第2話 自己紹介という名の戦場
「それでは、これから自己紹介をしてもらう。クラスメートとして、また同じ学校の生徒として3年間過ごしていく仲間になるのだから、きちんと挨拶するように」
入学式が終わり、クラスに分かれると担任の先生がそう告げた。そんなこと急に言われたって、気のきいた挨拶なんてできるはずない……というのは
今の学校生活では、生徒同士の
そうした中で自分の
とはいえ、あんまり気合を入れすぎてカラ回りしても逆効果になる。みんなにドン引きされ、変人の烙印を押されては、その後の学校生活に大きな支障をきたしてしまう。まわりのヤツの発言を聞きながら、うまく流れを捉まえてウケをとり、『出来るヤツ』という評価を得ることが大切だ。さて、このクラスの面々はどんな自己紹介
「このクラスに宇宙人、未来人、超能力者がいたら……今すぐ名乗り出てください。 ちなみに私は宇宙人の朝倉 涼子ではなく、普通人の朝窪 涼子(あさくぼ りょうこ)です」
うぐっ……しょっぱなからこれか。古いけれど自分の名前が某アニメのキャラに似ているんで持ちネタにしてるんだろうな。出だしの一発目だしインパクトは十分ってわけか……
「あなたのハートはホットですか?クールですか?私のハートは限りなくクールに近い人肌。 あなたのハートで温めて欲しいな♡ さっしーこと斉藤志信(さいとう しのぶ)です」
……オレにはよく分からないが、どっかのアイドルの自己紹介のパクリらしく、一部の人間にはウケていた。惜しむらくは本人がカワイイ女の子ではなく、むさ苦しい男だという点だけど。
みんな、それぞれガンバってネタを仕込んでいる。さて、どうするオレ? この流れで外さない
「星宮 有希(ほしみや ゆき)です。黙っていようと思いましたが、私は本当は宇宙人です。隠そうとしてごめんなさい」
それだけ言うと、あっさりと話を終わって席についてしまう……当然、クラスの他のヤツはリアクションに困ってしーんと静まってしまっている。
ああ、やっちまった……こういう流れをぶった切った話をすると周りが付いていけず、白けちゃうんだよな。めちゃくちゃ気まずい沈黙が漂う……どうすんだ?この展開。オレもあっけにとられて、そのまま対策を思いつかないうちに立ちあがってしまった。拡がる沈黙がつらい。こんな難しい状況を盛り返すなんてオレにはまだ難易度が高すぎだ……ええい、くそ。もう、どうでもなれ! オレはアタマに浮かんだままをしゃべることにした。
「前田 孝志(まえだ たかし)です。黙っていてスミマセン。オレも本当は宇宙人です……地球星人という意味で。 よろしくおねがいします」
さっきのに輪をかけた冷たい沈黙……ああ、みんなの視線が痛い。しかし一拍遅れた後、誰かの『くっだらねー』の一言で笑いが広がった。
ああよかった。結果オーライ、奇蹟の逆転ポテンヒットって感じか! オレは胸をなで下ろしながらイスに座った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます