第5話 七豪戦ー前日
クラスの中に入ると全員がクラッカーを鳴らした
一瞬何事なのか理解できなかった
『聞いたぜ、七豪戦に出るんだってな。凄いじゃないか』
『エンジニアだってね、頑張ってね』
『ファーストの人達も結構悔しがってたわよ、そのままセカンドの差別を無くす位暴れてやれ』
今まで溜まっていた物があったのかそのまま悪口を聞かされる
そう思うのは不思議じゃないがエンジニアだからそんなには出来ない
席に座ると前のロウが話しかけてきた
「情報が早いな」
「二年の先輩に知り合いがいる子がいて、その子からみんなに広がっていったらしいな」
「そうか、ならいいけど」
会長のことだから普通に話しているのかと思っていた
あの人に話とろくな事にならないから困った物だ
「選手は全員ファーストで構成されているんだよな」
「エンジニアの俺を抜いたら全員がファーストだ」
「確か5限目に正式発表なんですよね」
「そうらしいな」
「七豪戦には私達も応援しに行くから」
「その日は学校じゃないのか?」
「『親戚』が七豪戦に提供していてその理由でご招待って訳、ちゃんとした理由だしここに居る3人は行くわよ」
「だから休みの時は、一緒に応援できるぜ」
そんな祭り騒ぎは先生の到着によって一旦中止となった
昼休み、生徒会室で食べようと思って移動していると呼び止められた
「君、先生が探していたぞ?」
「本当ですか?」
「あぁ本当だ、さっきみた所まで案内するよ」
先輩の親切で後ろに着いていく
薄々気がついていたんだが体育館の人気のない方に移動している
すると後ろから鈍痛が走った
倒れると後ろからは柄が悪そうな二人がやって来る
「コイツか、七豪戦に出るエンジニアっていうのは」
「けっ、こいつセカンドじゃないか。何が出来んだよ」
倒れているのを良い事に踏んづけたり蹴られたりされる
髪を掴まれて投げ飛ばされる
「おい立てよ、なんかズルしたんだろ?出なければお前みたいな奴が選ばれる訳ねぇだろ?」
「何だ?教えてみろよ、卑怯者」
言われた通り立ち上がる
至る所ボロボロだ、だけど自己再生術式を使うまでもない
「はぁん?なんだよその目は、気に食わねぇよ」
「選ばれたのは実力ですよ、それにそんな事も分からない負け組がファーストなんてね」
「もっかい言ってみろよ、セカンド野郎!!」
「ファーストだからって偉いのか?って言いたいんですよ」
こんな人がいるからファーストとセカンドに溝が生まれるんだな
術式を使えればえらい?そう考えているのはただの自己満足、自分の価値を相手に押し付ける奴だ
俺の言葉と怒りの籠った眼付きに完全にキレたのかMMDを展開する
「こいつ殺す、逃げても無駄だからな」
「その場合俺も殺す気で行かないといけないですね」
「やれる物ならやってみろよ、お遊びの術式で何が出来る」
3人が俺を囲って別々の術式を展開する
火炎術式に液状術式、電流の術式か、どれも低術式に分類される威力だ
だけど3人が一度に撃てば問題ない威力にはなる
術式が発動する瞬間に火炎術式の奴に少しだけジャミングする
上へ大きくジャンプすると水と電気がぶつかり合う
そしてジャミングが切れた炎がその中に入り込む
電気分解によって水は水素と酸素に分けられる、そこに炎を近づければ面白いが起こる
3人の不良はその衝撃によって吹き飛ばされて俺は衝撃を利用して木の上に着地した
「馬鹿ですね、さっき言ったお遊びの術式でお偉いファースト様が吹き飛んだよ」
「クソが、本当に殺す」
「じゃあ俺も本当に殺す気で行かせてもらいますよ」
木の上へと火炎術式を展開する
だが、俺に術式で行くのは愚かなものだよ
普通に術式を破壊するのは面白くない、少し加えるか
放たれた弾丸は術式を展開している右腕を貫通した
普通なら破壊してその反動を受けさせるが破壊したと同時に間近で展開させる
「えっ?」
「燃えろ」
自分で展開したものが自分に向かって放射され焼かされる
すぐに消火されたが完全に戦闘不能になった
「どうします?まだやります?」
「ちっ!!ずらかるぞ」
『待て、そこを動くな!!』
今度は風紀委員が不良を取り囲んだ
その前方には須郷先輩の姿があった
「お前等、学内で授業以外での攻撃術式展開は違反だという事を言っているよな」
「へっ、俺等が使っていたって言う証拠はあるんですか?」
「お前等爆発を起こしただろ?まさかセカンドに、ましてや学年最下位が大きな爆発を起こせると思っているのか?」
実際、俺なら余裕で起こせるが揺するにはちょうどいい
正体を知らないから完全に言葉を失っている
「だけど、そいつも術式を使いましたよ。つまりコイツも捕まえるべきでしょう」
「彼は攻撃系の術式を使ったのか?彼はそんな術式を持っていないぞ」
これは本当の事だ
直接攻撃を与えるのではなくて自分の物で自分を攻撃させる
術式破壊はジャミング、妨害術式に分類されるので攻撃としてはカウントされない
「それに彼は執行委員だから風紀委員と同じく校内での術式展開は許可されている」
まぁ術式破壊でも不正的に使用した場合は普通以上に厳しい罰則がかけられる
「こいつが?セカンドなのに」
「それは差別用語だ、それに副会長の士燮を倒したほどの腕だ。戦ったのなら分かるだろ」
「くっ、それで選ばれたのか・・・」
「連れていけ」
さっきとは豹変して全員おとなしく着いていく
傷を抑えながらいると近くに寄ってくる
「彼等は元々悪い奴等じゃなかったんだが、今回の七豪戦のメンバーに選ばれなかったのを恨みだしてな。彼等は全く努力していなくてもコネだけで選ばれていると思っていて逆上した勘違いな奴等だ、可愛いだろ?」
「可愛いのなら俺をサンドバックの様にはしないでしょう?」
怪我はあるが俺にとっては治せる範囲だから問題視はしていない
「術式を使いこなせる人が偉いか・・・そんな思想がなければ俺等は紅くならずに済んだかもしれないな」
昨日の事の様に思い出せる『酷く辛い過去』の事を思いながらそんな事を呟く
「どういう事だ?」
「単なる独り言です、気にしないでください」
「それにしても怪我はないか?かなり痛め付けられたようだが」
「肋骨が骨折した、腕痛い、足も骨折した。なので七豪戦は出られません」
「ガキか君は!!」
「痛い、これは本当に痛いです。まぁ本当の話でしたがもう完治してますよ」
「そうか、ならいいがかなり君には期待しているからな、裏切るなよ」
「了解いたしました、先輩」
目撃者もいた為、軽い聴取だけで終わった
しかし蹴られた衝撃で弁当は肥料となって買いに行くにしても昼休みが終わってしまった
空腹のまま発表会と七豪戦発足式に参加することになる
◇
発足式が終わり、七豪戦メンバーが一つのホールに集められる
二次会のようにそこでパーティーが開かれている
メンバーは全員で25人、その内エンジニアが4人である。単純計算で6~7人分の調整をしなくてはいけない
「技術者の祠堂凱斗です、一年でセカンドですがよろしくお願いします」
「セカンドとか関係ないよ、君には結構期待しているよ」
「如月のMMDの解決の速さと改善の的確さ、それに術式使用がやりやすくなったって聞いているからね」
「はぁ~、まぁ出来るだけ頑張ります」
「何謙遜しているのよ、いざとなったらどばばば~っとやってしまえばいいのよ」
「先輩、日本語で理解出来る言葉で話してください」
笑いが一気に起こった、別にファーストだからって全員が全員差別的な目で見ている訳じゃないな
その後エンジニアだけで集まって少し打ち合わせをする
「技術者はMMDの整備だけじゃなく訓練メニューの作成や選手の健康管理も仕事だからね」
「その場合は何分で仕上げるとか時間制限はありますか?」
「基本的にはないけど、出来るだけ早く・・・と言っても君なら大丈夫そうだね」
「俺だって苦手な分野もありますからね、万能人だとは思わないでください」
「分かっているよ、でもあの速さであの出来栄えと的確さは僕には到底出来ないよ」
「昔からそういった機械操作は慣れてましたからね」
「でも、頑張り過ぎない様にね。七豪戦は8日間もあるのだから」
「勉強になりました、桜坂先輩」
桜坂景義先輩、二年生のエンジニアの一人で去年も技術者として参加している
一見女の子にも見える位の顔立ちで面白い感じの先輩だ
もう一人の先輩は今日は用事が在って先に帰っていて、もう一人は響先輩だ
「凱斗、楽しんでる?」
「七泉か、お前のMMDは俺性だから俺が調整するからな、不具合があったらすぐに言うんだぞ」
「分かっているよ、明後日からは頑張らないとね」
「七泉さんは何に出場するですか?」
「トーテムアウトです、私に一番合っているでしょ?」
もぐら叩きとほぼ同じで突き出てきたトーテムを早く攻撃してその回数を競う競技だ
実戦ではまだ使っていないが七泉の術式は全方位系、どこから出てきたとしても問題ない
「そう考えるとやる事が一つ有ったね」
「機材はもう一式雨宮さんに借りてあるよ」
「仕事が早いね」
「お前もちゃんと発動出来る様に睡眠時間は適度に取るんだぞ」
「分かっていますよ~だ」
べーと舌を出して他の子に呼ばれてその方に行った
「随分と仲が良いんですね」
「幼馴染ですから」
それ以前に家族だからな、心配するのも当たり前だ
学校が終わる時間ギリギリまでこの騒ぎは続いていた
◇
「遅いですね、会長」
「もう10分も経っているのだぞ、何をしているんだ雪風は」
七豪戦開催会場へと行くバス、選手全員と教師員は乗っているのだが会長だけがまだ来ていない
警備上外で俺と須郷先輩で待っている
「ごめ~ん、遅れちゃった」
「遅いぞ雪風!」
「これで全員ですね」
「学年の皆から祝福を受けていたらこんな時間になっちゃって、じゃあ行きましょうか」
出場者はバスに乗り込んでやっと目的地に移動する
「緊張している?」
「なんで俺が緊張するんですか、俺よりも緊張しているのは選手の方でしょうしね」
「そうかもね、有菜は緊張している?」
沢山有菜先輩、昨日用事があってあの場にいなかったもう一人のエンジニア
二年の中では実技や技術の成績がいい
「凱斗くんと同じね、私達はサポートなんだから緊張していると手が動かなくなるわよ」
「ははっ、そうだね」
たわいもない会話をしていると急にバスが急ブレーキをかける
反動で前に行くがなんとか耐え切った
「どうしました!?」
「道に人がいます」
走っていくと見に行くとその姿が見えた
前に襲撃してきた黒ずくめと同じ格好で全員腕にMMDを装着している
「妨害のつもりね、ここで全員を戦闘不能にしておけば一条高校は出場出来ない」
「他の高校の仕業か?」
「何とも言えないな、だがこの前と同じ奴等だから他の高校の仕業ではないな」
「何にせよ、このままでは先に進めなく、さらに相手は好戦的ですから被害が出るかと」
法律上、認められた仕事や役職以外で外部での攻撃的術式使用は認められていない
それをきつく取り締まるのが俺等クロワガイストの仕事だ
なら今この状況で俺がやるべき事は一つだ
「会長、運転手さん、話があります」
前方席で話してバスのドアを開けてもらう
アタッシュケースを手に持ちながら黒ずくめの前に立つ
「俺は一条高校のエンジニアの祠堂凱斗だ、そちら側の要求を聞きたい」
『交渉役か、まぁいい要件は一条高校の不出場だけだ』
「何故そんな事を?他の術式科高校の差し金ですか?」
『いいや、一応言っておくと依頼者は学校関係者じゃない』
「親切ですね」
『もう質問は終わりだ、交渉決裂とみなして強制的に行かせてもらう』
術式を構えると俺は手を挙げて合図する
するとバスが急発進して黒ずくめの集団を撒いていった
後ろを狙う様に展開するが発動する前に消滅した
「今の相手は俺だろ?」
『お前、良い度胸しているな。こっちは8人いるぞ』
「一般的に攻撃術式使用は法律的に認められていない、無断使用で逮捕物だ」
『君が通報してくれるのか?だけどそれは君が勝てたらの話だ。非常時の自衛目的の攻撃術式使用は許可されているが勝機はないだろ』
「勝てますよ」
一人が術式を展開して撃ち出す
バスが完全に見えなくなったのを確認していつもとは違って普通の丸い飴を口に含んで行動に移す
「だって―――」
アタッシュケースを蹴り開けて中に入っている物を掴み取る
黒いローブに当たった攻撃は衝撃だけとなって消滅した
ローブに袖を通すとデフォルト猫の仮面を被る
「だって俺はガイストですから」
俺の言葉と姿で状況は一変した
「まさか!黒炎・・・」
「高校生でクロワガイスト、しかも黒炎だと」
一瞬で勝ち目がない事が分かったのか隠していたバイクで逃げ様とする
しかしその前に黒炎が目の前に立ちふさがった
燃える事はないが火を見て、わざわざ飛び出す人はいない
「逃げたければ逃げればいいさ、だけどその炎に触れたら燃え尽きるまで燃えるよ」
あとは簡単だった、戦欲が低下した奴等をただ捕まえるだけだ
2人くらいは抵抗したが鎮圧には時間は掛からなかった
「質問だ、何故?誰に?あのバスを攻撃する様に依頼されたんですか」
『い、依頼者は『キルティーチェ』だ』
「キルティーチェ?国際指名手配されている組織じゃないか!?」
傘下の組織は何個も潰してきたからよく知っている
人身売買や違反術式の使用をよくしている結構やばい連中だ
「そんな組織が何故?七豪戦といった学生の大会にちょっかいを出すんですか?」
『その目的は本当に知らない、俺等はただ雇われただけだ』
嘘は言っていないみたいだ、信用できる
警察が来るとそいつ等を引き渡して置いていったバイクで追いかけていく
俺はまだ15歳だが仕事上バイクだけは運転してもいいと言う許可は降りている
ちゃんと教習は受けているから全く初心者という訳じゃない、一般道走るのは今日(今回)が初めてだけど・・・
どうやらこの大会は普通に行わせてはくれないみたいだ
◇
共同宿泊ホテル、各学校に一つホテルが用意されてそこを拠点として各校策を練っている
しかしまだ大会が始まっていない今日は前夜祭のパーティーが開かれている
「今回は俺が遅刻でしたね」
「心配はしていなかったけど、大丈夫だったみたいね」
「それで敵の正体は分かったのか、祠堂」
「あまり多くは言えないですが少しやばい連中が関わっている可能性があります」
「そうか、しかし何故その連中が七豪戦に介入しようとしているのだ?」
「そこはまだ分かっていません、だから注意しなくてはいけないのが現状です」
一応警備を厳重にしてもらったがそれでどうにかなるかは分からない
「まぁ確かに気になる所だけど今は楽しみましょ」
「いつまでの考えていると選手の為に使うスペースが無くなってしまうからな」
「地味に酷いですね、東十郎先輩」
こうして思うと少し別の事に囚われていた様だ
そんな事を考えている時、凱斗を見ている人がいた
三条高校一年、桐原悠。世間では『西十郎』とも呼ばれている事が多い、東の松下に西の桐原と言う位の名家の一つ
その隣にいるのは、悠の専属エンジニア弓弦・ベルモンディオ・透
「どうしたんだい、悠」
「透、お前あの男を知っているか?」
「いや、特にあぁいう感じの人に見覚えはないな。選手名簿の中にもあの人は入っていないからエンジニアだと思うよ」
「絶対記憶能力のお前が言うのなら本当だろうな」
「気になるの?」
「いや、そんなのじゃない。だが、あいつはどこかで見た事が気がしただけだ」
『本日はお集まりありがとうございます。ここで魔術法協会理事、野神潔重様より激励の言葉を賜りたいと存じます』
司会の言葉で全員が壇上の方に向く
魔術法協会
魔術法の出現によって混乱した世界を統括した組織で法律や警察権限もここで決めている
ここのお偉いさん4人によって選ばれたのが俺達クロワガイストである
その理事長は滅多に表に立たないためにその姿と顔を知っている人は少ない
野神家、それは七術家と言われる名家の一つで現在の当主すらも明かされていない隠れ者
独自の術式を使い、そして家の者達は正体を隠している謎の多い名家
そしてゆっくりと魔術法協会の理事様がマイクの前へやって来る
刹那、バチンという音と共に会場の電気が消え他の学生達がざわつき始める
「トラブルか・・・いや違う」
電気が消える瞬間、ショート音と共にドアが開く音と重なった
そして少ない人と人の間を術式も使わず刹那的な速さですり抜けていく
音の数的に三人、その方向には理事様がいる
敵の正確な位置はわからないが、ある程度の場所は特定できる
テーブルの上を飛び移りながら壇上に近づく
そして暗闇の中で犯人一人と接触して鎮圧する
残り二人という所で目の前に犯人らしき人間がいるのに気が付き、MMDを向ける
その瞬間に電気は回復してその場の状況がよく分かった。
どうやら鎮圧しているのは一人だけじゃなかったみたいで、俺のちょうど隣に赤い制服を着た同じ位の学生がいた。
そして俺と同じように片手で犯人を拘束して空いている手は、もう一人の犯人に銃型MMDを向けている
制服の色は三条高校の者だな、それにそっちは俺と違って有名人だ
いきなりの事でその場にいた全員が言葉を失っていると理事長が拍手をした
「まずはお遊びに付き合わせてしまった事に謝罪をしよう、彼等はテロリストではなく私の部下だ」
手を離すと顔を隠しているものを取る、そして桐原の方は既にMMDをホルスターに仕舞い込もうとしていた
「だが、この惨事に的確に、誰にも被害出させずに動けたのはこの大勢の中でもたった二人しかいない。もし、その標的が私ではなく無差別的な物だった場合、この二人以外は死んでいる事になる」
この言葉に全員が黙り込んでしまう
言葉じゃない、この状況自体が物語っている
「確かに術式の使用は法律的に禁止されているがそれを苦に思っている子は術式に頼っているという事になる。便利な物に頼って本来ある力を蔑ろにしてしまっている、それは勿体無いとは思わないかね?私はその事を知って欲しくてこんなお遊を行った、どうかその事を理解して欲しい」
少し空白があったが拍手が喝采した。なかなか粋なことをしやがる、理事様
時間が過ぎ、席を離れるとちょうどさっきの奴とばったり会う。後ろにもう一人付けてな
「自己紹介がまだだったな。三条高校、桐原悠だ」
「同じく三条高校、弓弦透です」
「一条高校、祠堂凱斗です。それで西十郎様が俺なんかになんの御用で?」
「俺を知っているのか、まぁいいお前は選手として出場するのか?」
「俺はエンジニアとしてメンバーに入っているので出場はしません」
「エンジニア?あの身体能力と対人スキルでか?」
「技術者としても君の名前は聞いたことがない、だけどもう忘れることはないよ」
「覚えてくれるとは光栄ですね」
「面白いな、君とは是非戦ってみたいものだな」
「何でだろうな、自分も同じ事考えていたよ」
一触即発、そんな空気が流れたが得意術式と同じように上手く壊せる人が現れた
「こんな所にいたのか、もうすぐミーティングの時間だ」
「東十郎先輩、すみませんすぐ準備します」
席を外すと弓弦さんも空気を読んだのか、移動した
「久しぶりだな、西十郎」
「貴方も元気そうでなりよりですよ」
「アイツが気になるのか?」
「凱斗と言ったな、一条にもあんな化物がいるなんてな」
「ふっ、少なくとも今のお前じゃあ敵わない奴だ。少なくとも俺を倒せる位にならないと俺を倒した祠堂には勝てないぞ」
「負けたのか、それは松下の質が落ちたからじゃないのか?」
「それを祠堂と戦った時にもう一度言えるかどうかだな」
「エンジニア相手に負けるはずがないだろ?少し例外はありそうだが勝てない相手じゃない」
そう言ってさっきの同級生と共にチームメンバーと合流した
それを遠くから見ていた祠堂
「すまなかったな、本当はあんな奴じゃなかったんだ」
「ピリピリしてましたからね、予想ですが名家の重荷を背負った性ですか」
「その通りだ、あいつは元々そんなにメンタルが強い訳じゃない。だから何にも言われない様に多くの力を求めた、身体能力の高さもそれが影響している」
「そうですか・・・・・それで彼は何に出場するんですか?」
「グラム・ストレーションは確実に出るな」
一対一の決闘式の競技
基本他のとは違って物理的な攻撃も許可されているが骨折以上の怪我を相手に与えた瞬間に失格となる
あの強さなら候補とは言わず、優勝は間違いないだろう
「普通に勝てると言ってしまったが西十郎と戦って勝てる見込みはあるか?」
「使う術式によりますね、ですが負ける気はないですから」
「あいつと戦ってみたいか?」
「機会があればでいいですよ、だけど想像するだけで楽しくなってくる」
俺がこんなに高揚したのは何年ぶりだろうな、少なくとも"5年前"には同じ経験が有った
本当なら今すぐにでも戦ってみたい、あの男の実力を見てみたいそんな考えが頭を巡った
「さて、七豪戦は明日からだ。今日はしっかりと睡眠を取っておくのだぞ」
「了解しました、明日は確かデスティネーション・スケートとサテラ・スナイプでしたね」
「あぁ、調整は頼んだぞ」
「分かっています、ではお先に失礼させていただきます」
本来二人で一つの部屋なのだが余りなので自分の部屋には誰もいない
ベットに倒れこむとゆっくりと眠りに落ちていく
エンジニアをしつつ、裏に潜んでいるキルティーチェを探しながら何とかしないといけないな
こっから8日間、学校を優勝するために頑張らないといけない。ここからが大変だ
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