第6話 彼女の相談

「今日、身体測定と呼ばれる行事が行われた」

オレは星宮のマンションでお茶をすすりながら、彼女からの相談を聞いている。

一応、言っておくが、あくまでも星宮から相談があると言われたから来ているだけだ。『彼女(仮)』なんだからと毎日、強引に押し掛けたりはしていないぞ……

「ああ、オレも受けたから知っている」

「私は他の女子から奇異の目で見られた」

思わず『ぶっ!』とお茶を吹きそうになった。星宮、オレの居ないところでマズイことをしてないよな?! とめちゃくちゃ不安になる。オレたちは付き合っていることになっているから、星宮が変な目で見られるっていうのは、オレも変な目で見られるってことだ。……星宮は、この通り宇宙人だ空気を読まないから、何かの拍子にとんでもないボロを出してしまいそうだ。星宮は気にしないかもしれないがそれはまずい!っていうか、やっぱりオレが守ってホローしてやるべきだろう! それが彼氏の義務だよな、うん。……かなり混乱する頭の中で、ようやく考えをまとめると焦って星宮に問いただす。

「なにっ?! お前、何かおかしなことをしたのか?」


「私の身体を覆っている衣服が変だと言われた」

「衣服って……体操服か?」

「その下」

「……し、下着か」

「そう」

「ヘンって、まさか宇宙服みたいなものだったのか」

オレは銀色に光るボディスーツのような下着で身体測定を受けている星宮を想像して愕然となった。

「地球上で一般に使用されているものを身につけている」

一応、大丈夫そうだ。すこし安心した……でもそうすると何が問題なんだ? まさか?? オレは別の可能性を思いつき問い詰めた。


「……じゃあ、やたらエロかったとか?」

先日、見せたショッピングサイトにあった勝負下着を身につけて、身体測定を受けている星宮の姿が目に浮かぶ。たしかに特別な時に使うって説明したけど……頭がクラクラしてきた。

「説明が難しい……実際に確認するのが早い」

そう言うと、さっさと服を脱ぎ始めた。


「お、おい星宮っ! いくら付き合っていることにしているからって、モノには順序が」

「ユキ。」

焦りまくっているオレに、星宮が冷静に指摘する。そう、ふたりっきりのときは下の名前で呼ぶって言ったよな。

「……ああ、ユキ。 女の子はもうちょっと恥じらいを持つべきで……」

「事情があるなら問題ないと思う……違う?」

不思議そうに小首を傾げてこっちを見ているユキ。きょとんとした表情がすごくかわいい。いや、今はそれより下着だ。正直、ユキの下着姿なんて、メチャクチャ見てみたい! だけど、そういうエロ大好きな表情を見せたら今後の対応に問題が……だけど、今回はユキが自分で脱ぐんだから、オレのエロ好きがばれるんじゃないよな。うん、ユキの考えも尊重してやるべきだし……オレの理性はすぐに欲望に負けた。


「……そ、そうだな。 事情があるなら、しかたないよな」

オレが誘惑に負けた発言をした途端、ユキはあっさりと制服を脱いで下着だけの姿になった。

「……おまえ、そういうのを着けていたのか」

ユキが着ていたのは、いまどき小学生でも着けないような、だぶだぶの綿のパンツだった。

オレが理解したのを見届けると、ユキはすぐに制服を着てしまった。

「そんなに急いで着なくても、いいんじゃないかな……」

「まだ必要だった?」

ユキの純真無垢な質問に、答えに窮したオレは『いや、もうわかった』としか答えられなかった。


「『女子高生がグンパンなんか着けてちゃダメ』と言われた」

「ああ、まあそう言うだろうな」

オレが興味なさそうにこたえると、

「……わかった。 では今すぐ脱ぐことにする」

と立ち上がる。

「お、おい ユキ! お前、恥じらいってものが」

あわてて押さえに入るオレに、ユキは

「ハジライって、何?」

とか言ってまた小首を傾げる。『何それ? おいしいの』って続けそうなくらいの表情だ。

「……もういい。 ところで替わりの下着はあるのか?」

『そう!それが言いたかったの』というふうに、オレの方を向き直して大きく頷くと、ユキは

「タカシに、一緒に買いに行ってほしいの」

のたまった。

「ば、ばか! なんでオレが女の子の下着を買うのについていかなきゃならないんだ」

白やピンクの下着売り場の中で立ちつくしている自分の絵ヅラの居たたまれなさを思い浮かべてオレが叫ぶと、

「……付き合っている(仮)から」

『何でそんなに嫌がるのよ』と、ちょっと不服そうな表情で拗ねるユキの表情は、殺戮の天使級のカワイらしさだった。


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