第16話 輪林檎―遇殿寺住職
草むらの中心、目隠しをして座禅を組んでいる悠の後ろからいくつかの風の刃を展開させられる
だがそれが見えているかの様にするりとかわしてしまう
「うん、大体習得したって所ね」
「時間はほんの少しだけ悠が早いみたいだね」
「よし!まずは第一歩だな」
適当な瞬間に石を投げると後ろ向きでも普通にかわした
完全に習得したみたいだ
「じゃあ次のステップと行こうか」
「その前にお昼にしましょう」
近くのお店に立ち寄ると軽く手を上げると店員が表情を変えた
案内されるまま進むと大きな個室に誘導された
それを普通そうに席に座るのを見て、僕達も釣られて座る
「外装では気が付かなかったですがこんな部屋があったんですね」
「ここは四皇と一部の人御用達の専用スペース、関係者以外立ち入り禁止の場所よ」
少しすると注文をしていないのに店員がどんどん料理を持ってくる
美佳子さんは手を組みながらそれを見ている
「じゃあいただこうかしらね」
食べ始めると結構美味しい
本家にいるとあまり日本料理以外の物を食べないから中華とかイタリアン料理は普通の人より美味しく感じる
透も同じ条件なので箸の進み具合が一緒だ
食べ終わると俺の本題から外れたもう一つの話に入る
「じゃあこっちの仕事の話をしましょうか、リング・アップルの術式を使っていると思うのは『アンベート』中国系統のマフィアよ、その組織がこの術式を使い始めたのはつい一ヶ月前、それも日本に来ていきなりよ」
「アンベート、捕食者という意味ですね」
「傘下に入る組織の尻尾切りが多くあってね、全く掴めないのよね」
「そういう仕事ってガイストの仕事じゃないんですか?」
「それが全員出払っていてね、たまたま何も仕事がなかった私が出されてここにいるって訳」
「凱斗もいないのか」
「彼は他のメンバーと無限蛇箱って言うアイテムが出現したからその護衛と回収、そして解析に取り掛かっている」
「実戦だけじゃないのか、結構色んな仕事をしているんだな」
「えぇ『狗』みたいなものだからね」
「意外と大変そうですね」
「凱斗くん、黒炎の役職はね。彼自身特殊な術式を使うから上司にかなり働かされていてリーダーに止められているのよね、黒炎の様な人材がもう一人いれば良い話なんだけどそんなのは存在しないからね」
「流石に僕でも変わりまでは務まりませんからね」
「話を戻すわ、首領の名前はライディ・ストヴァル。表に出始めたのを考えると恐らくこの人が輪林檎を使っていると考えて間違いないわね」
「確か多くの術式を使える様になるんだったな、弱点を突かれたら危ないかもな」
「僕から思ったんですけど悠は範囲系術式しか持っていないんですよね」
「確かにな、あとは少し衝撃術式を使える様になった位だしな」
「接近は黒炎の得意戦法だからね、もし戦うのなら遠距離で攻めるしかないね」
「そういえばさっきから聞きたかった事があるんですが」
「何かしら?」
「貴方はどちらの味方なんですか?」
あくまでこの人はクロワガイストの創設者だ、黒炎の味方をするのは必然だ
なのに何でそんな人が味方を倒すことの手助けをしていてくれるのか
「どちらかと言うと今は当主くんの味方かもね、それに強くなれば良い刺激になると思うし一石二鳥だね」
でも少なくとも凱斗くんに勝てるまでになるには時間が足りなすぎる
だが、それを何とかしちゃうのが私達なのだから問題ない
「そうですか、では具体的に術式について考えましょう」
「・・・それよりも先に実践が来ちゃったみたいね」
美佳子さんよりは遅かったがちゃんと敵が来ることは分かっていた
衝撃、そのすぐ後に店の中にいる客の悲鳴が聞こえる
「そろそろ私が来たという情報を聞きつけてくると思ったけど、予想通りね」
「ですが、なんで相手が直々に来るんですか?」
「それほど力を付けているって事かしらね」
俺達のいるドアを何回も蹴っている、壊れるのも時間の問題だ
「こうなったらここで迎え撃つしかないわね」
「透は残ったいる人の誘導を頼む」
「分かった、じゃあ一気に行くよ」
壊れた瞬間に敵に向かって走りこむ
股の下を通ると少しの間動けないように地面に足を沈ませる
「一人逃げたか、まぁいい目的の奴はここにいる」
「今回は当主くんもいるけどね」
「その顔、確か桐原家の当主だったな。何でその女といる」
「少し技術を貰おうと同行しているんだよ、お前達を倒すことも条件に含まれているから行くぞ」
爆破術式を展開して相手を吹き飛ばす
爆発によって巻き上げられた煙を利用して敵を斬り付けた
本物ではないが斬れる様に術式が組み上げられている
「どうだ?」
「いいえまだよ、それに全くダメージがない」
煙の中からゆっくりと立ち上がる、言う通りで切り傷があるが全く出血していない
「硬化術式、あのグループの術式が役に立つなんてな」
「効いていなかったみたいだな」
「俺は何でも使える、例えばお前と同じ術式もな」
爆破術式、相殺するがこっちの方が本筋だから力では俺が優った
だが、水立術式を展開されて追撃は失敗した
「まずいわね、ここは連携と行きましょう」
「ですが、俺は」
「信じているわよ、当主くん」
美佳子さんが前衛で俺は後ろから援護する体勢に入る
面白いといい腰から警棒を取り出して交戦する
いつでも撃てる様に構えてはいるが俺に撃つ事はとてもできない
さっき透が言った通り、俺の術式は広範囲に攻撃が及ぶ為に魔法陣を展開する場所を選ばなくてはいけない
下手な所に出してしまうと美佳子さんにも攻撃があたってしまう
「やっぱり、君は凱斗くんによく似ているよ」
「いきなり何ですか、戦いに集中しないと」
「『私に構わず撃て』って言ったら君はその引き金を引ける?」
「俺は・・・」
この人は確かに強い、撃った所で何かしらで自分の身を守れるだろう
風の極級術式を使えば爆発の衝撃も当たらない筈だ
だが、頭では結論に至ったが俺の指は引き金から外れていた
「それでいい、まだ君はその覚悟がないからね」
「話は終わりか?方を付けるぞ!」
嘗低、反発術式が組み込まれていたが刀を右から左に持ち替えて右手を差し出した
バギッと言う音と共に右腕が首に巻き付く様になった
しかし左腕を右腕の位置に持っていって、反動で刀を振り下ろした
硬質化を解いていたのか、右肩から左脇腹まで一直線に出血した
「どうやら、多く術式を持っていても同時に使えるのは精々3つって所ね」
「食らえ!」
後ずさりした瞬間に俺の射線上に入る、これを狙って誘導していたのか
爆破衝撃術式でライディを部屋の外まで吹き飛ばす
客は全員透が誘導済みで中には誰もいない
「ここでならさっきの個室とは違って思う存分戦える」
「僕もやるよ」
「危険術式の使用により身柄拘束をします」
圧倒的に不利な状況、だがライディは焦りもしなかった
ゆっくりと傷を抑えて立ち上がると美佳子さんに向けて術式を発動する
「これが輪林檎か!」
発動を中止させようと攻撃術式を展開させるが使っていない手で攻撃をされる
訓練の成果で回避するが術式は自己崩壊した
「まだ僕がいるよ」
地面に引きずり込もうとして体勢を崩させる
その隙に俺と美佳子さんが攻撃を仕掛ける
「くそっ、こうなったら」
隠し持っていた何かを噛みちぎって俺等の方に投げる
「閃光手榴弾!!みんな目を隠して!!」
眩い光の後、目を開けるとライディの姿はいなかった
しかし、かすかな残留魔力を察知して周りを見渡す
壁の至る所に設置型の崩壊術式が組み込まれている
その術式が発動する時間ではどう考えても逃げきれない
「伏せて!!」
回転して壁にある術式に攻撃を当てる
攻撃をぶつけてかき消した、いいや違う・・・
術式を切り裂いて無効化した、まるで―――
「術式破壊、凱斗以外に使える人がいたのか」
「凱斗くんが使うのよりも歪だけどね、それにこれは彼女の『術式切断』だよ」
彼女、つまりは術式破壊を使えるのは一人じゃないという事だ
見様見真似でここまで構成してしまうのは悠よりも才能が段違いにある
ピピッと言う音と共に耳に着けていた通信機が光りだした
「もしもし?―――えぇ分かった、今すぐ向かうわ」
「どうしました?」
「私達の他にもアンベートの人と戦っていた人がいたみたい」
「じゃあ危険じゃないですか」
「いや、その人が一人捕まえたみたいなのよ」
状況が分からないまま、その戦いがあった場所に向かう事になった
◇
美佳子に連絡が入る数十分前の事
人ごみの中、笠を被り錫杖を付きながら歩いていく
奈良にはこういう人が多いが僕だけが何故か止められる
笠を上げて見てみるとスーツを着たお兄さんと少し柄の悪そうなおじさんが並んで立っていた
「僕に何の御用かな?」
「失礼、貴方に似た人が暴れていたと言う話を聞いたもので」
「なるほど、それでその人の治療に来たと言う事だね」
「そうですね、まさか貴方ではないでしょうね」
「僕は争い事は嫌いなものでね」
先を急ぎたいのか、傘を下げて歩き出す
しかし私の監視役の方が肩を掴みながら行く手を遮った
「じゃあ知り合いにそう言う人はいないのか?」
「荒げていては人に聞いていると言うよりかは恐喝している様に見えるよ」
しかし肩に掛けられた手を掴むと簡単に投げ飛ばしてしまう
地面に叩きつけると何事もなかった様に歩き出す
「貴方、やはり只者ではないですね」
「僕はただの住職だよ、他の何ものでもない」
錫杖を鳴らして着けていた笠を取り外す
坊さんだから髪型はスキンヘットで間衣を脱いで報告通り甚平の姿になる
目は細いのか開けていないのか閉じている様に見える
「これから仕事があるというのに、見逃してくれないかな?」
「いいえ、貴方を倒さないといけないので」
「こりゃ厳しいね」
蔑ろにされていたおじさん風の人も怒ったのか握り拳を作って殴りかかってくる
錫杖で足の急所をついて派手に転ばせる
「君の見立て通りで僕は特殊だけど、危害は加えていないはずなのだけど」
「貴方は私の仕事パートナーの人を警察に引き渡したのでは?」
「・・・あぁ~、あの人達ね。何か女の人に絡んでいたのを注意したら怒り出して少し懲らしめただけだよ」
あの人達もかなりの手練れです、それを簡単に倒したとなるとその危険性は高くなる
相手に気付かれない内にMMDを装着させる
「そうなると君も敵、という事になるんだよね」
「そうなりますね」
「見逃してくれると嬉しいんだけど、監視役の人も伸びている事だし大丈夫じゃないかな?」
「いえ、それは出来ません」
「そうなのか、なら―――」
本気で行くしかないねと言って少しだが目を開いた
その眼は蛇の様で一瞬本能的に食われると錯覚してしまった程だ
先手は譲ってもらったのか初めの攻撃は私だった
しかしその攻撃は体に当たることなく、手で弾かれていく
その後も続けていくが子供の遊びの様に流されてしまう
「そろそろ僕から良いかい?」
攻撃によって伸びていた右腕を回して肘関節を土台の様にして右足を乗っけられ、それを軸として左足の回転蹴り
距離を取ると顔に液体が流れ落ちる感触があった
汗かと思ったが、かすっただけの頬には深い傷が出来ており出血している
ただの蹴りの筈だが一撃でも喰らえば致命傷は免れない程の強さだ
来なさいと手招きされて短距離術式を使用する
あまり気は進まないが袖から投用ナイフを飛ばす
「中々面白い攻撃をする、だけれども」
投げられた約十数枚のナイフを指の間だけで掴み取ってしまう
ですがまぁ最悪の場合として想定していたのは幸いでした
催眠効果の効力ガスを展開して少しでも動きを封じ込める
だが、次の瞬間思いもよらない行動を起こす
忍術を使うかの様に人差し指と中指を立てて、火炎術式を展開する
周りにガスがあるのに炎を使うとは、この人は本当に何者ですか!?
私が接近しているとはいえ、自分が中心にいるから怪我は免れない
火の玉の様に浮いていてガスの中に入る
それを見た瞬間に動きを止めて、爆発に備えて腕に硬化術式を展開する
しかし一向に爆発は起こることはなかった
「フェイク・・・」
「そう、君が見ていたものは燃える事のない火だ」
そしてその行動は勝敗を分けた
懐まで忍び込むと両腕で衝撃術式と反動術式の二効一点突き
腕しか硬化していなかった為に腹部はノーガードで派手に突き飛ばされる
「いや~、まだ衰えていないね」
一歩、たった片足を動かしただけで飛ばされた15メートル程は離れていた私の元までやってくる
体の至る所を触って出血部分や骨折している所を調べる
「もう再起不能状態だね、あの一撃の時に少し体勢を崩したのはいい判断だったと思うよ」
直撃は免れたが左上半身の殆どの骨に何かしらの影響が出てしまっている
もう戦う事は無理に近い
「まさか、ここまでやられるとは思ってもみなかったですね」
「さて、もうすぐ君を拘束しにくる人が来る筈だ。僕はそれまで君を監視してなくちゃいけない」
「状況は不利、ですが―――」
多少犠牲は払わないといけない
まさか私自身がこの術式を使う羽目になるとは思ってもみなかった
監視役のマッザさんに輪林檎術式をかける
勢い良く魔力を引き抜いて骨を強引に固定する
その行動には相手の方も驚きを隠せないみたいだ
「君は中々無茶なことをするね」
「今日の所は貴方の言葉に甘えてこれで失礼させていただきます」
「そうもいかないね、君を逃がす訳にはいかない」
鬼火を展開して相手に向かって取り囲むように包み込む
だが監視役のおじさんを囮にして本人は不可視術式を掛けて逃げてしまった
残った人を拘束すると数分後に警察と子供二人、そして懐かしい女性がやってくる
「おぉ懐かしいね、美佳子くんじゃないか」
「確かに随分と見なかった顔がいるものね、輝虎明志(きとらあかし)」
「知り合いだったんですか」
「私達は元々5人だったけど、一人だけ出家した人がこの人」
「いや~、僕の他は有名人になっちゃって」
「貴方も現場復帰すればいいじゃない、まだ実力は衰えていないでしょ」
「出家した時に話ただろ?僕はやる事があるんだよ」
「それが何なのかは聞かされていないけどね」
「何で君が桐原家の当主さんと一緒なのかも説明がないけどね」
マッザを拘束後、明志さんの仕事に同行してその場所で休憩させてもらう
ライディの攻撃で右腕はヒビが入っていたみたいで透に治療してもらっている
数十分後、仕事が終わって明志さんも泊まっているホテルに合流する
「―――美佳子くんに爆破術式を教わっていたのか」
「白巫女ちゃんにも教えていたからね」
「それで君等は一緒にいる訳か、遠距離としては申し分ない術式だね」
「彼は凱斗くん、つまり黒炎に勝つくらいになりたいってお願いされてね」
少し考える様な素振りはあったがまた笑顔になった
「遠距離となると的確に展開しないと無駄撃ちになるからね、特に凱斗くんの場合は僕の様に加速術式なしでほんの20メ―トル位なら一歩で詰められるから厄介だよ」
「私もそこを問題視しているのよね、動きを止めようとしてもさらに加速でかわされる可能性もあるしね」
「まさか、上司が出来の良い部下を懲らしめようと思っている事なんて想像してないだろうね」
「いいのよ、彼は優秀だけど時にはガツンと行かないと」
「因みにその矛先はどこに行くんですか」
「私達とか、良い様に使われてばかりだから反逆的な意味で」
「君等職場で何かストレスでもあるのかい?」
お酒が入っている性か、本当に愚痴があったみたいでボロボロと溢れ出す
若干引き気味になったが明志さんは顔色一つ変えずにちゃんと聞いている
「だからね、理事長の孫だからって威張らないで自分を出さないのはどうかと思うのよ!!」
「偉いからって自分も偉いって訳じゃないからね」
「はぁ!?自分で術式を作って人に貢献しているんだから十分偉いでしょ!!私達はどっちかと言うと凄いだけだから!」
「僕達も行いは偉い事をしている筈だと思うよ」
「力を持つ者は持たない者を守らなくちゃいけない、それが師匠(潔重)の言葉でしょ?」
「だが統括し的確な運営まで行っているのなら僕は十分だと思うよ」
扱いが完全になれていて言い負けしていない
個があり、決して揺らいでいない
集中力があり、視点が完全に移動していない
「さて、君は凱斗くんには勝てないと言っていたね。その理由は何かな?」
「一番の理由は極級術式の二つ持ちが影響しています」
「確かに極級術式は高度上級術式よりも強いからね、それに彼が使うのは永久に術式が使える物と即死以外の怪我をあっと言う間に治してしまうからね。特に黒炎は攻撃でもあり、僕達じゃあ止める事は出来ない最大の防御でもある」
「ジャミングすらも聞かない完全な術式、何か弱点はないんですか」
「僕の見た限り一つだけある、術式破壊は攻撃を無効化出来ないけど黒炎は術式を通していれば完全に術者と切れていないかぎり破壊できる。つまり―――」
「完全に術式から切り離した攻撃であれば黒炎の影響は受けない」
「しかしこれが簡単な話じゃなんだよね、切り離し型の術式を使うには普通の物を使うより時間がかかる。その内に撃たれてしまったら不利になる」
「結局は併合していると無敵というわけなのか」
「それが黒炎の強さだからね」
「潔重魔法術理事長の接近術が凱斗の強さという訳だから黒炎を使っている時は武器を使わない筈」
「格闘スキルの高さで何か欠点を見つけないと」
目が細いからいつ寝たのか分からなかったがこの話し合いは夜遅くまで続いた
結局打倒黒炎は分からずに朝を迎えた
「いや~、昨日は面白いものを聞かせてもらったよ」
「龍永くんには言わないでね」
「彼のフィジカルは普通の子とは少し違う、もしかしたら彼もそうなのかもしれない」
「そんな簡単な話なのかしら?」
「僕は『ある術式』を探しながら全国を転々と回っているだから君よりも目利きはある筈だよ」
「それで、もし当主くんがその術式が使えるとして凱斗くんに勝てると思うの」
いや~と少し考えつつ、表情は崩さないまま考える
輝虎くんの中ではその答えは既に分かりきっている様ね
「過程を変えてみれば可能な話だね、彼が使うのが七豪戦のままで西十郎くんがその術式を使えば同等といってもいい」
「黒炎の問題も何とかなるの?」
「彼ならその問題を解決してくれる筈だ、凱斗くんが天才的強者なら西十郎くんは透くんと合わせて努力型強者だからね」
「だったら後は彼の術式を極級まで引き上げることを考えればいい話ね」
「まったく、君はかなり罪深い女だよ」
「いきなり酷い事言うわね、何よその理由は」
ヘラヘラとしていた顔がいきなり真剣な顔つきになる
「さっきも言った通り、七豪戦の戦い方なら彼が持っている極級を二つ使っていた所で西十郎くんにも勝率はある」
「・・・そういう事」
静かに納得してしまう
袖に手を入れて無言で頷く
「凱斗くんの戦闘スタイルは格闘だけじゃない、あれは至近距離で当てなくちゃいけないから危険性がある。格闘以外での戦い方をまだ西十郎くんに話していないだろ」
そのスタイルはガイストメンバーも知らない、師匠と私達5人しか知らない戦い方
「あの光撃術式というものに合わされたら、勝率は言わなくても分かるね」
「いいえ、彼の力ならそれだって覆せる。覚醒前の彼女に出来たのだから彼なら全開の黒炎を倒す事も期待できる」
はっきりと自信を持って言い切った、これはそれだけの資格を確信しているという事だ
「・・・一応最後に君が忘れている事を言うよ」
「何かしら?」
「黒炎は僕達の味方だからね、本当に怒らせて辞められない様にね」
私の言葉よりも強く、釘を刺された
術式キングテッド @yuusetu
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