第31話
「・・・・・」
薄い夕陽に照らされるのは伊達メガネをかけた純白の衣装を身に纏(まと)う彫りの深い顔立ち。そして、右腕を根元から失った軍服の青年。青年は壁に寄りかかりながら眠っているようにも見える安らかな死に顔。
『分子変換 衣装の破損箇所を修復します』
地属性のエレメントは現代の錬金術。破れた衣類を分子レベルで分解し再構成したのだ。足りない分は周りにある無機物類を分解し補充すれば良い。とはいえ、そんな真似ができるのはウォンくらいのものであろうが。
「最後の一撃、見事だった」
といっても、複雑な構成を行なう事はできない。ナイフを作る事はできても車や銃といった機械を作る事はできない。最強は決して万能たりえない。
「どんな状況であろうと勝利を掴むために行動する勇気。私は君を尊敬する」
修復を終えた襟を直して寂しげな笑み。
「例え、最後の一撃が届かなかったとしてもだ。それでも君は届いていた」
最強の意味を知るゆえの笑み。
「最後の最後で、私を本気にさせた」
沈もうとしている太陽に向き直る。
「すまない事をしたと思っているよ。私のくだらない目的のために君のような光り輝いた存在を葬らねばならないのだから」
だが、それでも彼は止まれない。
誰もが自身の力で勝利を勝ち取る事の出来る世界を作るために。だからこそ振るう。
破壊のための力を。
「だから、君を求めているのだよ」
夕陽に背を向け、砕かれた扉を胸に。
「シーラ・ディファインスいや、あえてこう呼ばせてもらおう」
少女が一人立っていた。
「かつての大戦から生き延びる最古にして原初の妖精。パンドラのヴァンパイア(スプリガン)、シーラ・ディファインスと」
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