吸血鬼少年の異世界冒険

第10話 神代君

　神代君と模擬戦するわけだけど仲原さんに回復を頼んでおかないとね。僕は攻撃くらうつもり無いし、『自己再生』あるから怪我は治るだろうけど、神代君には無いし、存分に味わってもらう予定だからね。

「ということで仲原さん、模擬戦の後の回復お願いね」

「任されました。けど手加減はしてね？具体的には血を使わないこと！」

「わかってるよ。僕の中で血を使っていい場面とか相手っていうのは決めてあるから」

「それならいいけどね。じゃあ頑張ってきてね」

　神代君が剣を構える。二刀流は左右の剣を自在に操れないといけないわけだけど、さっきの模擬戦とかを見てもなかなか扱えるようだし、スキルがあるんだろうね。それの補正のおかげで何とかなってると。ま、いいや。

　僕は短剣を構えずに立つだけだ。刃物危ないし、普通に扱える剣と違って短剣ってリーチ短いわ、刃以外の当てどころないわで確実に神代君にダメージ通っちゃうんだよね。だから使わない事にした。その代わりに

「そんなんで相手にするって俺を舐めてるのか？」

「うん。そうだよ」

　その代わりに用意したのは、『土魔法』で作成した刃の付いていない片手剣だ。 これなら攻撃しても殴られるような痛みだけだろうし。

「来ないの？ならこっちからいくよ！」

　僕は駆け出す。その時にガルルがしていたように足に電気を纏わせて、スピードを上げる。お、案外速くなるね。

「ふっ！」

　縦に剣を振る。唯の縦切りだ。当然剣で弾かれ、もう片方の剣で反撃がくる。それを回避する。うーん、剣の扱いってなかなか難しいのね。

「そんな程度の力で俺に模擬戦を挑んできたのか？」

「いやいや、そんなわけないよ。ただこの機会に剣の扱いに慣れておこうかなって」

「ちっ、舐めやがって」

　神代君が突撃してくる。僕は足の電気を更に強めてスピードを上げ回避する。『雷纒（大）』使いやすいなぁ。

　躱した後に神代君の背後に回り込み、剣で攻撃する。

「攻撃の後に隙が多すぎ。刃が付いてたら今ので終わってたよ？」

「う、うるさい。少し手加減してただけだ！次から本気だ！」

「手加減は強い人がするものだよ。弱い神代君がするとただの自殺行為にしかならない」

「なんだと！？このっ！」

　神代君の二本の剣が襲い来るが当たらない。最初より動きが雑になっててかなり酷い。全てに反撃していく。どんどんボロボロになっていく神代君。

「そろそろ諦めたら？それでちゃんと考えた方がいいよ」

「……」

　何も言わずに立ち上がって剣を構えてくる神代君。あぁダメだ僕じゃどうにもならないみたいだ。終わらせるかぁ……。

　足の電気を今まで以上に解放する。今出せる限界の量だ。スピードを出して背後に回る。その後足の電気を消して、気絶するくらいの電圧を神代君にかける。はい、おしまい。

「ふぅ。仲原さん、神代君に回復お願い」

「う、うん」

　僕もここまでするつもりは無かったんだけどねぇ。そういえばゲイルとの模擬戦のパーティーどうしよう。神代君気絶させちゃったし僕が入った方がいいのかな？

「だいぶやったなぁレイ」

「あ、ゲイル。まあちょっと色々あったんですよ。それでパーティーどうしたらいいですかね。神代君気絶させちゃったし僕が代わりに入った方がいいですか？」

「いや、もうおしまいだ。これで冒険者になりたいって奴の実力全部観れたしな。そいつが起きたらギルド向かうから荷物の準備しとけ。ここを出るからな」

「わかりました」

「じゃあな。俺はこいつの事診てる事にするからよ。なんかあったら来ていいぞ」

「はーい」

　終わりかぁ。はぁ。まあいいや。あ、そうだ。

「えっと、美智永さんと近藤君」

「お、なんだ？」「なに？」

「謝らなきゃって。一応同じパーティーだった神代君ボコボコにしちゃったし」

「いいって。私達に謝られても困るだけだし」

「ああ。それに俺ら2人は鉄条に見せてもいいって思ってた側だし」

「あれ？そうなの？」

　見せてくれるんだ。じゃあこのパーティー神代君以外の問題って特にない良いパーティーなんじゃ……。

「ああ。俺は鉄条と洞窟行ってお前の作戦を一回やってるからな。任せてもいいって思ってたんだよ」

「私は大吾君からその話を聞いてたからね。いいかなってね」

　近藤君の名前は大吾らしい。

「ああ。そういうことか。でも一応謝っておくよ。ごめん」

「いいさ。それにああいうのは一回叩いてやらなきゃ変わらないだろ。それがわかっててやったんだろ？」

「まあね。まさかあそこまでやらなきゃいけないとは思わなかったけど」

「確かに。まあだからいいさ。って事でこの話は終わりな。また後でな！」

「じゃあね、鉄条君」

　二人に手を振って別れる。隼人達とも話したいな。ってあれ？いないんだけど？神代君がいないからゲイルと一緒に行ったのかな？まあ後ででいっか。

　部屋に戻ってきた。もう夕方だ。隼人は戻ってきていないようだ。荷物でもまとめとくかって思ったけど荷物なんて何も無かった事に気付いた。図書室で借りた本も返しておかなきゃなぁ。これ、返さなきゃダメかなぁ。まだまだ読み終わってない本とか読み返したい本があるから欲しい……。いや、やめとこう。そんな事してお尋ね者とかになったら厄介だし。返しに行ってくるかぁ。

　僕は本を持って図書室へ向かう。返すついでにちょっとだけ調べごとしておこうかな。気になってる事があるしね。

　図書室で本を返し、調べごとを終えて部屋に戻ってきた。隼人はさすがに帰ってきてた。

「あ、隼人。戻って来てたんだね」

「ん？ああ」

「神代君のとこ行ってたの？」

「ああ。さすがにあの怪我だしな。それに目覚めてすぐ鉄に挑むかもしれないし」

　あー、そこまで考えてなかった。恨まれちゃってるよなぁ絶対。怖いなぁ。

「ごめんね。そんな事させちゃって。僕がやるべき事なのに」

「いいって別に。俺は俺のやりたい事をやってるだけだしな。それに鉄がやったら逆効果かもしれないし」

「それはあるかも」

「ま、そんなわけで俺がって事だ。ゲイルさんと色々話も出来て楽しかったしな」

　ゲイルと話かぁ。僕もしたかったかも。ちょっと聞きたい事あったし。って隼人がここにいるってことは……。

「神代君、起きた？」

「ああ。ついさっきだけどな」

「それじゃあ今から出発？」

「本当ならそうだったんだけど、怪我が思ったより酷いそうで明日に延期らしい」

「うっ……。それは、うん。まずいことしたなぁ……。謝りに行こうかな……。うん、行ってくる」

「ん、そうか。それじゃ待ってるぞ」

　はぁ。自分でボコボコにしておいて謝りに行くって複雑だ。ボコボコにした理由があり方、考え方を変えるためってのがさらにだよなぁ。

　ついた。ここだ。

「失礼します」

「ん、おおレイか。なんだ？なんかあったか？」

　ゲイルまだいたのか……。正直いてほしく無かったよ……。

「ゲイルに用じゃないんです。神代君の方にちょっとね」

「ん、そうか」

　ゲイルに神代君のところまで案内される。仲原さんの『回復魔法』のおかげで多少回復しているとはいえ、結構酷かった。うん、これはやりすぎだわ。

「あー、えーっと神代君。その、ごめん。やりすぎだった」

「別に。気にしてない」

「え、あ、そ、そう」

　言葉だけだと信じられないって思うんだけど、なんか態度もそんな感じがしてるんだよねぇ。なんか肩透かしくらった気分だよ。

「それだけか？」

「う、うん」

「ならもう帰ってくれ。俺も色々と思うところがあるんだ」

「あ、うん。わかった。それじゃあね」

　なんかこれ別に来なくても良かった感じな気がする。まあいいか。謝りに行ったっていう行動自体に意義があるんだ！

　さて、これからどうしようか。あ、あれ取りに行かなきゃ。思い立ったが吉日だし、今からお忍びで行ってきますかね。

「あっ、ちょい待ち。レイに用があるんだわ」

　えー。今のうちに取ってきて残りの時間図書室に籠もりたかったんだけどなぁ。しょうがないか……。

「場所変えるぞ。修練場でいいか。今ならもう誰もいないだろうし」

　誰もいない……ね。これは色々と不味い話になりそうだなぁ……