第3話 宇宙人v.s.宇宙人

 自己紹介と先生の話も終わり、今日はこれで下校というタイミングで、前の席の女子……えーと星宮さんだっけか、が声をかけてきた。

「ちょっと、話をしたい……」

おお、入学早々クラスの女子とお近づきになれるなんてラッキー!……しかもよく見るとけっこうかわいいぞ、この。内心ニヤケながら『別に女の子から声をかけられるのなんて普通のことだぜ』っていうのを装って返事をする。

「ああ、いいよ。 何なら人目の少ない校庭とか屋上がいいかい?(ニカッ!)」

うわっ、まるでテレビドラマでイケメンが女の子から告白される時みたいなセリフを言っちゃったよ!? もし中学の時の悪友に聞かれたら、絶対『お前、何様だよ!?』とか言われて蹴りを入れられてるな……まあ今、周りにいるのは入学初日のよく知らないクラスメートだから、そこまでキツイつっこみは無いか……でも、オレは相手の彼女から『それはちょっと』とか『いえ、ここでいいです』くらいの切り替えしは来るものと想定して、ちょっと身構えていたのに……彼女は何も言わずオレの後を付いて歩きはじめる。

ええ、いいの? 本当に人気ひとけのないところに行っちゃうよ?とか思いながらも、小心なオレは周りからよく見える中庭のベンチで話を聞き始めた。


「それで、どんな用事?」

彼女はちょっと話しづらそうな様子でオレの方を見ている。しかたないのでオレの方から話を振る。

「さっきの自己紹介のことなら別にいいよ。むしろオレの方がネタを利用させてもらって助かったくらいだから」

そう、実は何を言いたいかおおよそ見当はついていた(っていうか彼女とオレの接点なんて今のところそれくらいしか思いつかないんだけど)……彼女の自己紹介のまま終わっていたら確実にシラけた雰囲気だったのを、オレがいじったおかげで場が保てたので『ありがとう』って、お礼を言いたいんだろ? 専門用語で『天丼』って言うんだよな、話し方トークの勉強したから知ってるぜ。実際、あのシチュエーションはかなりうまくいったとオレ的には自慢だった。

けれど、彼女の気にしていたのはそこではなかったようだ。


「あなたが宇宙人だというのは本当?」

そっちかよ! こいつ、オレの自己紹介のオチがわかってないなと舌打ちしながら、

「ああ、オレは宇宙人だよ。 っていうか、みんな宇宙人でしょ? キミだって、他の誰だって」

「他の人は知らないけど、ワタシは宇宙人。 そう、あなたも……それならお互いの目的のため相互敵対防止協定を結ぶべき」

ソウゴテキタイ? なんだそりゃ?……う〜む。どうやらこの子は頭の中が、かなり残念おかしな子らしい。顔はいいのに、可哀想に……

「まあ、お前が結びたいなら……でも、どうせなら敵対防止よりも友好条約とか親愛協定とかがいいな、うん。 何ならいろいろ決めるために、どこか喫茶店にでも寄って行くかい?」

今度こそ拒否られると思ったのに、これもあっさり同意されてオレは入学初日から『学校帰りに女子とファーストフードに行く』という難易度の高いミッションを達成してしまった。RPGならレベルアップものだと思う。

ちなみに話し合いの結果、オレたちは『非占領地域における相互友愛親交条約』という、浦賀に来たペリーさんも真っ青な難しい名前の協定を結び、ご褒美として彼女の連絡用の携帯番号と住んでいるマンションのアドレスをゲットした。どうやら本当にオレは高校入学と同時にモテ期に突入したらしい。

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