第15話 輪林檎―斬巫女

奈良の中心部に大きくそれも古いながら立派に存在感を出している家がある

その家は古くから有名で最近では世間を大きく賑わせた名家の一つ

名前は『桐原』という

数日前に行われた『国立術式規定七校豪戦大会』のグラム・ストレーションにより当主が敗北、最強と言われていた人の負けは大きく家を揺るがせた

しかし東側の当主と対戦相手の素性によってその騒動は段々と収まっていった

負けから大きなものを学んだ当主は今も自分を高めている

他の術式者が地面から出現させた岩を爆発させて壊していく

爆破術式、七豪戦の時よりも遥かに向上している

迷いが無くなったのもあるが一番大きいのは野神凱斗の存在だ

彼は勝利してまた戦う時に全力を尽くせる様にと高性能MMDまで用意してくれた

今まで使っていたMMDよりも機能は向上し、無駄な魔力流動も減少している

伸び悩みをこうも簡単に見抜いてそれに合った物を用意されるのは専属技術者としてはかなり痛い

だが、自然と妬ましいとは思わなかった

模擬戦が終わり、軽く汗を拭く

あの敗北以来俺にとって凱斗は大きな目標になっている

二人共紛れもなく全力だったがハンデを負わされていた事は大きな問題点だ

極級術式、それも二つも持っているとなるとかなり不利な状況だ

対抗出来るのはやっぱり俺の爆破系の極級術式しかない

極級術式は人によってその威力も性能も違う、その人だけの術式になることだ

まだ完全に爆破系術式を使いこなせていないと言う事になるのか・・・

「昼ごはんにするか、皆さんもどうぞ」

あれ以来分家の人達との壁も一緒に壊れてお互いに気を配るようになった、そこは成長したと実感している

一緒に食事をする事によってその人がどんな人が一番分かる

『当主はやっぱり強いですね』

『本当に勝った人がいるとはとても思えないんですが』

「野上凱斗は俺の友達でもあるけど最高のライバルだ、だから次会った時は絶対に勝ちたい」

「だけど、今のままじゃあ勝てそうにはない」

関西地方では俺は一番強い事になっているからここに居ても成長しない

関東には東十郎が居るが教わるのは何か恥ずかしい面が強く出ている

それに習った所で多分凱斗に勝てるとは思えない

だから俺は『ウォーズ・ピラメスト』にかなり期待している

日本で通用している物が世界で対等に出来るのか、そこがかなり気になる

食事が終わると俺の部屋には本や資料で埋め尽くされていた

「あまり極級術式まで使っている人がいないから多分量が少ないよ」

「少しでも良いから情報が欲しい」

「真面目だね、僕の最大限調べてみるよ」

時間が欲しいという事で気分転換に外に散歩に出かけた

古風な橋の上で川の流れを見つめる

昔も強さを求めていたが今回の物は張り合うためだ

確かに凱斗はガイストで野上家当主だ、強いのは当たり前だ

だから同じ七術家で並べる位になりたいと言う自分への足枷の様なものだ

深く考えていると不意に肩を叩かれる

何かと思って振り向くと頬を指で押された

「何深いこと考えているの、元気出しなさいよ」

手に団子を持ちながら俺の隣に移動して食べ始める

随分と親しい人だ、だけど大きな問題がひとつ・・・

「・・・誰?」

困惑している俺を面白そうに見ている

全体的に余裕を感じさせる態度をしているが人を落ち着かせる雰囲気がある女性だ

歳は聞けないから推測だけど俺とそんなに離れていないと思うくらい若い顔立ちをしている

片手には身長と同じくらいの日本刀を抱えている

「それで貴方は?」

「私はどうでもいいじゃない、君は桐原家の当主くんでしょ」

「そうですけど、俺に何の御用で?」

「若者が行き詰っているからついね、昔同じ様な子がいたから流れで」

「そうですか?」

ん~と言いながら色んな所を凝視していく

団子の串を咥えて、自分で何かを納得すると頷く

「君、時間ある?」

「あるといえば有りますけど」

「じゃあ私と戦ってみない?少なくとも君にメリットはあると思うよ」

「俺にメリット?」

ついその言葉で思わず承諾してしまう

本家に戻って広場で準備を済ませてもらってMMDを構える

日本刀を片手で引き抜く、勿論本物ではなく刀状のMMDである

俺や凱斗が使っている銃などは攻撃の時に流せばいいだけだがこれは常に魔力や術式を使っていないといけないからそれだけで強者だということはわかる

「悠、あの人かなり厄介だと思うよ」

「分かっている、だけど俺はこういう戦いを一回もした事がない」

この戦いは勝負受けるだけでもメリットが多い

調整が終わった自分のMMDを構えて広場に入る

『お互い良いですね?では、始め!!』

最初に攻撃したのは俺の方だ

手始めに爆破術式を相手の至近距離で展開する

しかし手馴れているもので簡単にかわされる

威力的には初級ランクの物だ、これで食らっていたら話にならない

少し本気になってみる、それだけの価値はあるはずだ

多重連爆波動術式を女性の周りに囲むように展開する

ただ展開するだけだと凱斗の場合は魔法陣を破壊してしまうから不規則に動くようにした

これで黒炎でも破壊する事は出来ない筈だ

重なった瞬間に爆発が起こり、一体は煙が巻き上がった

「これでどうだ?」

「良い攻撃ね、一つ一つの術式攻撃は低いけどそれを衝撃で高めるなんて」

全く無傷だった、それよりも砂が巻き上がったのに服には汚れ一つ付いていない

だがその前に攻撃を済ませる、この工程は凱斗との戦いの時と一緒だ

粉塵爆発の条件は整った、後は火を付けるだけだ

爆破術式を展開した瞬間に相手の攻撃が始まった

空気が通る音、その音が聞こえた瞬間に周りを囲っていた砂塵は吹き飛ばされた

「空気系の術式使いですか」

「そうよ、君も少しは使えるでしょ?」

しかも砂塵は並大抵の風じゃあ全てを吹き飛ばす事は出来ない、一筋縄じゃあ行かないみたいだ

考えている様子を見て何か面白そうに見ている

「行かないならそろそろこっちも攻撃するよ」

一振り、その一回で体の至る所が切り裂かれた

しかし皮膚までは到達しておらず切れたのは服の表面だけだ

「くっ!やばいな」

「君の本気はその程度かな?」

「良いですよ、本気で行きますよ」

爆破衝撃術式を展開する、だが相手は余裕を出しているのか全くかわそうとはしない

発射され目の前まで迫るとまた空気が通る音がした

だが俺の攻撃が相手に当たった筈なのだが爆発も衝撃も走っていない

かき消された、いやそれ以上の事をあの一瞬で簡単にやっている

あの一振りで自分の周りに空気を切り裂き、真空状態を作り出して俺の攻撃を成り立たなくさせた

それを何回もやられたら俺に勝ち目はない

「どうやら終わりみたいね」

「まだですよ」

直撃がダメなら外堀から埋めていくしかない

爆破術式を使いながら少しずつ爆風術式を地面や壁に設置していく

もう一度多重連爆波動術式をより多く気が付かれない様に展開する

「君、自分の弱点に気が付いている?」

集中力を途切れさせる罠だと思い、聞き流す

多重で展開している時は一瞬でも気を途切れさせたら崩壊したり不安定になってしまう

攻撃をしようとした瞬間に爆風術式を展開させて術式自体を成り立たせなくさせた

体勢を崩したのを見逃さず、一点集中で着火させる

「当主くんは、一人で戦う事が多かったみたいだからその欠点には気が付いていないみたいね」

刀を地面に思いっきり突き刺すと魔力が蜘蛛の巣状に広がり、残っていた爆風術式を破壊した

それだけではなく、隠し持っていたクナイに術式を込めると多重連爆波動術式の魔法陣に当てて崩壊させていく

走り出すと刀を放物線の先で俺に当たる様に投げて込む

「これしき!!」

刀は重みがあったが俺に直撃することはなかった

しかし、次の瞬間には相手の姿を見失って、視界が一瞬で暗転した

「だ~れだ♪」

背中に回り込まれて故意的に体を密着させられる

この勝負、誰が見ても俺の完敗だ・・・

「やっぱり、あの術式は極級術式だったんですか」

「そうよ、少なくとも私の同僚と言うか幼馴染4人も使えるわ」

「そんな状況じゃあ悠に勝ち目はないですね」

あの戦いでショックが大きかったのか悠は自分の部屋に閉じこもってしまった

その当事者は僕の前で気品があるが凄くだらしなくくつろいでいる

「所であなたはもしかして神風術式使いの柳桜美佳子さんですよね」

「あら、貴方は私の事を知っているのね。当主くんは全く気付いてくれなかったからこれでも少しヘコんでんのよ」

「知っているも何も貴方は七術家よりも地位が高い、『最強の四皇』と言われている一人じゃないですか」

四皇、その人達はエレメント術式の基礎術式(火水風雷)の極級術式を使う4人組

魔法術界のトップで警察権限や政治的権限も持っている最高権力者

「確かクロワガイストを作ったのも貴方達でしたよね」

「凱斗くんとの戦いでかなり意識が崩壊したからね、でも彼は思った以上に成長しているみたいね」

「それを見に来たのですか?それともガイストだと隠していたから謝罪にしたんですか?」

「あの戦いは私達にとってもかなり多くのデータを獲得出来たからね、でも役員全員は事前に身元を知っていたからあの戦いは正式だと認められていたわ」

「そうなんですか?では今回の目的はなんですか?」

「ここに来た理由は近くで輪林檎リング・アップルっていう術式の使用を確認したからよ」

「リング・アップル?僕も聞いたことのない術式ですね」

「君は瞬間記憶能力を利用して殆どの術式コードを記憶しているけど、これは禁忌術式に部類されているから逆に知っていたら不思議な位よ」

「どんな能力なんですか?」

「一言で言えば他人に強引にパスを作り出してその人物の術式や魔力を勝手に使う事が出来る」

本人は魔力は抜かれている事に気付かず、ミスイム・シンドロームだと診断されたケースもある

抜かれた術式は一度使えばパスを切っても使用者が使えるようになる

使えば使うほど強くなるが逆に本来使えない物を強引に使うために体に合わない術式を使う度に体にかなり負担がかかる。根絶しなくちゃいけない術式の一つだ

「幸い直接パスを付けなくてはいけないから本人を探せばいい話ね」

「ですか、見えないパスが繋がった人をどうやって探すんですか?」

術眼持ちでもそれは見えないので雲を掴むのと同じ様な話だ

だがそれを何とかしてしまうのが四皇の仕事なのだろう

「じゃあ私はそろそろ行くわね、何か在ったらここに連絡して」

「分かりました、ですが僕からは連絡はしないと思います」

「そうなの?ならお邪魔しました」

刀を掴み取ると庭の方から外に出ていく

門の方まで見送ると既に先客が美佳子さんの事を待っていた

「あら当主くんじゃないの、もう泣き終わったの?」

「いや、泣いてないですよ。それに貴方の正体も少し聞こえてきた」

「勝てなかったのは理解出来たみたいね、それで私の事を待ってくれていたの?」

「俺はもっと強くなりたい、だから俺を鍛えてください」

深々と頭を下げる、昔の悠では考えられない行動

プライドを捨ててまで悠は凱斗を倒すほど強くなりたいという事だ

「本気、みたいね。話を聞いてまで付いて来ると言うことは手伝ってくれると受け取っていいのね」

「分かっています、それを踏まえてのお願いです」

また俺を見ながら考えると笑みをこぼして頷く

「いいわ、その願い聞き届けてあげる」

「ありがとうございます」

「君は白巫女に憧れて、爆破系術式にこだわっているのよね」

「なんでそれを・・・?あぁ凱斗に聞いたんですか」

「ううん、元々白巫女ちゃんに爆破術式を教えたのは私ですから」

さらに詳しく聞いてみると野神潔重が若い時に鍛えた4人の子供が今の四皇

本来はもう一人いたのだがとある理由で出家して今は山の中にあるお寺に篭っているらしい

凱斗は直接教えてもらったがガイストメンバーも少しこの4人に絞られている

その前に面識があった白巫女こと霞さんに術式を教えたのが美佳子さんだという

つまりはこの人に教わる事は自分にとって本望であり、多くメリットがあるということだ

「少し厳しくやるけど途中で逃げるのは無しよ」

「そんな事はしないですよ、教わらせてもらう分しっかりと手伝わさせていただきます」

俺の準備は済ませてあり、透の準備が済み次第出発した

家の人にはちゃんと言って、家の事は分家の人に任せている

次帰ってきた時にはもっと強くなっているはずだ

「君は使っている術式が範囲系だから客観的にしか相手の事を見ていない、さっきの様に一瞬フレームアウトしてしまうと見つけるのにかなりの時間がかかる。凱斗くんとの戦いの時も黒炎攻撃で一瞬姿を見失ったようだし、それが君の弱点よ」

移動しつつ、さっき話していた弱点の話に入る

あの時は接近戦も交えていたからその欠点は目立たなかった

凱斗にとって遠距離も接近も両方使い分けているからその欠点が全くない

「つまり接近戦の実践を入れた方がいいって事ですか?」

「それも良い要素だと思うけど、それだけだと野上家当主くんには到底勝てないよ」

「確かあの理事長の孫だったな、あんな物見せられて接近戦で勝てるとは言えないな」

「彼は術式を正式登録していないからランク外だけど、接近格闘術式者の世界ランクの5人には入るレベルよ」

「それってかなりやばいじゃないですか」

「そう、でも当主くんとの戦いで黒炎くんと共にランク入りが審議されている所よ」

まぁあの時の黒炎は偽者だったけど、実力は隠しきれていた

シオンくんはあの後龍永くんにお説教という名の肉体的な言語の授業を受けた

本人曰くこの世の地獄を見たらしい

「それに凱斗くんは特異点だからね、覚醒時は私達4人よりも強い筈だよ」

特異点の事を全く知らなかったので色々と教えて貰った

聴けば聴くほど勝目がない存在だということは痛いほど伝わった来た

「でも凱斗くんにも弱点はあるよ、彼が何で攻撃系の術式を持っていないのか。それが理由だよ」

術式破壊も反動術式も相手がいないと発動する意味がない術式

凱斗が使う術式単体には攻撃力は全くない

「凱斗くんは決め手となる必殺技がないし、相手を殺す術式が一つもない。だから相手を本気で殺すことを目的とした戦いでは術式戦では不向きと言っても過言じゃない」

「術式破壊は負荷を与える位しかなりませんからね」

「多分その理由で特異点の術式もあまり使いたがらないと思うわね。まぁそれは置いといて、彼のテリトリーは近距離で当主くんは遠距離という面で見てみれば近付けさせないのが良いと思うわね」

「だけどあいつに術式破壊を使われたら距離は縮んでいきますよ、それに見えなくした所でどこに居るのか分かるみたいですから打つ手はないですよ」

「簡単な事よ、体の感覚で攻撃を読んで安全な所へ退避する。風は相手を知り、地面は位置を知りながら戦う。その方が早く行動できるのよ」

「感覚で動く・・・」

「まずはそこからかしらね、直視させる練習も重要だけど眼に頼っていても強くはなれない」

誰もいない広場に着くと荷物を全て降ろす

そしてゆっくりと刀を引き抜いた

「じゃあ透くん、当主くんに目隠しをしてくれるかな」

「目隠しをした状態で攻撃をかわせる様にするんですね」

「その方が早いわ、因みに凱斗くんは3時間で完成させたわよ、出来るかしら?」

「なら愚問ですね、俺はもっと早く習得してみせる!」

西十郎を強くさせる、美佳子のこの行動が後々大きな事件を起こすとはこの時誰も知らなかった

森の奥にある小さなお寺、その中に中国系の大人が4人中華回転テーブルに座って一人はそれを見ている

テーブルの上には料理が並べられていて食事をしている

一人は若目のスーツを着こなした髪の長い顔立ちの良い男性で給仕にしては殺意を纏っている

「計画は順調か」

「あぁ、彼の言う通りにしたら事がうまく進んでいる」

「お褒めありがとうございます、光栄です」

「それで報酬はちゃんと用意されているんだろうな」

「既にここに用意されています」

足元からケースを取り出して札束の入っている所をしっかりと見せる

確信するために一人が近付くとさっとケースを閉じた

偽物発覚防止だと思って術式を展開しようとするがその前に何かを投げ込まれる

「食べ物の油が付いている可能性があるんでまずはこれでお手を拭いてください、その油からこの場所が発覚することもありえますから」

言われた通りおしぼりで手を拭くともう一度ケースをあけた

「ちゃんと全部本物みたいだな」

「しっかりと働いている人を騙す様なことはしません」

「いまいち掴み所の分からない奴だ、まぁしっかりと仕事をこなしたらちゃんと貰うぞ」

「どうぞ、その間私はここにずっと居ますから。見配役も付けてもいいですよ」

「分かった、信じようじゃないか」

こいつが俺等の所に来たのはつい一ヶ月前だ

突然下っ端の奴等を倒しながら現れて仕事の話をしだした

『だ、誰だ貴様!!』

『いえ、警戒なさらないでください。警察ではありませんので』

『だが危険な奴だということには変わりない、やれ!!』

色んな術式を使うが全く当たることはなく、奴の一発だけの攻撃で体勢は崩壊した

しかし本人は攻撃の意思はないと言ってMMDを地面において両手を挙げた

『何が目的だ?』

『是非貴方々の力を貸していただきたく参りました』

『俺達の力を?他の強い奴等なら大量にいるだろ?』

『情報力とメンバー収集力に関しては右に出るものはいません』

『確かにそれで尻尾切りを行ってきたな』

『その二つの力を貸していただきたいと思っています、報酬はちゃんとあります』

『報酬とは何だ?』

『新しい術式と少々のお金などどうでしょうか?』

そう言って差し出されたのがこの術式だ

相手に術式を掛けるだけでそいつの魔力と術式を利用する事が出来る

つまり使っている限り、そいつとの戦いは絶対的に勝利する

この何週間で我々の地位も鰻登りになっている

だがそうなるとこいつの考えが分からなくなってくる

輪林檎術式を使ってどんどん強くなっているがまだ何にも見返りを要求されていない

何が目的なんだろうな、警戒しなければ・・・

「首領大変です」

「どうした、そんな慌てて」

「メンバーの何人かがやられました」

「どうしてだ!!何があった!」

「聞いた話だと甚平を着た男性にやられたそうです」

他のグループの奴等じゃない、じゃあ何だ

「そして四皇の一人がこの県にいるとの情報もあります」

「状況が一気に不向きになってきたな」

術式を使っているのは俺一人だ、甚平の奴の強さがどの位だか知らないと戦力の振り様がない

そんな時にスッと手に白い手袋を入れて動き出した

「お前、何のつもりだ」

「このままではどっちかが確実に潰されてしまいます。そうなっては私にとっても困るので、甚平の人は私に任せてください」

「お前とその人物が共犯という線があるぞ」

「なら、信頼出来る誰かを監視役でご一緒させても構いませんよ」

「そうが、だったらそうさせてもらう。マッザ、見張り役でいけ」

「分かりましたぜ、首領」

「では、詳しい目撃情報を集めてください。逃げられては手間が増えてしまいますから」

「ここで俺達の力か、すぐに調べろ」

下っ端が一斉にその場からいなくなる、そして俺と黒い男の二人だけになる

「そういえば名前聞いていなかったな、お前の名前はなんで言うんだ?」

「そうですね、クラウドとでも呼んでください。この業界で本名は禁句の様なものですから」

「信用ならねぇな」

「なら信用して頂くまで監視でもしていてください」

十数分後、まずは目立つ所にいた四皇の一人が発見された

「じゃあ俺は先に行く、しっかりと見張っておくんだぞ」

「逃げませんよ」

その数分後に甚平を着た人物を発見した

「では行きましょうか、マッザさん」

「俺に命令できるのは首領だけだ」

「いえ、ただのお願いです」

服装を整え、しっかりとした足乗りで歩き出す

悠達の場所に敵が来ることはその場にいる誰も知らない

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