第19話 調査隊
ミアが行った方向は森に入った方向と同じだったはずだからもしミアがーーって。
「なんで、戻ってきてるのかな?」
「心配だったからです!」
「僕はミアが傷を負う方かもしれない状況の方が心配だったんだけどね。まあ、いいか。終わった後だったし。このまま帰ろうか」
「え?あれ?あの蜘蛛どうしたんですか?いないようですけど」
「ちゃんと倒したよ。かなり疲れたけどね。もう帰って宿で休みたいんだ」
「わかりました!」
僕達はそのまま何事もなく、アンヨドに着き、依頼を済ませて宿に戻った。戻った頃にはもう夕暮れで、クイーン戦の疲労もあり、何も食べずそのまま泥のように眠った。
目が覚めたんだけど少し早く起きてしまったみたいだ。起き上がろうとしたら激痛が全身に走って、起き上がることが出来なかった。『雷纒(大)』を酷使し過ぎたせいだろう。全力もだいぶ使った。レベルが上がってだいぶ身体が強くなったと思っていたが、まだまだなようだ。
今日は1日休んで回復に努めた方が良さそうだ。ミアには悪いが今日は休ませてもらおう。動けないからする事もないし、もう一度寝ようかな。
むむ、どうやらもう昼過ぎのようだ。身体を動かそうとしてみると、少し痛むが動けない程ではないようだ。『自己再生』スキルのおかげなのかな?でも、『自己再生』って結構早く治るはずだしなぁ。まあいいか。
昨日の夕方から何も食べてないからお腹が空いた。もしミアがまだ昼食を取ってないなら一緒に食べたいし、少し保存食を食べるだけにしておくか。全然満たされないけど。
ミアは何処にいるだろうか?とりあえずミアの部屋をノックしても反応がないから宿内にはいないのだろう。
おばあさんもいない。この宿に泊まっているのはミアと僕だけらしいので、今この宿には僕以外誰もいないことになるな。防犯とか大丈夫なのかこの宿……。
宿に居ても誰もいないので、外に出る。??いつもなら誰かが歩いてたりするし、店も開いてるはずなのに今日は全然人を見ないし、どこの店も閉まってるみたいだ。何か特別な事でもあるのかな?
誰かしらいるかもしれないと思ってギルドに来たら、かなりの人集りが出来ていた。いったいどうしたんだ?何かあったのかな?
「––たんです!」
「んな事信じられるかっ!」
ん?ミアの声だ。揉め事かな?
「ミアーどうしたのー?」
「あっ、テツ君。ちょっと色々あって」
「ああっ?お前がこいつが言うテツって奴か?」
ん?なんかこの人どこかで見たような気がする。あ、思い出した。酒場のマスターだ。黒服のリーダーの。あの時は顔も装備も隠してたし、今の僕としては初対面だから自己紹介しておきますか。
「はい。僕が鉄条 零ですよ。それで、この騒ぎはいったい何なんですか?」
「何で何も聞いてねぇんだ!?ついさっきギルド職員が言ってただろうが!」
「すみませんね。ついさっき起きてここに来たばかりでしてね」
「ちっ。しょうがないから説明してやるよ。王都から連絡が来たんだよ。王都からアンヨドの手前まである森に強化種が出たってな」
ん?強化種?もしかしてクイーンの事かな?
「その強化種はどんな魔物ですか?」
「クイーンジャイアントスパイダーだよ。通常のジャイアントスパイダーよりさらにデカくて素早いかなりめんどくさいやつだ」
やっぱりクイーンか。みんな店も閉めてここに集まってるのってまさかクイーン討伐のためとか?だとしたらちょっと悪い事したかな?
「クイーンなら昨日僕が倒しましたよ?」
「んなわけあるかっ!あいつはこの街の奴ら総出で何とか倒せるくらいの魔物なんだぞ!お前みたいなガキ1人で倒せるわけないだろ!」
「倒せるわけないって言われても本当に倒したしなぁ。ほら、これ魔石。クイーンから取れたやつ」
証拠品として鞄に入れていた魔石を取り出す。手に乗せて見せたら、周りに集まっていた人達が声を上げる。
「まさか本当に倒したってのか!?いや、きっと違う!どっかから用意したんだろ!」
「そんな事して何になるんですか?まあ信じられないなら探しに行けばいいですよ。見つかるとしたら2体目って事になりますけどね」
証拠品もちゃんとあるんだから信じてくれればいいのに。こういう物分かりの悪い人は嫌いだ。めんどくさいもの。
「そんなわけですから一旦調査隊的なものでも組んで、見つかったら狩りに行けばいい」
この後、調査隊が組まれ、森の中を調べる事になった。クイーンと戦った場所に案内するという事で僕も行くことになった。今の僕って歩くのが精一杯なのに……。僕が行く事になったら当然ミアも付いてくるわけで。今日は休もうと思っていたのにどうしてこうなった。
調査隊としてクイーンがいるか調べたが、結果的に言うといなかった。そりゃそうだ。昨日倒してるんだから。まあもしいたとしたら明日戦ってただろうけど。あ、その前に街の人総出で狩られちゃうか。
僕とクイーンの戦場跡を見た時の調査隊の驚きはすごかった。まあ、かなりの量の糸があるしね。それに本気の雷纒を使ってた場所なんか土がその部分だけ抉れてるんだよね。周りの木とか雷纒のせいで焦げ目が付いてたり、切れちゃってるのもあるしね。
その際に調査隊の人達が糸を回収していたので何故か聞いてみたら糸も素材なんだとか。倒したジャイアントスパイダーからあまり量が取れないそうで貴重らしい。僕、糸出せるようになってるから、これ売ったらお金貯められるんじゃね?そしたら魔力圧縮機買えるじゃん!
「ふぅ、やっと終わりかぁ。僕昨日の疲れとこれでもう限界だよ……。昼に少し食べただけだからお腹も空いたし……」
「明日はお休みにしましょう。それと、ご飯なんですけど、今日はどこもやってないみたいで……」
「クイーンのせいかぁ。迷惑な事してくれたなぁ」
「あのっ、もしよかったら私が作りますよ!」
なぬ?
「本当!?ぜひ、是非お願いする!」
とにかくお腹が空いている。作ってもらえるというのなら、ありがたくいただきたい。
「出来ましたよ〜」
「おおっ!」
美味しい!最近食べに行ってるとこより普通に美味しいんだけどこれ!僕も自炊は少しくらい出来るけどここまで美味しくは作れないし。
「ご馳走様でした。ミア凄いね、美味しかったよ」
「ありがとうございますっ!」
あぁ〜道中もミアに料理してもらいたいなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます