第6話 もう一つの人格とガルル狩り

 えー、はい。かなり追求されました。まあそりゃあ図書室に行くって言った人の服が破れてればそうなりますよね。僕だって逆の立場だったらそうしますし。


 まあなんとか誤魔化した。土井の名前は出したけどね。じゃないと誤魔化す事もさすがに無理だし。まあ魔法を撃った事は言わなかっただけ感謝してほしい。


 そんなこんなで色々あり、夕飯になった。さすが国王が住む城という事か、クラス全員が入る食事スペースがあった。普段こんな大人数で使う事もないだろうに、なんでこんなに広いんだろうね。威厳とかかな。


 夕飯はパンとシチュー、揚げ物に蒸かし芋だった。なかなか美味しかったが、ガルルの肉が食べたかった……。


 風呂は各自好きな時間に入っていいという事なので、すぐに入った。他の誰かと一緒というのも好きじゃないからね。

 寝室は二人一組で使う事になったので、隼人と使う事にした。隼人は服の事についてはもう追求してこなかった。よく出来た友人だ。


 レベルを聞いたら12だそうだ。今日だけでだいぶ上がっている。これは明日足手まといになりそうだ。頑張らなければ。


 隼人に『魔力把握』について教えておいた。死んでほしくないからね。生存率を高める為にも情報共有は大事だ。

 僕がコツを教えながらなんとか2時間ちょいで、隼人は『魔力把握』をする事が出来たみたいだ。これで明日僕と隼人はレベルが上がった時に『魔力把握』スキルが追加される事だろう。仲原さんにも教えなければ。


 そろそろ夜も遅くなってきたので寝る事にした。隣のベッドからいびきが聞こえてくる。僕も今日は色々あって疲れたし、さすがの隼人でも相当疲れたようだ。ふぁぁ。眠気が増してきた。明日も頑張ることにしよう。おやすみなさい。



 ※※



 目を覚ます。といってもまだ朝ではない。寝てからまだ5分も経っていない。それでも目を覚ます。僕は寝ているが俺は起きているから。少しやる事もあるしな。隣で寝ている隼人を起こさないように、静かにゆっくり寝室を後にし、誰にも見つからないように洞窟へと向かう。


 目的はガルルだ。別に食い意地が張って狩りに行く訳ではない。『吸血』スキルとレベル上げだ。一人で行くのは危険だろうがまあ俺なら大丈夫だろう。慢心ではなく本当に。


 僕の方は血の塊を1個しか作らなかったが、これはかなり強力な武器になる。持っている短剣で指を薄く切り、血を流して塊を4個作っておく。これを『血液操作』によって極細い血の針に変えて相手に打ち込めば、その針の血を操り相手を内部から破壊することが出来る。『血液操作』で自分の元に血を集めれば証拠も残らない。完璧な暗殺道具だ。まあ人殺しに使うつもりは今の所ない。土井達との事も僕の方の問題であり、俺が手を下すようなことじゃないからな。奴らをどうするかは僕の方に任せるとする。


 俺がこれを使う相手は魔物だ。ガルルと真面目に殺り合うのも面倒くさいし。昼は一匹だったが基本群れを成しているからな。


 さて、洞窟だ。僕達の組の洞窟を使うと明日の魔物の数が減ってしまうだろうから、他の組の洞窟にお邪魔させていただいた。御目当てのガルルは何体狩れるかな〜。


 おっ、発見。数はうん、10体だな。これは殺り甲斐が有りそうだ!血の塊を5個針に変えて、ガルルに向かい投擲する。2体に避けられてしまったが当たった3体は倒れ伏した。これであの3体は終わりだ。残り7体。投擲した血を集めながら、ガルルの攻撃を躱していく。7体はさすがにきつい。少し擦り傷をもらい、傷から血を意図的に出す。『自己再生』で擦り傷を治し、集めきった血と新たに出した血を先程と同じように針に変え、投擲する。今度は4体に当たり、残り3体だ。3体ならば傷を負わずに完勝する事も容易い。


 ガルルは数で優位に立っていたはずなのに、仲間が殺られどんどん追い詰められていく状況に魔法を解放する。


 ちっ、めんどうな。今までの素早さでも針が当たらない事があるのにさらに速くなったら全く当たらなくなるだろうがっ!


 血を集めて再度投擲するが3体とも素早さが増していて、当たらない。これは面倒だ。短剣2本を取り出し、両手に持つ。集めた血を短剣の刃にコーティングする。


 ここからは近接戦だ。ガルルが纏っている電気はほとんどが脚に集中しており、それ以外の所は少ししか電気がない。こちらが攻撃しても躱されるのなら相手が攻撃してきた時に、その少しの部分を狙ってカウンターを入れてやればいい。今の速さでも相手の攻撃を躱せてはいるのだ。カウンターを入れる事も出来るだろう。


 幾たびも攻撃に合わせてカウンターを狙っていくが、間に合わない。こちらの短剣が当たりそうになる瞬間に速さがさらに増して躱されてしまうのだ。奴らは匂いでこの短剣に触れられてはいけないということを察知したのだろう。他の場所を守っている電気さえも脚に集中させて、躱しにきている。


 これでは近接戦も無理だ。本当に厄介な相手だ。仕方がないので、裏技を使ってやる事にした。短剣にコーティングした血を全て回収し、それを霧状にして周辺を覆わせる。


 後は攻撃を避け続けるだけだ。5分間くらいでガルル3体が地に倒れ伏す。これは相手が息を吸うことによって血を体内に入れる方法だ。だが、今回は血が少なかったため濃度が低く倒すのに時間がかかった。この技はかなり強力なのだが、敵を倒したという実感があまり得られないため、最終手段として用いる事にしていたのだ。だが、まさかガルルに使わされるとは思っていなかった。僕の方の為にダメージを負わないようにしていたが、ここまで苦戦するとは予想外だ。


 とりあえず、ガルル10体から昼に見た要領で皮と牙を剥ぐ。ここからは『吸血』の出番だ。肉に噛り付き、歯を立てて血を吸う。トマトジュースのような味だ。10体分全部の血を吸い終え、その場に座り込む。そして、カードを見てレベルとスキルを確認しておいた。



 鉄条 零 『吸血鬼(人族)』


 男 レベル8


 スキル:『吸血』『自己再生』『血液譲渡』『血液操作』『隠蔽』『魔力把握』『土魔法』『雷纒(小)』


 称号:『転移者』『目醒めし者』『吸血鬼』『真祖』『血を操る者』



「これは先が長そうだな……」


 この言葉の意味はもちろん新しいスキルの『雷纒(小)』の事だ。10体の血を吸う事により手に入れたこのスキルだが、使ってみてもまだ出力が弱く微少の電気を纏わせる事しかできない。実用化させるには、もっと出力がないといけないだろう。それにはもっとガルルを狩る必要がある。なかなか骨が折れる話だ。


 カードをしまい、ガルル探しをする為に洞窟の奥へと進む。ガルルの皮と牙は置いてきた。帰る時にまた同じ道を通る為、持っていくのは不便でしかないからだ。道中で瓶を2つ見つけたのでこれは持っておく。ガルル狩りが主目的だがレベリングも兼ねているため、スライムやボーンアンデットが出た場合は容赦無く倒していく。その際、素材を放置だと色々と面倒が起きる可能性があるため、回収するつもりだ。瓶はスライムを倒した時に採取しなければいけないので、持っておく事に損はない。


 探索を開始して10分だがガルル10体を相手にした以外に魔物を見ていない。さっきのが例外で魔物も夜は寝ているのか?まあまだまだ時間はあるし根気強く探していきますか。


  ふぅ。やっと見つけた。今度はガルル4体。こいつらを見つけるまでにスライム5体とボーンアンデット6体も倒したぞ……。ボーンアンデットは骨だから血の針効かないから面倒かったし。まあこいつらのおかげで『土魔法』の練習になってよかったけどな。


 今回のガルルには血を使わないで戦う事にする。血を使えば倒すのは簡単だが、自分の戦闘能力が伸びないからな。それに『土魔法』に慣れておきたいし、魔力総量を増やしておきたい。


 先手必勝ということで『土魔法』で三角錐の形をした鋭いニードルを作り出し、ガルルに向けて放つ。それと同時に『土魔法』でガルル達の後ろと横に土壁を出して退路を塞ぎ、短剣を片方だけ装備して、突撃する。直進するだけのニードルは簡単に避けられてしまったが、避けさせる為に直進させたのでこれでいい。横と後ろは塞いであるため、避けるには前に出るしかない。そのときに、


「ふっ!」


 頭に短剣を突き刺せば倒せる。生物なのだから頭をやってしまえば生きていられない。これであと3体だ。短剣を回収し、残りのガルルの攻撃を回避する。自分とガルルの位置が入れ替わってしまったので、土壁を解除する。


 今度は『土魔法』で落とし穴を作り出し、回避しながら誘導して落としてやった。穴の中には刺殺出来るようにニードルを仕込んでおいたので落とすだけで楽々と倒す事が出来た。初めからこの作戦使えば良かった……。


 その後も何度もガルルと戦い、その度に『吸血』をして、



 鉄条 零 『吸血鬼(人族)』


 男 レベル20


 スキル:『吸血』『自己再生』『血液譲渡』『血液操作』『隠蔽』『魔力把握』『土魔法』『雷纒(大)』


 称号:『転移者』『目醒めし者』『吸血鬼』『真祖』『血を操る者』『群潰し』



 となっていた。レベルもかなり上がっている。称号にも新しいものが追加されている。頑張った成果だろう。


 この後、『雷纒(大)』を試し撃ちし、素材を全部回収して、この洞窟を後にした。

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