第9話 集団戦
目を覚ます。えーっと?あー、倒れたんだった。あの魔法、魔力消費もそうだけど血も少し使ってるんだよね……。じゃなきゃニードルを何度も何度も射出なんて出来ないよ。あー、ゲイルの使う魔法見破りで血を使ってるとかバレてなきゃいいけど……。あー、ゲイルのレベル知りたかったなぁ。
というかここ僕と隼人の部屋だよね。誰が運んでくれたんだろう。隼人かな?でも隼人はいないしどこ行ったんだろう?いつまでも寝てるのはあれだし、ちょっと外に出ようかな。
とりあえず修練場に行ってみよう。倒れた場所だし、まだだれかいるかもしれないからね。
目的の修練場に着いた。そこでは五人対ゲイル一人という構図が出来上がっていた。
この戦いでもゲイルは魔法での打ち消しと回避、たまに足掛け等のちょっかいだけで攻撃と呼べるような事はしていなかった。
これはなかなか恐ろしいな。全部躱してるよ。これでまだ本気を出してないからなぁ。ゲイルって何者なんだろう?それとも冒険者ってみんなこのくらい強いのかな?だとしたらそれでもまだ5つしかクリアされてないダンジョンってかなりやばい所だよね。
突然、ジリリリと何かが鳴り始めた。音の発生源はゲイルからのようだ。鳴り始めたら五人が攻撃するのを止めた。時間制限があったのか。
「はいっ、しゅーりょー。今回もダメだったな。お!」
ゲイルがこちらに気づいたようだ。こちらに駆け寄ってくる。
「そういやお前の名前を聞いてなかった」
そういえば名乗ってなかったなぁ。というか冒険者志望した他のみんなも名乗ってないけど。
「あ、僕の名前は鉄条 零です」
「ん、そうか。んじゃレイって呼ばせてもらうかな。今パーティー組んでの模擬戦やってるけど、レイお前は参加禁止な」
「え。なんでですか?」
「倒れたばっかだからに決まってんだろ、いくら起きれるようになったっていってもまだまだ魔力回復してないだろ。だから見学だ」
「ちぇっ。魔力枯渇したのゲイルが切り札使えって言ったから使ったせいなのに……」
「あー、それは悪かった。まさかあんなのがくるとは思ってなかったからな。だが駄目なもんは駄目だ」
早く強くなる為には強い相手と戦って勘を掴んでおいた方がいいと思ったから、やりたかったんだけどなぁ。それに連携とかって実際にやらなきゃわからないものじゃない?
「悪かったって。そんな顔すんなよ。あん時はまさかあんな簡単にバレると思ってなくてさ、ちょっとテンション上がってたんだわ。まあ見るだけでも色々分かることとかあるからさ、な?」
「はぁ……。わかりました。わかりましたよ。見学してますよ。って事で早く次お願いしますよ」
「はいはい」
見学かぁ。まあ確かに別の視点から見ないと分からない事もありそうだしいいけどね。次はどのパーティーとやるんだろ。あ、隼人達だ。
メンバーは……仲原さんと神代君、美智永さん、あれは……あ、昨日大剣使ってたえーっと名前何だっけ?わかんないや。
あ、よく見たら王女いるじゃん。何でだろう?神代君の応援か何かかな?
あ、始まった。隼人と神代君が特攻してる。神代君が二刀流してるけどなかなか様になっているな。けどそれでも当たらない。
後ろから仲原さんと美智永さんが魔法使ってる。仲原さんのはなんかレーザーみたいな感じだ。確か『聖属性』持ってたからそれだろうなぁ。ゲイルはレーザー光線を打ち消してないみたいだ。魔法にも相性とかあってそれで消せないのかな?僕が読んだ本にはそこまで詳しい事は書かれてなかったから、また後で色々と読まなきゃな。美智永さんは氷の槍を飛ばしてるね。けど打ち消されちゃってるな。仲原さんの方を避けてる分、美智永さんの方が消されまくって厳しめなんだな。
大剣の人はなかなか立ち回りがうまいと思うな。隼人と神代君の動きを邪魔せずに、仲原さんと美智永さんの魔法を当てさせようとしてる。
うーん、隼人と神代君突っ込み過ぎじゃない?もうちょっと慎重に作戦とか立てて攻撃しないと当てるなんて無理だよ。これはあれかなぁ。終わった後に聞きに行った方が良さそうだなぁ。
ジリリリとゲイルから音が発せられる。終了のようだ。聞いてみますか。
「隼人、お疲れ」
「ん?あ、鉄か。大丈夫なのか?」
「うん、参加は禁止されたけどね。それでさっきの見てたけど、あんな突っ込んでも当てること出来ないと思うよ?」
「あー、いや、一応あれも作戦なんだわ」
「へっ?作戦?」
「うむ!ゲイルさんはずっと連戦だから、俺と神代で突撃するのと魔法で回避させまくれば疲れて当てられるんじゃないかとね」
「うーん、あんまり現実的じゃなくない?多分先に疲れるのこっちだと思うし、ゲイルって最小限の動きしかしてないからそこまで疲労溜まってないと思うよ」
「まじか!じゃあなんか良い作戦でもない?」
「うーん、五人のスキルとか見て相談しないと無理かな。僕だって切り札使わされてかすり傷だし」
「それもそうだな。よし、んじゃ見せてもらうか」
「えっ?」
僕が止める間もなく隼人が他のメンバーを呼んでしまった。さすがに教えてくれないんじゃないかなぁ。
「なあなあ神代。ちょい作戦立てたいからカード見せてくんね?美智永とか近藤とかも」
あ、大剣の人って近藤って名前なのか。覚えておこう。
「いや、ちょっと待て。不知火、お前作戦立てられるのか?」
神代君が問うてくる。隼人に作戦立案は無理だろう。頭回らないし。
「いや、俺じゃなくて鉄が作戦立てるんだ。俺が立てようとしても無理だろうし」
「なるほど。だが、鉄条ならいいってわけじゃないんだ。本当に良い作戦なんて立てられるのか?」
「うーん、それは何とも。ゲイルはかなりの実力者だし、まだまだ本気出してないからね……。通じるかどうかはわからないよ」
「……それじゃあ見せられない。あいつは言っていた。冒険者は自身の力を隠すものだって。なら鉄条、きみにも見せない方がいいってことだ。違うか?」
「うん。そうだろうね。ゲイルが本気出さないのも、僕らに力を見せないためだろうし」
「だったらもう見せろなんて言うなよ。俺は強くなるためならお前らとだって戦うつもりだ」
戦うつもりね。多分戦ったら僕の方が強いんじゃないかな。
「うん。わかった。もう見せてとは言わないよ。というか僕は普通に見せてくれないと思ってたし。だけど、今のままじゃ何も変わらないと思うよ。実際さっきの戦いを見てて無理だろうって思ったし」
「なんだと?なんで無理だってわかる?もしかしたら当たるかもしれないじゃないか!」
はぁ。駄目だこれ。イメージとだいぶ違うなぁ。僕のイメージの神代君はもっと色々考えてる人だと思ってたんだけどなぁ。
「神代君さ、動きが個人戦と集団戦で同じだったよね。あれじゃ駄目だよ。個人戦で何もできなかったのに、それと同じ動きで当たるはずないじゃん。これは隼人にも言える事だからね」
「ん、そうかぁ」
「ぐっ。だ、だが、それしか無いじゃないか!他にどうやれって言うんだよ!」
それくらい自分で考えられないのかな?僕の中のイメージ像がボロボロと崩れていくんだけど。
「はぁ……。今やってるのは集団戦、パーティーでの戦いなんだから協力、サポートとか色々あるでしょ。ゲイルも一人一人だと絶対に無理だって思ったから変えたんだろうし」
「協力、サポートって言っても俺は他の奴の力を知らない。知らないなら自分の力でやるしかないじゃないか」
「知らないなら聞けばいいでしょ」
「スキルや魔法を見せろなんていえるはずないだろ!」
そうかなぁ?僕普通に土井に見せろって言われてるし、隼人と仲原さんにも見せてるけどなぁ。昨日洞窟内でレベル確認してた時、オタク集団は見せ合いしてたし。
「そう?僕は隼人とか仲原さんに見せてるよ?隼人達のも見せてもらってるし」
「それは信頼関係があるからだろう。鉄条だって誰彼構わず見せてる訳じゃないはずだ」
「まあそうだね」
「だったら俺には無理な話だ」
「同じパーティーの隼人、仲原さん、美智永さん、近藤君は信頼に値しないってこと?」
「ああ。そうだよ。この世界は遊びじゃないんだ。俺は他の奴の力なんて信用出来ないし、信頼する事も出来ない。それで魔物に殺されたら元も子もないからだ」
なるほどね。だけどきっと今のままじゃあいずれ死んじゃうかもしれないんだよなぁ。
「なるほどね。じゃあ神代君はこの世界の事とか魔物の事とか色々調べた?僕が昨日図書室に居た時に来たのは、美智永さんだけだったけど」
「そ、それは……まだだ」
「そんなんで生きれると思うなよ。情報も無しにちょっと厄介な魔物に会ってみろ。すぐに死ぬぞ」
「そんな事ない!俺は死なない!」
「その根拠は?その保証は?一回の戦闘で何も学ばず、情報も得ようとせず、他の力を借りようともしない。どう考えたって死ぬぞ。この世界はそんなに甘くないんだ。考えでは遊びじゃないってわかっていても、行動は遊びと何も変わんない」
「なんでお前にそんな事言われなきゃならない!俺は俺の考えでやってるんだ!お前の考え方なんて知ったこっちゃねぇよ!」
あぁこりゃダメだ。僕としては帰れなくても問題無いけど、人が死ぬ、それもクラスメイトが死ぬのはちょっとあれだ。勘弁してほしい。なので、ここは……。
「ゲイルー」
「さん付けしろっての。ま、いいや。で、なんだレイ?」
模擬戦中なのにゲイルはしっかり返答する。本当に何者だよゲイル……。
「すこ〜しだけ戦ってもいい?相手は神代君なんだけど」
「神代って誰だっけ?」
「二刀流の奴だよ。さっき模擬戦してた」
「あ〜あいつね。まあいいんじゃね。レイもだいぶ回復してるみたいだし。あ、けど切り札禁止な。あれ使うと絶対死ぬから。神代が」
「それはわかってるよ」
さて、ゲイルの許可も得た事だし神代君と模擬戦やるか。まあ勝手に決めた事だから断ってくる可能性もあるだろうけど、さっきの言い合いをした後だし受けてくれるだろう。
「神代君、僕と模擬戦しようか」
「は?お前と?何で?」
「ん?そりゃ今の考えでやってたら確実にダメだって事を分からせるためだよ」
「……いいだろう。お前なんかに負けるかよ」
よしよし。それじゃ、いっちょやりますか!
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