第9話 七豪戦―ディスパーシャル

凱斗が黒炎を使い出すと一気に会場は盛り上がった

それは黒炎を知っている人も知らない人も同じだった

「もう切り札か」

「お前だって効かないと分かったらすぐ変えただろ」

「俺のはまだ本領じゃないさ、どこまで出せるかが俺でも楽しみだ」

「まぁ一つヒントを出してやると黒炎は普通の術式とは違うからな」

急加速、術式も使わずに黒炎の威力と脚力だけで俺の懐まで接近する

爆発衝撃術式を出すがその瞬間に両方破壊され、そして腹部に衝撃が走る

「やっと一撃だ」

回避行動を取るが着地の時点には既に凱斗、いや黒炎が迫っている

俺のMMDは、遠距離専門だ。接近用には設定されていない

爆発で何とか距離を取ろうとするも戦闘慣れしているのか少しの音で位置が分かってしまう

「爆発が駄目ならこれでどうだ!!」

爆風術式、目には見えない様になっているから設置してしまえば自然に引っかかる

あとは追い込むだ―――

「爆風術式か、厄介だから消しとくぞ」

地面を燃やすと設置した術式が次々を破壊されていく

「何!?」

「なんでって、俺は相手が使う術式が分かるからな」

一個残しておいた物にわざと乗っかる

爆風によって吹き飛ばされるがその力を利用してもう一度攻撃をする

このタイミングはかなりマズイ、だがやるしかない

MMDを左手に持ち替えて合気道の要領で投げ飛ばす

意外だったのか回避行動を取れていなかった

投げ飛ばす瞬間に衝撃術式を体に使ってより長く距離を作り出す

「今だ!!」

多重連爆波動術式、それもそれぞれの魔法陣を同時に動かして接触点を分からなくする

無効化しようとしているが数が多く、それに早さがある

そして人の視野は約120度しかない、その視覚にちょっとずつ魔法陣見失わせながら集められた

気が付いた瞬間にはもう爆発が起こっていた

黒炎で無効化するが衝撃までは押しきれなかった

そして少しでも体勢を崩したのを見逃さず残りの魔法陣も近場で接触させる

「まだだ!!」

地面を殴り、その場で黒炎をオーバーバーストさせる

爆発の様な大きな黒炎が上がり、魔法陣が破壊されていく

さっきとは違ってこれによって衝撃も巻き込ませながら悠へと攻撃が出来る

「これで、終わりだ!!」

「まだだ、まだ終わらせない!!」

至近距離で高度上級術式を展開してその威力を強引に相殺させる

辺りはその衝撃で揺れて爆音と温風が会場を襲った

お互いに体の底から最大限魔力を放出した性で体力的に限界が近付いているのか地面に膝をつけている

俺はさっきのバク転の時の衝撃で眉の肉がパックリして、悠の方は威力を強引に使った性か吐血した

そして会場はまた大きく盛り上がった

『一条の選手ってセカンドだよな、何であそこまで戦えるんだよ』

『セカンドでこのレベルとなるとファーストの強さはどのくらいになるのかしら?』

『少なくともこの試合は見逃せないな』

凱斗が頑張っていく内に少しずつセカンドとの壁が崩れていく

相手は日本で有数の名家だ、その当主である西十郎は弱い訳がないのは全員知っている

その当主とセカンドの人が同等に戦っている

今まで偏見的に見ていたがセカンドの中にはこんな凄い奴もいると全高校と企業が考えを改めさせられている

観客は盛り上がっているが審査員や関係者はあまりよく見ていない

「今すぐ止めましょう、あんな戦いていたらどっちかが死にますよ」

「俺も賛成です」

「では、放送を掛けます」

準備をしていると野神理事長がゆっくりとボディーガードを付けながらやって来た

「何をしておる」

「はっ!これ以上の戦いは選手に大きな怪我を起こす可能性があるので中止にしようと思い―――」

「それは許可できない」

当然Yesというと思っていた為、理事の言葉にボディーガードも驚く

「しかし・・・」

「彼等なら大丈夫だ、責任なら私が取ろう。それに選手二人共それでは納得しないだろう、とことん勝敗が決まるまでやらせた方がいい」

「・・・分かりました」

一先中止になることはなくなった

集中していてそんな事が持ち上がったとも思ってもいない二人組だ

「まだか、お互いまだ戦えるな」

「いや、俺のMMDは酷使したのか発動しなくなった」

「なんなら俺のを使え、補助はないが普通のよりも展開しやすい筈だ」

「いや、まだダイレクトが残っている」

「そんな事何回もするとすぐにガス欠を起こすぞ」

「何、それまでにお前を倒せばいい話だ」

爆破術式、それは分かっているが右目の視界が真っ赤で判断が遅れた

吹き飛ばされながらも血を拭って、黒炎を放射する

やっぱり無理があったのか回避行動の瞬間に一瞬だけ動きが止まった

俺も自分の術式に耐えられす反動を受ける

お互いに吹き飛ばされて地面に這いつくばっている

もう一歩も動けない、負けるかもしれない、そんな事弱い事を思うくらい体が重い

そんな瞬間、観客席から大きな声が聞こえる

『そんな程度か二人共!!だらしないぞ』

二人が聴いたことのある声

だがその声の主は全く動く事が出来ないからここに居る筈がない

二人共力を振り絞りながらその方へ見てみると観客席の最前列で堂々と立っている男の姿

「頑張るんだ!!西十郎!!凱斗!!自分の強さを相手にぶつけろ!!」

その言葉の直後、何かを投げ込まれるとゆっくり凱斗が近付いて何かを確認する

「ほらっ、MMDだ。これで接近で戦えるだろ」

東十郎のMMD、普通なら調整が必要だが今となっては調整なんていらない

あいつの背中を見て学んだのだから何の術式が入っているか位分かっている

壊れている自分のMMDを投げ捨てて右腕に装着させる

「こっからだ、言われた通り俺の強さをお前に理解させる」

「ちゃんと受け止めてやるよ、だけど俺のもちゃんと受け取れよな」

目の前の血を拭い、息を整えてもう一度黒炎を点火させる

体力の限界が近いために普通の半分以下だが十分だ

急加速、最後の力を振り絞って近付くとそれを受け止める形で構える

衝撃と黒炎、お互いの攻撃がぶつかり合い、大きく爆発が起こる

しかしその結果は意外に早く着いた

本気を出していたほんの一瞬、事に気が付き、思わず隠してしまう

その一瞬を付かれ、右腕のMMDが衝撃に耐えられず、粉々に砕け散った

そして後から衝撃が右腕を襲って行き、段々と視界から悠が遠のいて行く

数メートル、いや十数メートルは吹き飛ばされた

右手は、関節が外れて正座見たくなっている。完全に骨折している

なんとか誤魔化したいが全く体が動かない

自己再生能力も全力で戦いたいから切っているから治ることはない

ごめん姉さん、もう戦えないみたいだ

気を失う瞬間に走馬灯の様にふと姉さんが笑っている光景を思い出した

自転車に乗れるようになりたくて何度も練習するけど転んだ拍子に結構深く膝をすりむいた

そんな恐怖が出来てしまうと怖くなって乗れなくなってしまう

それでも頑張ったがもう一回転んでしまった

『痛い?』

『もう大丈夫、姉ちゃんが治してくれたから』

『私のは外傷しか治せないからね、心とかの傷は無理なんだ』

だけどその恐怖すらも痛みと共に無くしてくれた気がした

そっと手を差し出されて手を引っ張ってくれた

『ほらっ凱斗、また立ち上がってやろうよ』

その瞬間目が覚めた、そして気が付かない内に現実でも既に立ち上がっていた

「・・・ははっ仕方ないな姉さん、俺は最後までやるよ」

そして悠の方に目を向けるが既に攻撃態勢に入っていた

衝撃術式が立っている場所に襲った

―――しかしその瞬間には既に凱斗の姿はなかった

俺が次にその姿を認識した時には俺は飛ばされていた。

そして俺が次見た時、凱斗の異変に気が付いた

「白髪!!だと!!」

さっきまで普通の茶髪としていたのにいきなり髪色が白くなった

いきなり髪が白くなる、まるで『あの人』の様じゃないか!!

吹き飛ばされながらも体勢を整えてもう一度接近する

すると凱斗はそっと左手を差し出して弾く様に手を上にあげた

刹那、その瞬間に凱斗の腕から自分よりも二倍近く大きな白い光と出した

俺はかなり吹き飛ばされて、そしてゆっくり力が抜けていくのが分かった

この力もその姿もまるであの人、白巫女だな

昔大きな災害があった時に彼女は唐突に現れ、怪我人を一度に治療して、多くの人を救っていた。

俺はその圧倒的な力と存在感に魅せられた

彼女が使っているのも爆発系術式だったから親近感が湧いていた

だけど彼女の力は俺よりも遥か上をいっていた、さっき凱斗がやった見たいに圧倒的だった

『ユウくんだったかな?君は』

『ゆうって誰ですか?俺は西十郎です』

『あぁ西ね、酉って覚えちゃった。ごめんね』

『ゆう、か』

『西十郎っていう事は君、桐原の家の当主?』

『次期当主です、それであなたは?』

『白巫女とでも読んで、こんな格好しているし』

白髪に巫女装束、それが白巫女と言われる由縁だった

『でも『ゆう』って良いよね、特にこの漢字は』

そうやって書かれたのが今名乗っている漢字の悠

『何でですか?』

『君の家みたいだよ、ゆったりとどこまでも長く続き、終わりのない』

『悠ですか』

『名乗ってみれば、桐原悠って結構良い名前だと思うよ。それに名家だと色々面倒だから素性を隠す時にも使える』

そうやって俺はこの悠という名前をもらった

でもよく考えてみればわかった話だった

白巫女に黒炎、白と黒、素性を隠している二人、凱斗と姉弟だったのか

すべてを納得して俺は倒れた、もう十分なくらい戦った

勝てなかったのは悔しいが今の俺じゃあ当たり前の結果だ

起き上がらないのを確認すると審査員が勝敗を下した

「勝者!!一条高校・祠堂凱斗」

うおぉぉぉぉと大歓声でスタンディングオベーションで祝ってくれた

凱斗も安心したのか膝から倒れこんだ

その瞬間に髪の色が抜ける様に元の色に戻っていった

「凱斗、お前、白巫女の弟、だったのか」

「まぁな、姉は、もう亡くなった、けど術式は生きて、いるからな」

「そうなのか、もう一度会ってみたかったな」

その時は感謝の気持ちを言いたかった、救ってくれてありがとうと

もう二人共動けないで呼吸も少し苦しい、でもそれがどことなく気持ち良かった

医療班が迎えに来るがその前に凱斗の表情が変わった

「今すぐそこから逃げろ!!」

えっ?と言った瞬間には近くで爆発が起こった

拍手をしてくれた観客も拍手が止まり、異変にざわめき出す

「何者だ、お前」

『キャハハハッ、分かっちゃった?』

壊れたディスプレイの上でケラケラと笑っている

「あいつ、お前の知り合いか?」

「お前、俺の仲間が全員あんな感じだと思うな」

少なくとも攻撃されているから敵であることは十分承知だ

「私はハロウィン、さて私の役目は君等を消すことだけど簡単そうね。聞くまでもなくトリックね」

手をわきわきと動かして接近する、だが俺等は動く事は出来ない

立ち上がれないが体を起こして、お互いに背中合わせをする

「なぁ悠、お前今術式使える」

「全くと言って良い程残っていないな」

「奇遇だな、俺もさっきまでの力がどっから出てきたのか分からない位に少ししか残っていない」

「だが、出せない訳じゃないな」

「俺も同じこと考えていた、油断しているアイツに当てる攻撃にしては十分すぎるけどな」

一人じゃあ軽い術式しか展開する事が出来ない、ならこうするしかない

悠が右腕、凱斗が左腕を敵に向かって寄り添いながら差し出す

「「二重術式、黒炎爆発!!」」

まさか攻撃出来るとは思って見なかったようで直撃した

全く異なる術式を合わせる事によって吸引と反発を繰り返して足し算ではなく掛け算の様な威力に変える事が出来る

本来この術式は双子にしか出来ないが何ら不思議じゃない

同じ人物に志を持たされたんだ、その二人の掛け合わせが出来ない訳がない

「痛てててっ、だけどこれで隙が出来た」

観客席の方を向くと既に準備万端だった

病室で雪風会長に渡しておいたケースを病み上がりの東十郎さんが持っていて、俺が先輩の方を見ると俺等の方(会場)へ投げ込まれた

最後の力を振り絞って駆け足で近付いて、そのケースを開ける

「くっ、油断したけどこういう事があるから殺し合いって楽しいのよね」

ケラケラと笑いながらもう一度俺等に照準を合わせる

しかし反撃に移ろうとした瞬間には既に状況もタイミングも遅かった

左腕に付いていた手袋を噛みちぎってケースの中に入っている代理品を強引に付けた

右腕が厄介だったがちゃんと両方装着できた

懐から出されたナイフで刺そうとするがその前に右手で殴り飛ばす

そして何事もなかったかの様に術式を展開しつつ、立ち上がる

右腕も完全に動く、機能にも支障はなく痛みもない。右目は治りきっていないが十分だ

「黒炎、完全復活だ」

戦いでは封印しておいたが『半永久術式』と『自己再生術式』を同時展開する

再生術式を悠にも掛けてケースの中から赤い銃を取り出す

「これって俺のMMDと同期、何でこれを?」

「外見は同じだけどハードもソフトもこっちが作っておいた、まぁ調整は透がやったと思うけど」

あの会長の性格からして、どうせ見ると思っていたから悠の奴も入れておいてよかった

魔力も譲渡して、体内ダメージと疲労はあるがこれで二人共開始と同じ状態だ

「あららっ?いきなり不利な状態ね」

「お前、キルティーチェか?」

「正確には手伝っていると言うべきかな?本当なら君を出場不能にして終わりだったんだけどね」

「つまり、お前があの爆発の犯人か」

「そうよ、一人でも巻き込めたのなら十分な成果よね?」

怒って悠が爆破術式を撃ち込む、ハロウィンも交戦するが火力が違いすぎた

今はフルな状態の西部最強と言われている西十郎だ、普通の奴が敵う訳がない

ハロウィンの術式は完全にかき消されて直撃した

まだ戦えるが不利だと感じ取ったのか爆発を煙幕代わりに使い、ハロウィンが野神理事の場所に着く

すると隠れていた武装した男達が周りを取り囲んだ

「ミスター野神、死にたくなければ少し協力しなさい」

「嫌、と言ったらどうなるのかな?」

「ここで貴方は死にます」

「目的は何かな?」

「貴方に魔術法協会理事を辞職してもらいたい」

「それはどうしてだい?」

「訳は話す義理はない!!」

拳銃を向けて完全に有利だと思っている、あ~ぁ可哀想に

刹那、少しの隙に胸ぐらを掴んでその場にいたもう一人に投げ込む

もう一度銃を構えるが手首ごと砕かれた

一瞬の出来事と意外な行動に引き金から指が外れていた

「もう少し力のある奴等だと思っていたがあまり大した事がないな」

「くそう・・・何でこんな爺に」

「キルティーチェ、君等のボスは財政界の人間だね、その名前は―――」

正直者で言われた瞬間表情が変わった

勿論この話は無線を繋いで会場全員に聞かれている

「それ以上話すな!!」

爆破術式を展開するが簡単にかわされる

「おっとこれは危ない、全く老人をあまり動かさないものだ」

「うるさいうるさいうるさい!!もう私の力でここに居る全員を燃やす!!」

焦ったのか両腕で術式を構える

すると両腕とも展開しようとしていた術式が破壊され、反動で吹き飛ばされる

凱斗にしては距離が遠いがその正体はすぐに分かる事となった

ライトの上に黒いローブを被った黒炎らしき人物が現れる

勿論凱斗はまだあの場所にいる、だが黒炎を使えるのは黒炎だけだ

「なっ、あいつはあそこにいるのに、まさかあいつは黒炎じゃなかったのか・・・誰だ貴様!!」

問われても話さないし答えない、元々喋らないのが黒炎だ

焦りが大きな術式使用に繋がった、それはブランク術式使いには持って来いの獲物だ

大きな音と共に構えていた腕の袖は衝撃で弾け飛んで、その場に倒れこんだ

ハロウィンが体勢を立て直そうとした時には麻里奈と警備員が囲っていた。

ボスも主犯格の人物も逮捕され、完全に終わりだ

「鎮圧完了っと、ナイス俺」

結局美味しい所は全部あいつが持っていきやがったな

病室、二人共怪我は治っても疲労やダメージが蓄積されているから絶対安静になっている

俺の場合は眼の近くに支障が出たためか右目の視界が真っ暗だ

「明日のエンジニアは無理そうですね」

「こんな時に何を言っているの、優勝したんだからゆっくり休んでいいのよ」

「決勝で負けた人の前で言うセリフじゃないですね」

「お前もよく頑張ったぞ西十郎、まさか俺の術式まで使えるとはな」

「見様見真似だったがな、MMDは直ったら透に返しに行かせる」

そんな会話の中、気になる人物が約一人

警備員とガイストのお前以外の奴が混ざっていると言ったがそれがコイツだ

麻里奈は違う方に取ったが『ガイストのお前以外の奴』と俺はちゃんと言った筈だ。まぁ、わざとだけどな

「彼って麻里奈ちゃんが言っていた上位三人の最後の一人だよね」

「術式破壊が使えるのはかなりの戦力だな」

話をしているのに気が付くとこっちの方を向いた

「こいつは仕事しないが権力は使う自由人、それに怒った上司が絶賛探しているシオンくん」

「ご紹介されました複製術式使い、巧都シオンと申します!!」

ビシッとポーズまで決めてくれている

複製術式は一度見たものなら何でもコピーする事が出来る特殊術式

どんなに高度でも上級でも特性を使える様に努力すれば使える

勿論それは俺の術式でも例外ではない、だが『ブランク』系術式は本物と比べるとかなり威力は低い

「それ着たままでやるなよ、恥ずかしい」

「まぁ黒炎の影武者も時々やっていますが基本は星を見るのが趣味です」

「こいつは独自術式の中で唯一の攻撃持ちで、その他に22個の術式を使う強者」

それは龍永さんも認めてくれている

仕事をしてくれれば申し分ないのだが自由人な故に雲を掴む様な感じだ

そんな時にドアが開いてもう一人入ってくる

その人物とは、さっきかなり格好良く戦っていた魔術法協会理事、野神潔重さん

立ち上がれない俺等以外は深々と頭を下げた、この時シオンもしっかり下げていた

「キルティーチェはボスの正体が分かって実質崩壊、ハロウィンって子はボスの娘だった。殺人も揉み消していたがその分多く懲役してもらうだろう」

「道理で焦っていた訳か、一気に地位がやばくなるからな」

「お前は怪我の具合は大丈夫か?」

「まぁまぁって所だ、今日までは安静らしいから心配しなくていいですよ」

「君は『子供』の時からそういう所があったからな、言われたのなら安静にしておくのだな」

「分かりましたよ、野神理事長様」

「たまには顔を出しなさい、みんな顔を見たがっているぞ」

「次に暇があった時に行かせてもらいます」

じゃあしっかり休みなさいと言いたいことだけ言って帰っていった

俺との会話を聞いて唖然とただ無言で見ている全員

「理事長と知り合いだったの?」

「そもそもクロワガイストはあの人の弟子が選んだ人達で編成されてますし、面識にありますよ?」

納得の行く説明だが俺がまだ隠しているという事を察していた

「いや、あの・・・本当に言いたくないのですが・・・あの人は、俺の『大伯父』です」

俺の言葉に全員の表情が同じ様に固まった

何故かと言うとそうなると俺は、叉條院や東西名家と同じ地位にいる名家の生まれという事である

同じ七術家だがその中でも優劣が一応決まっていて、今の頂点は東西名家となっている

だが、七術家の中であまり実力を出していないのが俺の家の野神と円従前と言う家だ

この二つの力がどの位かでまだ順位は変わる、だが当主はあまり表には立たないのがこの二つの家の特徴だ

そして今回、その名家の人が現在最高位当主である桐原西十郎を倒したとなるとその立場が逆転してしまう。

だが凱斗の家が七術家と言われると納得する部分が多すぎるのも確かだ

「まぁ本当は野神凱斗と名乗ってもいいですが、いつもの理由で母方の苗字を名乗っています」

「ご身分を知らずに色々とやらせてしまい失礼しました、野神様」

「やめてください、気持ち悪いです」

「お前の強さの理由がまた一つ垣間見えたな」

「確かに理事、潔重さんから接近武術を習いましたがそこまで言われると何か恥ずかしいです」

術式破壊した時に一番重要になるのは接近戦だ

その為に『黒炎』を作り出したがあれは接近武術が最重要となって、その強さが黒炎の強さになっている

「でも当主の座を継いでいないんですから先輩方や悠の方が地位は上ですよ」

「だけど本家筋という事実は変わらない、あとで光咲ちゃんにも報告しておこ♪」

「これ以上仕事増やされるのはいやですから勘弁してください」

話しているだけで回復が遅れそうだ

帰ってもらうと隠していたがかなり疲労が溜まっていたのですぐに眠りに落ちる

それにしても最後の術式はなんだったんだろう、あれは凄い力だった

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