第96話 競売開始
宿代も惜しみたいとの事で暗闇の中で全員が寝たり、依頼をこなしたり、案の定指輪の事がばれて色々からかわれたりしたが、無事数日が過ぎ、競売の開始日となった。
競売に出すのは武器だけのつもりだったのだが、スキルに『細工』と『彫金』が増えていたので、どうせならと思いアクセサリーの魔法道具を幾つか作り、それも出品しておいた。
クロのおかげで素材が減るどころか増える一方なのは本当にありがたい事だ。
競売のルールに一人で落札していい個数の決まりはなく、お金さえあるなら出品される全ての品を落札する事もいいらしい。
まあ僕達にそこまでお金はないんだが。今日の競売での僕が出品した武器、アクセサリーがどのくらいで落札されるかによって、2日目、3日目に使える金額が決まってくるだろう。
「ミアはこの中で何か気になったのあった?」
「そうですね〜、気になるのはやっぱりシークレットです!」
「だよね」
今見ているのは競売目録であり、その日に何が出品されるのかが書いてある。これによって狙いを絞ってもらい、同じ物が欲しい人がいた場合は、より値段が釣り上がると考えての事だろう。
そんな目録の中の一番最後にシークレットというものがあり、僕とミアもかなり気になっていた。多分、他の人も気になっている事だろう。
「僕が1日目に出したのは全部書いてあるし、僕が出した物じゃないのは確かだね」
「1日目で、競売の盛り上がりも決まると思いますので、それなりの物は出てくると思います。もしかしたら、あのマークの物かもしれません。この1日目のお金の使い方には気を付けた方がいいかと」
そうなんだよね。『十字架に悪魔と鎌』のマークが付いている物だったら絶対に回収しないといけない。
持っていれば占い師がいずれ取りに来るだろうし、その時に聞きたいことがあるのだ。
「まあ各自でお金は持ってるし、僕とミアは共有資金。ミアが欲しいと思う以外には目録を見る限り、手を出すつもりはないかな?」
シークレット以外はあまりパッとしないものが結構ある。他の客もシークレットがどんなものかわからない以上はお金の使い方には渋るだろうね。
「お集まりいただきありがとうございます。此度の競売で、皆様がお望みの物が手に入れられる事を切に願っております。今日、出品される商品はお渡しした目録に記載されておりますので、どうぞお目通し下さいませ」
どうやら競売が始まるようだ。
「もし、希望の品がお手に入れられましても、ぜひ最終日までお付き合いしていただければとお思いします。シークレットは5日間の間、毎日ございますので、もし、初日に手に入れられずとも、2日目、3日目と諦めずにチャンスを掴み取っていただければと思います」
うげ……。シークレットって毎日出てくるのか……。お金大丈夫かな……。
「ちなみに、こちらで商品を保管しておりますが、窃盗や奪取等の行為が判明した場合、こちらは冒険者ギルドと協力のもと容赦なくブラックリストに登録、殺害に向かいますので、お気の迷いはしないようご注意下さいませ」
あ、案外怖いんだね……。あ、もちろん僕はそんな事するつもりはないよ。出来るとしてもね。
『隠蔽』『気配遮断』『隠密』を使って、分身体が暗闇に商品を入れまくり、見つかりそうになったら分身体を消す。そんなんで出来ちゃうからね。しないけど。
「あまり長い事お話していても、お客様はいい気分にはならないでしょう。ですので、早速始めさせていただきましょう。5日間に渡る競売の、開催でございます!」
そこから司会の人の紹介と共に商品が次々と競りにかけられていく。意外だったのは、客の皆がそれなりにお金を使っていた事かな。僕の武器類もそれなりの金額で落札されていたし。
競り落とした人は見た目からして冒険者だったので、シークレットより実利を取ったのだろう。命が常にかかっている冒険者ならいい判断だと個人的には思う。
僕とミア、他のみんなも今日は手を出さずにシークレットの存在を確認するらしい。まあ武器類は僕が作ったのがあるし、アクセサリー類の魔法道具も僕のがあるから今日の競売目録を見る限りでは欲しいと思える物は少ないだろう。
そんな事で、やっと今日最後の商品、シークレットの内容が明かされる時が来た。
「さあ、皆様!気になっておられるお方は沢山いらっしゃるでしょう、最後の目玉シークレットでございます!」
司会の人の紹介に合わせてシークレットが運ばれてくる。布がかけられているために中はまだ見えない。
「……マスター」
「ん?どうしたの?」
「……微弱ながら、気配と魔力の反応があの布の下に見られます。そして、魔眼も使用して、詳細を見させて頂きました」
……気配に、魔力、だって?
「マスター、あの布の下は……」
「それでは、商品の発表といたしましょう!どうぞ!」
被せられていた布が、大きく宙を舞い、取り払われる。
「あれは……」
「今日最後の商品、それは!」
「……獣人、それも」
「獣人の少女でございます!」
取り払われる布の下から、鉄格子に入れられた、猫の獣人の少女が現れた。
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