第5話 『普通の女子高生』アドバイザー
部屋の中には、SFチックなメカとか
「ちょっと、がっかりだなぁ」
オレはついつい不服そうな言葉を口にしてしまった。
「……どういう意味」
ヤバい、訊かれていた……例によって冷たい一言。星宮の抑揚のない言葉は結構、小心者にはきつい。いや、そんなことより言い訳を考えなければ……。
「いや、イマドキの女子高生の家だったら、いくら片付いているといっても、もうちょっとかわいらしいモノとか置いてあったりしてもいいんじゃないかなぁ……と」
何とか思いついた言い訳を必死に伝える。
「ほら、これじゃあ誰か友達が来た時、絶対おかしいって思われるよ、きっと」
「…………」
長い沈黙の後、
「理解した。
という返事がきた。一応、オレの意見を受け入れてくれたらしい。
「じ、じゃあ、ついでに他の部屋もチェックしてやろう! ……今後の為に、な」
また調子に乗ってよけいなことを言ったかなと思ったが、突っ込まれもせず『こっち……』と奥の部屋に通された。どうやら宇宙人と話すコツは臆せず突っ込むことらしい。
奥の部屋にも
「(ふぉーっ、これが星宮@女子高生のプライベートルームかぁ)」
オレは
「うむ。基本的にはさっきの部屋よりはいい。……でも、もっとファンシーなぬいぐるみを置いたり、かわいい小物やオトコ心をくすぐるような
オレは昔やったゲームで、せっかく訪れた新しい村なのに『小さなメダル』のひとつも見つからなかった時の無念さを思い出しながら、
「……どんなものを用意すべきか、
相変わらずの抑揚のない声だが、そこには若干の戸惑いと自分の知らないことを指摘された不安が見え隠れしていた……宇宙人でも未知のコトには不安を感じるらしい。
「そうだな……」
オレは少し余裕を見せながら、自分の得意分野に話を誘導しインターネットで
思いもしなかった星宮の素直な言葉に、悪魔の囁きが聞こえた。『やらずに後悔するよりも、やっちゃった方がいいこともあるよね?』……頭の中で黒髪ロングの太眉お姉さんがGo! Go!とナイフ片手に応援している。オレは僅かの逡巡の後、いつも寝る前に思い浮かべる
「……そ、それじゃあ、ここでとっておきの知識を教えてやろう」
興味深々でオレをみつめる星宮。
「地球人はな、高校生になると恋愛が解禁されて、相手を選んで付き合い始めなければいけないことになっているんだ」
「そうなの?……そういった情報は私の知識ベースには無かった」
「そ、そうか。 星宮の知識はどうやって集めたものか知らないが、これは常識以前のことだから……本やインターネットには載っていないんだ。 わかるか?」
「可能性としてありうるのは認める……了解した」
「そして、ここからが重要なところなんだけど…………地球人でない星宮には相手を選ぶ権利はない。わかるか? だから地球人の誰かから『付き合ってくれ』と言われたら拒否することができない。わかるな?」
「…………理解した」
「そして、付き合い始めるってことは、その相手以外の異性とは親密になってはいけないってことだ。男によっては他の男と話し込むのもダメだというヤツもいる」
「データベースで照合可能……確認した」
「だから、そんな理不尽や男と付き合わなければならなくなる前に、オレが星宮の彼氏になってやろう……それならそんな最悪の事態は避けられるからな」
『とっておきの知識の結論がそれか』というようにポカンとした顔をしていた星宮は、しばらく目を閉じて何かやり取りしている様子だったが、やおら目を開けると、
「論理展開に飛躍があるが……話としては理解した。 しかし、結論は保留したい」
と言った。く、くそっ、オレ的にはチョー頑張って話をしたのに、なんでうまく騙されてくれないんだよ! オレは心の中で地団太を踏みながら
「ど、どうして保留なんだよ? お前はDQNな男の彼女にされて、活動に支障が出てもいいのかよっ!」
半ばやけになって問い詰める。
「それは困るが、パーソナルデータベースが保留を推奨してくる」
ばかやろう!なんてお節介なパーソナルデータベースなんだっ!
「じ、じゃあ、保留でいいから……他の地球人に付き合いたいって言われないように、仮に俺たちは付き合ってるってことにしないか、な? 仮にでいいから……頼むから」
オレは最後は、拝むように星宮に頭を下げてお願いしていた。
「…………了解した」
星宮は、少し困った顔をしながらも、最後はオレの熱意に押されたように同意してくれた。
「やったぁ!」
「……そんなにうれしいの?」
星宮の不思議そうな質問に、オレは照れ隠しをしながら
「あ、ああ。 オレも星宮と付き合っていることにした方が都合がいいからな」
「……了解した」
オレは、もうひとつ
「と、ところで地球では、付き合っている者同士は、相手を特別な呼び方をするんだ。 わかるか?」
「理解できる。 データベースと照合できた」
「オレは星宮のことを下の名前で呼びたいんだけど……いいか?」
「……わかった」
「お前もオレのことを下の名前で呼べ」
「……拒否する」
「な、なんでだよっ!」
オレは思わず興奮して問い詰めてしまった。
「……ハズカシイから」
予想外に乙女な答えに困惑しながらも、オレは
「じ、じゃあ、ふたりだけのときでいいから……」
と小さな声で言った。
「わかった……タカシ。」
う、うぉっ! 予想外の破壊力に、オレの脳はメルトダウンしそうになった。女の子から名前で呼ばれる特別感って半端じゃない……!
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