第11話 忠告
ゲイルと一緒に修練場に来た。あぁ夕日が綺麗だなぁ。ってそんな雰囲気じゃないんだよなぁ。これ絶対バレてるよなぁ。問題はどこまでバレてるかなんだが……。
「よし、誰もいないな」
「それで用って何ですか?僕この後やりたい事があるんですけど」
「ん、そんな時間は取らせねぇよ。ただの忠告だ」
「忠告?」
「ああ。レイが使える電撃。あれあんま使うなよ」
『雷纒(大)』の事だろう。けどどうしてだろう?
「え?何でです?」
「あれは
「……。魔法じゃないから使っちゃ駄目なんですか?」
「ああ。その電撃は
なるほど。そういう事か。
「つまり、間違われるかもしれないからあまり使うなって事ですか」
「ああ。そういうこった。まあ俺くらいの実力じゃないと気付けないし見抜けないだろうけど、一応な」
うーん、魔族ってどんな感じなのか見たことないし、ゲイルの実力知らないからなぁ。どの程度気を付けておけばいいのか全くわかんないんだよなぁ。
「僕、ゲイルの実力知らないんだけど?」
「あー、そっか。そうだよなぁ。どうするか……」
カードを見せてくれたりすれば簡単なんだろうけど、さすがにそれは出来ないだろうしね。僕がわかるような実力をどう示してくれるんだろうか。
「レイ、お前ダンジョンって知ってるか?」
「各大陸に7個ずつあるやつだよね。まだ合計で5個しかクリアされてなくて、16個残ってる、あの」
「そうそれだ。その中の一つを
「え、ええええええ!?け、けどまだこの大陸のダンジョンはクリアされてないって本に書かれてたよ?」
「ああ。俺がクリアしたのは獣人大陸のダンジョンだからな」
「人族でも他の種族の大陸に行っていいの?しかもダンジョンクリアなんてしても?」
「一応どっちもいい事になってる。じゃないと資源の交換とか出来ないしな」
貿易か。一応ちゃんとそういう事はされてるんだなぁ。大陸で分かれてるから仲悪いのかと思ってたけどそうでもないのかな?
「へぇ。まあダンジョンクリア出来るくらいやばい実力持った人達には見抜かれるかもしれないから注意しろって事でいい?」
「ああ。後は黒ランクの奴らにも気を付けておけ。俺としちゃなんでレイが魔術なんて使えたりするのか気になるところなんだがな」
「それは企業秘密です」
「だよなぁ。ま、いいや。俺はお前の事言いふらしたりする気はないしな。んじゃ忠告終わりだ。まじで気を付けろよ」
「わかりましたよ。短剣と『土魔法』である程度やっていきます」
「おう。それじゃあな。明日にはギルド行くんだからしっかり休んどけよ」
ゲイルが修練場を去っていく。って『雷纒(大)』の話だけ?吸血鬼関係のなにかだと思ってたんだけど。多分バレてると思うんだけどなぁ。まああっちが何も言ってこないなら別にいいか。
じゃあ当初の目的だったあれ取りに行きますか。
ってことで洞窟前です。吸血鬼が『隠蔽』した素材達を回収しとかないとね。吸血鬼がやったとはいえ、これ僕の物だし。冒険者って討伐でこういう素材持って帰ったり、採取したりするらしいし、素材を売ればお金になるだろうからね。
ついでだし、少しだけ狩りして来ようかな。瓶にスライムの液体まだ入るみたいだし。一狩り行こう!
で、サクサクと狩ってきました。ある程度レベル上がってるとこの洞窟って楽勝だね。もう夜だから少し吸血鬼の部分が出てるような感じがしたけど。さて、今のレベルはっと。
鉄条 零 『人族(吸血鬼)』
男 レベル24
スキル:『吸血』『自己再生』『血液譲渡』『血液操作』『隠蔽』『魔力把握』『土魔法』『雷纒(大)』
称号:『転移者』『目醒めし者』『吸血鬼』『真祖』『血を操る者』『群潰し』
ん?そんな倒してないのに前見た時より4レベも上がってる。洞窟の魔物って今のレベルだとかなりたくさん狩らないとレベル上がらないはずだし……もしかして模擬戦?だったら納得だけど。
まあいいや。とりあえずカードと素材に『隠蔽』かけて部屋まで持って帰ろう。これ持ったまま図書室行くわけにもいかないし。『隠蔽』って破られるのかわからないけど、破られるとしたらゲイルなら絶対破れるだろうし。
部屋に戻ってきました。隼人には吸血鬼って話してあるし、この素材の事も言ってあるから見せても大丈夫ってことで隠蔽解除。
なにやら隼人がギョッとした顔をしている。どうしたんだろう?
「どうしたの?何かあった?」
「あったよ!今、目の前で!」
へ?目の前?僕今何かしただろうか?ただ『隠蔽』を解いただけ……ってまさか。
「もしかして、いきなり素材現れた?」
「おう!さっきまで何も持ってなかった鉄の手にいきなり大量の素材がな!」
これは『隠蔽』の使い方に注意しないとだなぁ。そりゃあいきなり物が現れたら誰でも驚くよね。
「ごめん、僕のせいです。驚かせてごめん」
「いや、いいよ。別に。で?どうして素材を?もしかしてなんか作れたりするのか?」
「いや、無理だよ。道具もないし、知識として知ってるだけだし。明日ギルドに行くって話だからもう戻ってこないだろうし、これ売ったり出来るかなってね」
「あ、そっか。俺たちこれから自力で衣食住なんとかしなきゃいけないのか」
「そうだよ。それで当然貨幣もこっちの物使わないといけないし」
「そっか。そりゃそうだった。やばいな。俺ほとんど何も知らねぇわ」
「じゃあ一緒に図書室行こうよ。僕これから行くつもりだったし」
「本かぁ。俺本苦手なんだよなぁ」
「そうも言ってられないでしょ。知らないと何も出来ないよ?文字も読めるし言語も通じるっていうありがたみがあるんだから少しは調べとかないと!」
そう。文字も言語も通じるのだ。異世界で。ありがたい話だ。どちらも出来なかったら意思疎通不可能、情報取得不可能で詰みだったのだから。
僕は隼人を連れて図書室に行く。さて、調べ足りなかった事と新たに調べたい事を調べなきゃな。
僕が手に取った本は魔族関係と魔法、魔術に関する本だ。ゲイルに注意勧告されたのだ。自分でもある程度調べてみなければならないだろう。
魔族。それは魔王が統べる大陸に住んでいる種族だ。魔法に似た魔術と呼ばれる現象を使い、我々人族や他の種族と度々戦争をしてきた。魔族の中にも色々な種類がいて、見た目は様々である。中には友好的な魔族もいるため、一概に魔族が悪と呼べるわけではない。人族や獣人、エルフや竜人などにも悪い思想を持つ輩がいるからだ。
なるほどねぇ。僕は魔族って魔王が配下にしたりしてると思ってたけど、どうも違うみたいだなぁ。友好的な魔族ってのにも会ってみたい。人族大陸だと異世界特有の人みたいなのってあんまり見かけなさそうだし、やっぱり他の大陸に行きたいね。
魔術。それは魔族が使うとされている現象だ。我々人族は魔術が扱い辛く、魔法という一つ下の段階に下げる事により扱う事が出来るようになった。魔物が使っているのも魔術なのではないか、と言われているがまだそれは解明出来ていない。
魔法って魔術の劣化版みたいなものだったのかぁ。でも『雷纒(大)』がそうだったように、ある程度の力がないと魔法の方が優秀だよね。そう思うと魔術ってどうなんだろうね。一長一短って感じなのかな?
そろそろ部屋に戻って寝ようかな。隼人は先に戻っちゃったみたいだし。
そういえば、今晩も吸血鬼出てくるのかな?僕っていう意識は睡眠状態にあるみたいだから、別に疲れたりはしないんだけどさ。せっかく記憶の共有が出来るんだし、情報収集して欲しいよね。
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