光の跳ねる世界で
太陽がまぶしい。学校の先生の話によると、ここ千年ほどで膨張しており、いつか地球を飲み込んでしまう恐れもあるらしいけど、それが私達の生きている間に起こるとは思えないから。あの日の私は聞き流してしまった。
そもそも、公立高校の一教師がそんな専門的な知識を持って、研究機関に所属していて、各国の科学者達をまとめているのを想像しろだなんて、当時ただの高校生に過ぎなかった私に求めてるのは間違いだろう。
「久しぶりだね、佐藤君。君の参加を大いに歓迎するよ」
つまりのところ、何が言いたいかというと。高校の恩師に、世紀末、地球を救うための研究所で再会したということ。再開した時に、胸に最高責任者とか書かれたプレートがぶら下がっていたこと。
先生はどちらかといえばのほほんとしているから、こんな研究とかには興味がないと思っていたんだけど、世の中は分からないものね。
「さて、本来であれば旧知の仲である僕達は、ここいらで昔話に花を咲かせてみたいところだけれど、そんな時間は我々には用意されていない。死なない程度の睡眠時間を確保しつつ、この地球という星を救うために努力しようじゃないか」
「相変わらず、話が長いですよ」
当時からこんな感じだったから、演劇鑑賞でも趣味にしているのかと思っていたけれど、そんなことはなく、単純にこんな話し方をするのがクセらしい。小さなことを大げさに言うものだから、本当に大きなことを話しているときでさえ、ふざけているように聞こえてしまう。
そんな先生が最高責任者とか、地球はもう終わりなんじゃないだろうか?
「君は相変わらず冷めているねぇ。頼もしい限りでは歩けれど、人生なんて短く儚いものだ。ちょっとくらいうるい甥を求めて、こういった狂言遊びに講じるのも悪くはないだろう?」
「止めて欲しいとは言いません。でも、私にまで求めるのは止めてください」
「はっはは。なるほど、君自身の自由は保障しろ、自分の意見を他人に押し付けるなということだね? なるほど、なるほど。君の言っていることも一理ある。その意見に乗っておけば、私自身のことも否定されなくて済む。中々に良い話だね」
だから、長いって。そこまで大げさに、身振りを加えてまで話す内容には聞こえませんよ?
そもそも、私は用事があって、最高責任者である先生のところに来たのであって、無駄話をするために着たわけではない。
今、地球は滅びへの階段を上り始めた。これは、年々加速していく様子を、面白おかしく伝えようとしたメディアが、そう称しているのだけれど、間違いだとは思えない。
環境破壊に汚染はいう必要がないレベルまで進み。地球の温暖化であったり、オゾン層の破壊、電離層の異常発行。植物や動物の奇形、海面の上昇から砂漠化の進行。
地球上で安全だといえる場所はなく、だからといって宇宙に飛び出していけるだけの科学力もない。
だから、人類は賢くなることを決めた。この絶望への階段を上らせないために、少しでも遅らせるために、人類は賢くなろうとしている。
その為の研究施設がここにあり、私は今日入所したわけだけど。
明日から、この人に付き合うくらいなら、滅んでもいいんじゃないかな、人類。
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