第3話
【2116年 8月30日 23時45分】
「目標はあの建物の中か……」
「はい。やはり目的地に近づくにつれて
索敵班と合流し、目標の位置を改めて確認する。
建物前の大通りでは、無線を聞いた兵士が続々と集まり、建物を守る
しかし、
人類側の兵力は残りどれくらいだろうか……
ここまで来るまでに何体もの
モニターに映る時間を見ると作戦開始からすでに45分が経過していた。
「残り15分……」
時間がない。
「作戦内容を簡単にもう一度伝えておきます。
今回の作戦は、
ここで、エネルギータンクを破壊することに成功すれば、残った
「時間がない……」
「あ、はい! 失礼しました」
今回の作戦を失敗させれば、予備兵力のない人類は絶滅するだろう。
つまり、あと15分でエネルギータンクを破壊しなければ僕達はゲームオーバーなわけだ。
「行ってくる」
身体を屈めクラウチングスタートの姿勢をとる。
「検討を祈ります」
僕は地面を蹴り、目標に向かってまた走り始めた。
建物前の大通りは、地面が血で紅く染まっていた。
その上で、人類と
ロックオンされたらそいつの命はそこまで。
なので人間は如何にロックオンされないかが重要である。
だが、逆に考えるとそれはチャンスでもある。
つまり、兵士がいる限り僕は狙われずに済む。
兵士を囮として使いつつ、建物までの道を走り抜ける。
幸いにも建物の周辺の
正面扉の前は
どこから侵入するべきかと辺りを見渡していると、丁度第一陣として斬り込みに行った部隊が正面扉の前までたどり着いた。
扉前を守っていた
息つく間も無く戦闘が始まった。
その部隊のおかげで扉は完全にノーマークになった。
僕は堂々と正面扉から突入することにした。
「静かだ……」
建物の中は外の喧騒が嘘のように静かだった。
建物内はいたる所に装飾が施されていた。
僕は一歩前にでる。
刹那、一筋の光が弧を描き上から振り下ろされる。
紙一重で横に回避する。
「チッ」
思わず舌打ちをする。
目の前には一体の
攻撃してきたということはすでに僕をロックオン済み。
この
ふと、視線を感じ上を見ると、吹き抜けの天井付近に2体の
大剣を構えているところから、すでにロックオンされているとみていいだろう。
「敵の本拠地だし、そう簡単にはいかないか……」
宙に浮く
素早く右手を右肩に持ってくる。
システムが反応し背中に背負われたバックパックから機械音と共に柄が現れる。
抜刀。
銀に輝くファイティングナイフ『
敵の攻撃を交わしながらも
その姿勢のまま足に力を込めて、地面を思いっきり蹴る。
丁度その時に宙に浮いていたもう一体の
突き刺したままの
大剣と
その時に一瞬の隙ができたことを僕は見逃さない。
大剣を振り下ろしたことで完全な無防備になった
下では、最初に切りつけてきた
僕は奪い取った大剣を地面をも切断する勢いで振り下ろす。
敵が切り上げるよりも早く全体重をかけた一撃が放たれる。
鳴り響く衝撃音。
地面は振り下ろした場所を中心に蜘蛛の巣のように亀裂が入り陥没していた。
「終了」
僕の後ろには空中で倒した2体の
「時間が無いっていうのに……」
僕は後ろに落ちてきた
「先を急ぐか」
建物内の
自慢ではないのだが僕の勘は結構当たる。
特に戦闘中だと僕の勘の的中率は100%だ。
正直自分でも気持ち悪いと思う。
例えば、今僕がおかれている状況だと、道の突き当たり。
道は左右に分かれている。
見た目は全く同じで違いはないが、違う方に進むと時間をかなり無駄にしてしまう。
残り時間がほとんどない今の状況で、時間のロスは絶対に許されない。
僕は目を閉じ集中する。
右の道……。
エネルギータンクなし。
ただ、妙な違和感……。
左の道……。
エネルギータンクあり。
どう考えても後者。左の道に目標がある。
いつもなら何の違和感もなく左に進むだろうが、右の違和感が気になる。
しかし、時間がない。
右の道はエネルギータンクを破壊してからでも遅くはないだろう。
僕は左の道を進む。
しばらく進んだが
この扉の奥にエネルギータンクはあると確信する。
モニターに映る時間を確認すると23時57分。作戦開始から57分経過。
残り3分。
「思ってたより早く着いたな」
今から、何十体という
しかし、時間がないという焦りはもうなくなった。
「僕は機械だ……」
僕はそうつぶやき目の前の扉を開け放った。
目の前に映る光景。
部屋は半円の形をしていて、椅子と机が中心を向くように半円を作っていた。
部屋の中心は一段高くなっている。
昔のこの場所は何か集会の演説場だったりしたのだろうか。
今はそんなことを考えてる時間ではなかった。
部屋の高台の上に、周りの風景とは不釣り合いの機械の塊が一つ。
その機械の中心で水晶のような球体が緑色の光を放っている。
これが破壊目標である
「予想通り」
「さぁ。始めようか」
僕は目をつぶり深く深呼吸をする。
普通の人なら目で追えずに消えたと錯覚するだろう。
そして、次に目にする時には既に身体は真っ二つというのが一般的な
ただ、それは普通の人だった場合である。
僕は普通ではない。
目を開けると世界は止まっていた。
飛びかかってきた
正確に言うと時は完全には止まっていない。
ただ、時が進むスピードが極端に遅くなったのだ。
これが僕の力。僕の能力。
そして、僕にはもう一つ力がある。
バックパックから
止まった世界で、唯一動ける僕。
止まっている
宙に浮いたまま止まっている
「あとはお前だけだよ」
僕は緑色の光を放つ球体。
止まった世界で唯一動く事を可能にしてくれたこの身体。
銃弾が効かない
僕のもう一つの力。
人類の科学技術の結晶。
対
僕は能力を解除する。
世界は息を吸うのを忘れていたかのように動き始める。
切りつけた
「何があったかお前らにはわからないだろう?」
僕は
「人間はお前ら
やがて
エネルギータンクは、突き刺した所から緑色の光が漏れ出てきて、次の瞬間水晶が砕け光となって消えた。
「作戦完了」
僕は人間ではない。
このパワードスーツの下は皆と同じ肉体を持っている。
しかし、僕は一度死んでいる。
二度目の人生は姉さんの為に使うと決めた。
僕は、僕自身を何かに例えるならば……
「僕は機械だ……」
そこで、僕の意識は途切れた。
神ノ魂 炭酸すい @tansansui
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