第4話 最強と最敬―クロワガイスト
校門へと出てみると黒ずくめが風紀委員と戦っている
外で待ち構えていた報道者も安全な所に移動した後だ
「相手は4人か、こっちは3人だから誰か一人は二人相手しないといけないですね」
『こっちも四人だ』
手首のMMDを調整しながら副会長の士燮先輩がやって来る
一瞬俺を睨みつけたがすぐに視線を外した
「会長が必死に頑張っているのだから俺達も頑張らないと、それに祠堂」
何を言われるか身構えたがその判断は覆された
深々と頭を下げられ、謝られた
「お前のお陰で目が覚めたよ、俺はファーストで副会長という役職に優越感に浸っていた。そして色々と言ってしまった。すまない」
「いや、大丈夫ですよ。俺も本当の事を隠して戦ってたんですから、それに今はやらなくてはいけない事が先決です」
「とりあえず一人で相手だ、祠堂は大丈夫なのか?」
「術式破壊は攻撃術式ではないからな、凱斗はちゃんと攻撃系術式を持っているのか?」
「使わないだけでちゃんと持っていますよ、一応」
「まぁいざと成ればフォローするつもりだ、だけど俺を負かしたのだから甘えるなよ」
「了解しましたよ、先輩」
3階から飛び降りると東十郎先輩の衝撃波で着地威力を分散させる
黒ずくめは全員バラバラに動いているので目的となった奴の所に追っていく
相手が俺の事を見つけると術式を展開し始める
俺相手に術式を使うことが間違いだ
術式破壊を行い、体勢を崩した瞬間に武器を掴み、首を掴みながら体勢を崩させて取り押さえる
近くにあった機材用コードに拘束術式を使用して身動きを取れない様にして運び出す
先輩方も早く対処が終わり、全員を一つに纏める
「誰の命令でこの高校を襲撃した」
「・・・・・」
「黙秘権か、厄介だな」
「腕一本やっときます?」
「なかなかアグレッシブだな、君は」
いつまで経っても話す気配がない
もうそろそろ会見が終わる時間だ、リーダーは逃げたみたいだ
そう思って警察に連絡しようとした瞬間、術式を感じ取った
その攻撃はちょうど俺等4人へと銃弾の様に撃ち込まれた
『あららっ、外しちゃった』
「誰だ!!」
目線の先には小さい女の子が立っていた
フードをかぶり、飴を舐めており完全に子供だ
しかしそれよりも先に目に入ったのはその周りにある多くの人形
その内の一つはこっちに銃口を向けており、煙まで上がっていた
「まずは紹介ね、私はローザよ」
「お前が襲撃者の主犯格か」
「そうよ、その技術をボスが欲しがっているからね。本当はもっと早く来れたんだけど邪魔が入ってね」
「まだお前の上にボスがいるっていうのか」
「そうね、もし私に勝てたのなら話してあげてもいいわよ」
「随分と余裕なことだな」
「だって私は強いからね」
「痛い目遭っても知らないぞ」
「待て士燮、状況も分からない内に出るんじゃない」
ローザが人形に手を向けると銃を持ったブリキの人形が一気に先輩に狙いを定める
「何!?」
「まずは一人ね」
撃たれる前に先輩を突き飛ばして術式を破壊する
破壊したと思った瞬間が命取りだった
この術式は使用者が動かしているんじゃない、この人形自体が意思を持っている
知能享受術式
何年か前に子供に喜んで貰う為に作り出された術式で本来は戦闘用じゃない
だが使っている術式はこれで間違いないだろう
弾一つ一つを見ながらなんとか回避する
「大丈夫ですか?」
「なんとかな」
だが足に被弾していた為、出血がある
自己再生術式を掛けて、少しずつ元の状態に戻していく
「あららっ、でも狩りはこうでなくちゃ面白くないわね」
「俺等は狩られる方か、まったく子供だな」
「これでも貴方達と同じくらいの年よ、ただ成長が止まっているだけ」
「術式が遺伝子まで影響したら多くの影響があるって聞いたことがある、その一つか」
「あまり話していると目的の人に逃げられてしまう可能性があるわね」
「くそっ、あの人形一つ一つに意思があるって言うのならざっと30対4じゃねぇか」
「範囲系術式を使ったとしてもあの数と小ささだ、全員に当たるかどうかだ」
「体力勝負になったらこっちには勝ち目がない、早く終わらせるぞ」
銃型のMMDをホルスタ―にしまって、手袋型のMMDに指を通す。もしもの為だ
東十郎の合図で全員さっきと同じように別々の方向に走り出す
「面白いことするね、本当に狩りみたくなってきた」
人形を分散させて兵を総動員させた
物陰からざっと8体が俺の前に現れる
『見ツケタ、コウゲキダ』
鞘から剣を引き抜くと想像もしなかった速さで飛び掛けられる
撃ち落とすがおもちゃなので痛覚がない、そして何度も飛び掛られる
その間にもローザは、学校の方へ歩き出している
草むらが少し不自然に動いて明らかに誰かいるが今はそんな事は気にしていられない
「くそっ、しゃらくせぇ!!」
かかって来た人形全てを灰になるまで燃やし尽くした
本陣が空いているのを見過ごさす、走り抜ける
「終わりだ」
「どうかしらね」
ふと太陽が遮られ光がなくなった
上を向いてみるとさっきとは比べ物にならないくらいの大きさの人形が落っこちて来た
回避しきれない所だったが引き寄せられる様に回避できた
「これが私の本当のパートナー、クマのぬいぐるみのロバス。だけど同時に厄介のも来ちゃったわね」
「痛ててっ、助かったのか」
「おう、大丈夫かい?君」
どうやら俺は助けられたみたいだ、コイツに
客観的に見ると天然パーマで俺等よりかは年上みたいだ
「ありがとうございます、貴方は?」
「俺はクロワガイストの一人、バザードだ」
クロワガイスト
警察の権利を持った術式使用者で構成された部隊の事だ
魔術法教会のトップが選別した人達で構成されていてでその実力は只者じゃない
つい2年前くらいに結成されて術式犯罪で深刻な場合はこの人達が呼び出される
「今日は黒っちがいないから俺一人で片付けるからな、君は仲間の助けに行っていいよ。ここは俺が引き受ける」
俺が助けに行くとちょうど戦闘が始まった
「ふん、超重力系術式使いか。ロバスにはかなり質量があるから少し不利なのよね」
「そう言ってくれると結構嬉しいね」
「だけど不利とは言っても勝てないとは言ってないわ」
手の一部を引き裂くとペレットを弾丸のように発射する
だがそれは届くことなく、使用者の下に落っこちていく
「届かない届かない、もっと強くやらないと」
「暇そうね、でもまだまだよ」
「そうか、この勝負は結構簡単に終わりそうだ」
そこからは白熱した、超重力は文字通り重力術式の上級版
しかしそこには穴があって物理法則の覆らす事は出来ず、重力を加えられる制限がある
そこの穴に漬け込まれなければいいが・・・
先輩方の救出が終わり、戦いを見るしかない
「すごい、あの人形と対等に戦っている」
「俺とそんなに身長は変わらないがその分威力が加算されているしな」
「祠堂、お前はあの戦いをどう見る?」
「・・・はぁ~、少なくともあの男の人は不利な状況に陥りますね」
その不利な状況は思ったより早くに回収された
バザードが重力のボールを作り出すと辺り一面の物を巻き込む
俺等も巻き込まれそうになったが士燮先輩が縄を手摺りに括りつけてくれて何とかなった
「食らえよ、そして終わりだ」
「馬鹿、それが狙いだよバザード」
「理解しちゃった?でももう遅いよ」
辺り一面の物を巻き込んだ為にさっきロバスから放出されたペレットも巻き込まれていた
つまりこの攻撃の中にローザの術式が入り込んでいる、つまり―――
「その物体は私のテリトリーになった、そのまま潰されろ!!」
「やばっ!!」
「ちっ、全く!!」
必死に駆け抜けてバザードを踏み台にして重力玉に触れる
手から噴き出された『黒い炎』がその物自体を消滅させ、後に残った粒子と共に凱斗が降りてきた
いきなりの行動に全員が言葉を失っているが手首をいじりながらゆっくり落下する
「バザード、お前が調子に乗るとろくな事がないな」
「まさか君、黒っち・・・と言うか偽名だったんか!!」
「当たり前だろ、リーダーに報告ものだぞこれは」
「えっ?という事は凱斗くん、君はクロワガイストの一員?」
「ちっ!この短期間にどんどん正体がバレていく」
紛れもなく、俺は『黒炎』と呼ばれているクロワガイストの一員だ
正体を隠しているのは学生や未登録術式を使っているのもあるが"俺の生まれた家庭の癖"だ
「黒い炎の使い手、『黒炎』は君だったのか」
黒炎は至近距離型の術式破壊攻撃、術式破壊の衝撃と共に負荷を掛けることが出来るものだ
火の様に術式を通して使用者を攻撃する事も出来る、クロワガイスト『黒炎』の重要術式
この術式は攻撃も触れれば消し去る事が出来る
だが黒炎が触れる範囲なので無効化するにはかなりのリスクを伴う
「あまりこの力は使いたくないんだけどな!!」
瞬時加速で距離を詰めると力一杯握りしめて殴る
ガードするためにロバスが腕で止めると腕が飛び散った
「噂では聞いていたけどその黒炎、術式を破壊出来るんだ」
「術式で構成されているのならそのクマもただじゃあ済まないぜ」
「くっ!!ガイストが二人か、ここは出直させてもらうわ」
ロバスの背中に隠された人形を腕いっぱいに持って上に投げる
その人形達にどんどん意志が宿っていく
「残念だったな、ガイストは」
ガサッと言ってさっきの草の茂みから女の子が出てきた
『実は3人いるんだよね』
その子が両手を合わせると体の周りから煙が立ち込める
投げられた人形は凍り付き、地面に落ちると粉々に砕け散った
「あれは、まさか液体窒素か?」
「それって氷結術式の上級高度術式じゃないか!!」
冷たい空気は下に行くので地面も凍り出す
そしてそれはロバスの足元も同様だ
「しまっ―――!!」
「遅せよ!!」
銃型MMDで圧縮した黒炎を撃ち出してロバスを爆発させる
その前にロバスから離脱するが逆にそうしなけれは助かったかもしれないな
冷たい空気と暖かい空気が衝突すると何か起こるか―――そう、上昇気流だ
ローザの小さい体はちょうど上昇気流に乗っかり、高く吹き上げられた
「なっ!!回避行動を取らないと」
しかしいくら探しても残っている人形はなかった
そして上空でいつまでも浮ける訳がない、その時に掛かるのが
「今度こそ仕留めるぜ」
重力、それも今回は特別に超が付くけどな
バザードが上げた手を勢いよく下ろすとその通りに勢いよく地面に叩きつけられた
ちゃんと生命は維持する位は加減してある
「リーダー、来てたんですか」
「あぁ初めからね」
「あっ、あぁ~すみません」
「結局はまた凱斗の力を借りちゃったね」
「いいよ別に、その場にいてピンチだった訳だし」
これがクロワガイスト『十字架の守護神』という名は伊達じゃない
「それでコイツはどうします?」
「拘束だな、徹底的に聞き出すぞ」
『そうはいかないな』
攻撃、今度はちゃんと防ぐが出来た
黒炎で防ぐとその攻撃はさらさらと下に落ちていく
「これは砂―――いや、砂鉄か」
「お見事さすがガイストだ。読み通り磁場術式を使う、名前を名乗るとすればワンと、覚えておけ」
「敵がどんどん出てくるな」
「今回は戦わないよ」
人差し指で招かれるとローザが引き寄せられた
「今回は見逃してあげるけど次は本気で行くからね」
追い掛けるがその時にはもういなくなっていた、そしてちょうど会見が終わって報道陣が出てきた
◇
「襲撃された事は分かったいたけど、まさかここまで大事になっていたんてね」
会見が終わり、報道陣から解放された会長が外に出てくる
大きく伸びをすると無邪気に笑った
「俺も正直苦戦しました、それに凱斗がいなかったらと思うとゾッとしますね」
「クロワガイストなんでしょ、入学式の時になーちゃんとお爺様から聞かされて半信半疑だったけど、知り合う度に核心に
変わってきた。それに今回のでやっぱり本当だったみたいね」
ガイストの使う術式は国の代表よりも元から高度な術式で構成されている
そんな人が学校にいるとなれば一気に大騒ぎになる、それをかなり恐れていたのが彼の本音だ
生徒会に入れておくのはやっぱり良い判断だったかもしれないわね
「やっぱり執行委員を作っておいて良かったわね」
「会長は、あまり動揺しないんですね」
「えぇ、だって士燮くん達が必死に守ってくれるって信じてたから」
「それにしても一体あの人達は何者なんでしょうね」
『あの人達は『ワイガル』術式で世界をひっくり返そうとしている集団ですよ』
凱斗くんと共にそのリーダーさんがやって来る
青い帽子をかぶってさっきまでズボンだったがボーダーニーハイに履き直している
バザードさんは、自分で壊した物の修復作業を手伝っている
「この子がさっき説明した、クロワガイストのリーダーさん」
「雨宮麻里奈です」
「主任の実の妹ですよ、俺は内部で麻里奈は外を守ってました」
「かなり厳重な警備だったんだな、でも世界をひっくり返すって何の為に?」
「それはまだ分かりません、ですが今回の術式はかなり駒を進めるには適格な術式ですから」
膨大のエネルギーを無限で作り出すことが出来る、そんな物があればいくらでも考えはある
普通に爆発させるだけでも甚大な被害は免れない程になる
「でもまぁ凱斗がいれば、もし奪われたとしても破壊出来るからね」
「そこは敵には知られていないんだ」
「まぁあの術式を一番理解しているのは凱斗くんだしね」
「知られていたとしても『黒炎』は、凱斗にしか使えないものだから。それに破壊術式を破壊する事は不可能だし、方法が
それを含めてあと2つ程ありますから」
「『術式破壊』って凱斗くんにしか使えないって言っているけど、どうやってそれを確かめたの?」
「あれ?言ってませんでしたっけ?術式破壊が出来るのは俺だけじゃないですよ、後もう一人だけ存在しています。その他にも複製術式の使い手がいるんですよ、まぁガイストの上位3人は独自術式使いですから」
「そうなると雨宮さんも」
「神久夜(カグヤ)術式、凱斗と同じで攻撃用じゃないですが防御に関しては凱斗以外攻撃を与えられた人はいない」
つまり、術式破壊しか攻撃する方法がない、どんな物も拒絶する絶対防壁を作り出す術式
とある出来事から凱斗が麻里奈の為だけに作った独自術式の一つ、凱斗と同じく攻撃は攻撃用で別のMMDを使用する
「もうここまで来ると驚くことを失うな」
騒ぎの為に集まった警察からの聴取も終わり解散のする事になる
短く終わったのは俺等が裏から手を回した事は言うまでもない
「凱斗はたまに休む事を覚えた方がいいよ」
「よく言うわ、結局最後に頼ってくるのは俺じゃないか」
「本当は術式の整備や解体、首謀している可能性のある組織の調査なんてやって欲しい事が色々あるんだけどね」
「何の為の兄妹だよ、あの人なら全部出来そうだけどな」
「凱斗よりも早い作業の人は居ないからね」
軽く手を振ると振り返す、そしてバザードに一発蹴りを入れていた
「さ~て、戻りますか」
「凱斗、他に隠している事はもうないよな」
「そう考えてみると、これが全部ですね。バススロットも黒炎もガイストの事ももう知られてしまいましたし」
まぁそこには『祠堂凱斗としては』が付くけど、それを話してしまったら今の立場が崩れてしまう
「ならいいけど、いや良いという訳じゃないが仲間だし隠し事はなしにしよう」
「強引に入れられたんですよ俺は!俺の意見を尊重もせずに」
「君は即戦力だからな、俺が会長の立場でもやっていたかもな」
「味方がいないよ・・・この中には」
「まぁなったものは良いじゃないか、不満なら俺が聞いてやるからさ」
完全に蟠りはなくなって、お互いに笑っていられた
晴れて俺は生徒会全員に引き受けられた
◇
私が全ての事から開放されて生徒会室に戻ってくると凱斗くん一人だけだった
しかも机でうつぶせになって寝ている
凱斗くんの体はバススロットが二倍ある為なのか食事も睡眠時間もその分多く取っているらしい
まだ入学して間もないのにこんなに動かされた性なのか、今はぐっすり起きそうもない
こんなのが私よりも凄い事をいっぱいやっているなんてね
だけど、今はそんなことは気にしない
近くにあった冊子を丸めて思いっきり叩く
「起きてください!!仕事の時間ですよ」
「いてっ!あぁ~すみません爆睡してました」
「もうすぐ時間だし、他の人達ももうすぐ来るわよ」
言った通り他の役員の人達もぞろぞろと戻ってくる
お昼ご飯を食べながら本題に入る
「さて、今日の議題はもうすぐ行われる七校豪戦について確認しましょう」
全国に七校ある国立術式専門高校
その生徒達が10個の競技で競い合う祭典、それが七校豪戦『七豪戦』と言われることが多い
競う合うから学校のメンツが生徒達に掛かっている、その為に選手は能力優先の基本ファーストで構成される
実力があってもその競技に適していないと選ばれることはない
「選手は東十郎くんが審査してなんとか決まったんだけど、問題はまだあるのよね」
「エンジニアですね、少なくとももう一人欲しい所です」
「その系統に進みたい学生はほんのひと握りなのよね」
ファーストは略100%で選手や部隊として企業に行ってしまう
セカンドでもエンジニア志望は居ることはいるが、ファーストよりも知識が少ない分、技術力が戦力にならない人が多い
だけどその条件を満たして、自作MMDを作り出す事が可能で、高度な調整もできる優秀すぎる人物が約一人だけいる
七泉がそれに気が付き、言おうとした瞬間に口を塞いだ
「俺の役割は会場の護衛でしたね、では俺は用があるのでこれで」
早めに出ようと少し早歩きで出ようとする。それを見て、響先輩があることに気が付いた
「あの!そういえば凱斗くんって、エンジニア志望でしたよね」
響先輩、世の中には言ってはいけないタイミングと言うものがあるんですよ
先輩の言葉に思い出したかの様に会長の表情が華やいだ
「そういえば君は自分でMMDを作れる程の腕前じゃないか、私とした事が盲点だったよ」
「そうですね、彼の腕なら十分すぎる程戦力です」
「かい―――」
「嫌です!」
「もう、言う前に断るんじゃないですよ」
「なら最後まで聞きますがエンジニアになる用件ならお断りいたします」
「嫌がるわね、技術者として成績を収めれば企業に顔を知られて就職に有利になるわよ」
「そもそも目立ちたくありませんし、卒業すればIKUSAに就職は決まっていますから」
「生徒会命令よ、エンジニアとして出なさい」
「エンジニアは信頼関係を重点として構成されます。俺はセカンドですし、選手と面識がある訳でもないですから」
「会長、技術的では彼に何を言っても動かないと思います。もっと合理的な意見を出したほうが良いと思われます」
いつも通り何かタブレットを操作しながら須賀谷先輩が的確な事を言うと会長もこれは効いたらしい
『勝った』そう思ってドアを開けると廊下の奥から東十郎先輩がやって来た
一周り見て俺を見つけると腕を掴んだ
「ちょうど良かった、祠堂を借りていくぞ」
「えぇ、良いけどどうしたの?」
「MMDの調子が少し悪い奴がいてな、祠堂に直してもらおうと思ってな」
俺の許可も取らずに拉致される様に担がれて移動される
しっかりと固定されて暴れる事も出来ないし、俺の力じゃあ抜け出すのも困難だ
仏頂面が多い東十郎くんには珍しく少し笑っていた
実習室に連れてこられると中には女の子が一人だけ立っていた
この人はファーストで同じ学年だということは知っている
クリーム色の髪を後ろで二つ結びにして眼は特殊な色をしているが術眼ではない
だが満奈と同じく制服が小さい様に見える、膨らみも同じくらいだ
「初めまして如月舞です」
「俺はセカンドコードの祠堂凱斗です、それでMMDは?」
差し出されたMMDはスマートタブレット型だった
このタイプは、士燮先輩や七泉のMMDの様に直接起動式を通さなくても術式の補助が受けられるものだ
つまりは持っている、身に付けているだけで自動的に起動式を読み取って補助をしながら術式を発動できる
まぁこのタイプでも問題はない、そもそも七泉が使っている物と同じだ
コードを差し込み、ディスプレイで隅から隅まで調べてみる
「少し強引に術式を使ったみたいだな、魔力流動値が高い。多分その影響だろうな」
「直りますか?」
「ついでに使いやすくしておく、君の使う得意術式は『加速起動術式』と『身体向上術式』で良いかな?」
「合ってますけどどうやってそれを・・・」
「元々俺はそういうのが分かる『眼』を持っているんだ」
「術眼ですか?」
「片目だけですけどね―――はい終わった、試しにどうぞ」
俺は少しその場から離れて、術式を展開してもらう
「―――!!、すごい!術式がこんなあっさり使えるなんて」
「どういたしまして、じゃあ俺はこれで」
ドアノブに手をかけた瞬間、室内放送のスイッチが入る
『待て!そこを動くな祠堂』
瞬時に足を止める、そしてその場にどれだけの人がいるかを思い知らされた
須賀谷先輩があの時に連絡を送っていたのか、道理でタイミングが良かった訳だ
周りにはファーストコードの方々が上から見ていた
数が少なく、東十郎先輩がいる事から七豪戦の選手の人達だろう
如月さんの方を見てみると目線を逸らされた、なるほどこの人も共犯者か
「どうやら俺は引っ掛けられたみたいだな」
『すまないな、でもこうでもしないとお前を引き抜くには手が掛かるものだ』
その場にいるファースト全員が俺の技術を見て、何も文句を零さなかった
出場選手全員が俺の技術を認めてくれたって事だ
不意にドアが開いて会長が歩いてくる
「祠堂凱斗くん、改めてお願いします。エンジニアとして共に戦ってください」
「流石の俺でもこの空気で断れる勇気はないですよ、引き受けます」
会長から差し伸ばされた手を掴み取る、ファーストの人達も反対者は出なかった
俺は正式にエンジニアの仕事を受けいれる事になった、また強引に
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