第110話 新たな情報

 あれから毎日、父さんの所に行っては色々な事を教えて貰った。


 なぜクラスメイトを巻き込んだのか。どうやら当初の予定では召喚されるのは僕だけだったらしい。この世界と繋がりがある僕に父さん、母さんの力で王女の手によって呼び出される所に魔王が遠隔で介入して来たのだとか。教室で見た魔法陣とこの世界に来た時に見た魔法陣が違ったのにはそういう理由があったらしい。魔族が介入しているって考えはあったけど、魔王本人が介入してたなんてね。

 魔王が介入してきた理由は、クラスメイトが死ねば魔王が強くなるかららしい。まだ土井以外に死亡報告は聞いていない為、強くなっていても土井一人分ということになる。


 何故王女に召喚させたのか。どうやら父さんと母さん、各国の王は協力関係にあるらしい。父さんが魔王を名乗っていた時は平和だったらしいからそれも頷ける。で、父さん母さんは身を隠しているから派手に動く事は出来ない。父さんは力が無いから殆ど動けないけど。だから何処かの王の所で召喚してもらう必要があったのだとか。


 日本に帰る術を教えて欲しい。これは母さんしか知らないそうだ。父さんも方法を教えてもらってないらしい。そういう訳で母さんに会うために多種族大陸へ行く事が決定した。獣人大陸に先に行くけどね。


 あの『十字架に悪魔と鎌』のマークは何なのか。父さんが作った魔法道具に付いているものでそれぞれに父さんの力を分散させる事が出来るらしい。魔王に奪われないように分散させたがマークの付いた魔法道具が何処にあるか迄は把握出来ないから捜索しているのだとか。


 そもそも魔族とは。魔族にも種類があり、見た目が人間そのままの者もいれば、角や翼、尻尾なんかが生えている者もいるらしい。そして戦闘力もバラバラなんだとか。そして現在の魔族は軍門に下った者、逃げ出した者以外は全て強者なんだとか。魔族=強いという図式が出来ているのはこれのせいらしい。ミアとアレウスとかの戦闘力が違ったのも種類の違いだからだとか。


「一気に色んな情報はありがたいけど、みんなには聞かせても意味ないかなぁ。余計な混乱を招くだけだろうし……。母さんが帰る術を知ってるにしたって多種族大陸のどこにいるのかもわからないし、みんなは母さんを知らないからなぁ」


 そも多種族ってエルフ、ドワーフ、精霊、吸血鬼、龍人の5種族がいるらしいから母さんがどの種族のとこにいるのかすらわからない現状、見つけるのは困難を極めるだろう。

 それに父さんの話を聞く限り魔王を倒せるのは僕とクロくらいだけれど、死なないようにレベルは上げてもらいたい。クラスメイトには死なないでもらいたいと思っていたが、父さんの話を聞いてさらにそう思った。相手の力を増やして欲しくないのだ。


「クロ、これは誰にも言わないこと」


「わかりました。しかし、マスター。奥様ならマスターの変化から気付きかねませんが」


「そうなんだよねぇ……。あの僕に対する異様な洞察力はいったいなんなのか……」


 父さんにミアの事を聞いても、「こっちで用意した駒じゃない。いい奥さんを持ったじゃないか」とか言ってたし。


「とりあえずは黙っておきますが、何か隠しているかと尋ねられた時点で秘密を明かします」


「うん、ミアに関してはその方向性でよろしく。さて、それじゃあミストさん、お願いします」


「ああ、そろそろ一発くらいは当ててくれよ?」


 最近は父さんから話を聞くだけじゃなく、ミストさんやもう一人の世話役の少女(名前は教えてくれなかった)と手合わせをしている。ミストさんはスパイだが四天王を務める程の実力者であり、少女の方は父さんが実力者だと教えてくれたため、僕の修行に付き合ってもらっているのだ。


 実力者だというのはこの身をもって実感しており、未だに何一つとして攻撃を当てられていない。最初少女と手合わせをした際には驚愕されて呆れられた。


 父さんから何か聞いていたのかもしれないが、僕は自分の実力が劣っている事を自覚している。そりゃあそこら辺の魔物や冒険者には負けないくらいの実力があるつもりはある。でも魔族には勝てない。魔族二人には運良く勝てただけだ。実力じゃない。現にミストさんに対して何も出来ていないのがそれを証明している。


 だからこそ強くならなくてはならない。占い師の話ではそう遠くない未来にあの占った出来事が起きるらしい。それまでに僕は何としても強さを手に入れないと……。






「パパ、お兄ちゃん期待外れだった」


「まあそう言うな、愛しの愛娘よ。息子はこの世界に来てまだ数ヶ月しか経ってない。それであの強さなら申し分ないぞ。しかもまだ『到達者』じゃない。愛娘もミストも『到達者』だからな。その差があるのはしょうがない」


「『到達者』じゃなかったんだ。なら、仕方がないのかも」


「まあ息子一人だけならとっくに『到達者』になれてたと思うんだけどな。どうも足枷が多いみたいだ。そのおかげで今、息子は頑張ってるんだけども」


「早く『到達者』になってほしい。じゃないと私が全部やっちゃう」


「愛娘はあまり張り切り過ぎないで欲しい所だよ」


「パパがそう言うならある程度自重しとく」

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