張遼は私を本当に愛しているのかしら?」

(言葉では幾らでも愛は語れるけど・・・・・・・・。

彼の本心が分からない。

此処での記憶が確かであれば私は琥珀と双子の姉妹になるわ・・・・・・・・・。

本当なのかな?)


翌朝由妃が早くに宿を出て馬に乗ると呂布と貂蝉と張遼が長安を出て行くのを見るのだった。


由妃

(やはり呂布は女か・・・・・・・・・

では関羽も女と言うのは本当なのね・・・・・・・・・。

今は張遼の言葉を信じてみるしかないわね。)


由妃は洛陽に馬を歩かせるのだった。

お昼頃に洛陽に着くと戦の後なのか建物は所々焼け落ちており洛陽の美しさがなくなっていた。


由妃

(思った以上に酷いわね・・・・・・・・・・

今日は許都で宿でも取らないと此処ではまだ駄目ね。)


由妃は許都に向かうのだった。


夕方にどうにか許都には入った由妃

いきなり前から暴れ馬が現れた。


曹操軍兵士1

「大変だー!!馬が暴れ出した。」


曹操軍兵士2

「あれは曹操様の馬だぞ!早く捕まえなくては!!」


夏侯惇

「どうした!?」


曹操軍兵士2

「曹操様の馬が突然暴れ出し走り出したのです。」


夏侯惇

「なっ!何処へ?」


曹操軍兵士1

「あっ!!不味いです。

あの者にぶつかります!!」


夏侯惇

「避けろ!!!!」


由妃

「避けろと言われても」


由妃は曹操の白馬に飛び乗り落ち着かせるのだった。


ヒヒーン!!!!


由妃

「どうどう、どうした?」


馬から聞こえる声


痛い!!痛い!!


由妃は馬の尻に刺さっている針が見え抜きそのまま馬を夏侯惇の居る場所に歩かせ夏侯惇に馬を返すのだった。


夏侯惇

「有難う・・・・・・・・」


由妃

「いえ。」


夏侯惇

「女!?だったのか・・・・・・・・」


由妃

「では」


由妃が自分の馬に乗るとその後ろから声を掛けられた。


曹操

「まて、そこの旅人よ。」


由妃

(曹操だわ少し厄介だわ。)

「何か?」


曹操

「暴れた我の馬をしずめてもらい礼がしたい。」


由妃

「礼などいらないわ

先を急いでいるので失礼します。」


曹操はさらに由妃の馬の前に立ち言う。


曹操

「ほう〜何故にそう急いでおる?」


由妃

「捜している妹がみつかったのでね。

会いに急いでいるのよ。

そこをどいてもらえる曹操殿?」


曹操

「我を知っておるのだな、お主名はなんと言う?」


由妃

「由妃です。」


曹操

「ほう〜、常々涼州から噂わ聞くが猛将と囁かれる由妃か?」


由妃

「猛将ではないわ。

確かに涼州から来たけどもういいかしら?」


曹操

「矢張り礼がしたい。」


曹操はいきなり馬の手綱を由妃から奪い自分の屋敷に引き始めた


由妃

「ちょっと、強引ではないですか?」


曹操

「お前が素直に我の礼を受けてくれぬから悪い」


由妃

「はぁ!?」


曹操

「もう夜も暮れる。

我の屋敷で休まれよ。」


由妃

「分かりました。

休むから手綱返して。」


曹操は含笑いをしながら由妃に手綱を返すのだった。


由妃

(なんだか上手く事が運ばないわ・・・・・・・・・・

琥珀にいつ会えるかしら・・・・・・・・・

それに曹操に会うなんて・・・・・・・・・。)


思っていると使用人の女官が入って来た。


女官

「由妃様、お風呂の用意が出来ております。」


由妃

「えっ?今はお風呂はいいわ。」


女官

「ですが曹操様から申し受けてますので・・・・・・・・・・」


由妃

「分かったわ。」


風呂に入り服も綺麗な服が用意されてあった。


由妃

(この世界の主君の屋敷はおもてなしが好きなのね。)


着替え出ると夏侯惇が立っていた。


夏侯惇

「こ、こちらだ・・・・・・・・・」

(美しい・・・これが涼州の猛将由妃か・・・)


由妃

「有難う、私の剣がないのだけど?」


夏侯惇

「剣は預からせて貰う。」


由妃

「そう。」


曹操のいる部屋に案内される由妃


曹操

「美しいな、あの馬騰が惚れるわけか。」


由妃

「さあ?惚れていたかは知りませんが?

曹操殿はおもてなしがお好きなようで?」


曹操

「フッ、これは先程の礼だ。」


由妃

「では、有り難く受けますわ。」


曹操

「では楽しんでくれ。」


由妃は一切料理や飲み物に手を付けないのだった、


曹操

「どうした?食べなのか?」


由妃はニコッと笑い近くに居る女官2人を呼ぶ。


由妃

「貴女達こちらに来て」


女官

「何用でしょう?」


由妃

「貴女はこれ飲んで、そこの貴女はこれ食べて。」


女官

「で、ですが。」


由妃

「客人の私が食べていいと言っているのよ、大丈夫よ食べてくれる?」


女官

「は、はい・・・・・・・・・」


食べるなり倒れる女官達。


曹操

「なっ!毒でももられていたのか?」


由妃

「あらっ、私はてっきり貴方がだと思ったわ。」


曹操

「我がそんな小賢しいことはせぬ!!」


由妃

「この臭いからこれは眠り薬よ。

主君も大変ね、命を狙われるのは日常茶飯事?

先程は馬に針が刺さっていたわ。

気を付けた方がいいわよ曹操殿。」


由妃はそのまま立ち上がり部屋に戻ろうとしたが曹操に呼び止められる。


曹操

「お前は何者だ?

不思議な力を持っているようだな?」


由妃

「何者でもないわ、涼州から妹に会いに出て来たただの女よ。」


部屋に戻っていくのだった。


曹操

「ここの料理を作った者、運んだ者達を調べよ、眠り薬が入っておった。」

(勘が良いだけなのか・・・・・・・・・

それとも矢張り何か力を持つ者?)


夏侯惇

「ハッ!!」


翌朝早くに曹操の屋敷から出て行く由妃。


曹操

(もう行くのだな。いつしか手に入るであろう。)


曹操は部屋から見送るのだった。

















































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