クイーン side隼人2

 オーク狩りはまだまだ続く。俺たちが旅に出るには後少し金が足りない。4人分の装備を揃えて、旅道具も買うのはかなり金がかかる。


「ふっ!」


 オークを斬り裂く。最近はずっとオークを狩ってるからオーク相手にもう怪我をする事もない。それに技術面もかなり上がっている。武器系スキルのおかげでもあるのだが。

 有能なスキルもみんな手に入れている。『気配感知』『危険感知』などの自分の身を守るのに必要なスキルや『連携』などのパーティー系のスキルなどだ。


「もうそろそろ引き上げよーぜ」


「そうね。この辺りでも夜になるとジャイアントスパイダーっていう魔物も出るらしいし、もう帰りましょうか」


 夜になったらって事は今はまだ出ないのか。夜行性なのか?


「ジャイアントスパイダーってなんだ?」


「名前の通り、大きい蜘蛛の事よ。この森にいるらしいけど、アンヨド方面にいるらしいわ。それが夜になると王都の方まで移動してくるらしいの」


 へぇそんな魔物もいるのか。ってかデカイ蜘蛛って……。


「私達でも相手に出来ない事はないけど、初見の魔物に疲労が溜まってる状態で挑むのは安全性にかけるからね」


「なるほどなぁ。やっぱ色々知ってるやつが仲間にいるのはいいな」


「自分でも知ろうとしないとダメだよ不知火君は」


「悪い悪い」


 俺ってそういうの苦手だからな〜。


「それじゃ、帰るか」




 その時に俺たちは出会った。あの化物に。


「っ、みんな走れ!」


 そいつは巨大な蜘蛛だった。最初は話に聞いていたジャイアントスパイダーだと思った。だから挑もうとしたんだ。蜘蛛なんて火があれば楽勝だと思ってたからな。

 だが、美智永に止められた。あいつは私が知ってるジャイアントスパイダーと違うって。実際そうだった。試しにと一度だけ俺の『火魔法』を使ったんだが、効かなかったんだ。


 それから俺たちは必死に逃げた。かなり素早くて何度、殺されるかと思ったものだ。糸は『火魔法』で何とか焼き切る事が出来たから良かったものだ。



「はあああぁぁぁぁ。な、何なんだあいつ!?」


「……多分、強化種っていうやつでしょうね」


「なんだ?強化種って」


「鉄条君から聞いた事があるよ。通常よりも強い魔物らしいって」


「恵美さんので合ってるわ。強化種はその名称通りで強化されてるのよ。魔物がね」


「そんな奴がいるのか……。にしても、よく全員無事にそんな奴から逃げきれたもんだな」


「だな。俺は正直もう終わりかと思ったくらいだ」


「私もよ。強化種なんてやっとオークに慣れた今の私達には無理だもの」


「死んじゃうんじゃないかって何回も思ったよ」


 やっぱみんな同じ気持ちか。まあ、そりゃそうか。今まであんな危険な事一度も無かったから。


「そうだ、強化種の事をギルドに報告したほうがいいんじゃないか?」


「そうね。報告しておきましょうか」



 俺達はギルドに向かい、強化種の事を伝えた。そしたらギルド職員さんは魔物の特徴や緊急報告を流したりしていた。意外と冷静なんだな。もっと騒がしくなると思ってたんだがなぁ。


「私達が冷静な理由なら王都にいるからですね。ここには実力のある方が必ずいますし、騎士団もありますからね。その方達が必ず倒してくれるとわかっていますので、なら私達はその情報をいち早く届けようと思ったわけです。そしたら自然と冷静になっていたんですよ」


 なるほど、そういう事だったのか。魔王を倒す事が目標である俺達はもっともっと強くならないといけないって事だ。ある程度強くなったと思っていたが、まだまだだって事を今日思い知らされた。そうだ、名前聞いとかないとな。


「それで、俺達が見た強化種の名前って何なんですか?」


「あ、はい。クイーンジャイアントスパイダーですね。長いので皆さん、クイーンと略されていますよ」


 クイーンか。とりあえず小さな目標は打倒クイーンってところか。人間大きな目標だけだとすぐ諦めるとか聞いた事あるからな。まあ諦める気なんて全くないが。それに小さな目標って言ってもあんなの倒せるようになるまでにいったいどれくらいかかるか……。


 クイーンなんかで躓いてちゃ魔王なんていつまで経っても倒せねぇ。こっちの世界と俺達の世界の時間の経過具合とかどうなのかわからないが、頑張って強くなって早く帰らなきゃな。

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