第95話 未来の話

「さて、やっとみんないなくなってミアと一緒になれたよ……」


「クロもアカもいますけどね」


 ミアに渡したいものがずっとあったのに渡せなくてもやもやしてたんだよね。みんながバラバラに依頼を受けに行ってくれてよかった。


「2人はいいの。ミア、手、出して」


「はい」


 ミアの薬指にぴったり合う指輪をはめる。『錬金術』のおかげで意匠を凝る事も出来た自慢の逸品だ。


「ミア、大切にしてほしいかな」


「絶対に大切にします!後は挙式をあげるだけですね!」


「まあ、うん……。それは、全部が片付いてからって事で……」


 指輪を贈るというのはまあそういう事だ。意味についてもクロに事前に聞いていた。もう一つ、用意していた物もあったのだが、指輪の方を渡した。


「はい!」


「奥様、これで正式に奥様ですね」


「ご主人の奥様です!」


「ありがとうございます!」


 うーむ。これ、今他に誰もいないから渡したけど、結局ミアがみんなに話しそうな気がする。というかみんな指輪に気づくと思う……。どっちにしても、弄られるだろうな……。


「まあ、いいや……。それより、依頼をサクッと片付けちゃおうか」


 僕、ミア、クロ、アカで同じ依頼を受け、一気に完了させていくスタイルを取る事にした。クロはいつの間にか冒険者ギルドに登録しており、ランクも赤とみんなより高い。多分、分身で上げてたんだろうね。


 アカはみんなが競売に参加するため、自分も参加するために登録したらしい。お金も一応あげてるから気に入った物があったなら自分で落札してくれると思う。


「楽ですねぇ」


「そうだね……」


 依頼は採取系、討伐系と色々受けていたんだけど、討伐はアカが採取は分身したクロが凄い勢いでこなしていくため、僕とミアに出番がない。


「テツ君は将来、何がしたいですか?」


「急にどうしたの?」


「いえ、正式に妻になったんですから家庭の事はちゃんと考えなきゃって思っちゃって」


 あー。まあ何にせよお金はないと生活していけないから何かしないといけないか。


「将来、将来ね……。冒険者は強くなるため、死なないため、守りたいためにやってるからねぇ。今は特に思いつかないかなぁ」


「鍛冶はどうなんですか?」


「鍛冶も結局は冒険者をやってる理由と同じだからね。まあ、けど安心してよ。仕事はちゃんとするからさ。ミアは何がしたい?」


「私は主婦ですかねぇ。私が出来る事は家事くらいですし。あ、でもクロがいるから家事は必要ないかもですね。それだったらお裁縫とかしてたいです」


「裁縫か。ぬいぐるみとか沢山作ってたみたいだし、いいんじゃない?」


「ですね。また今度テツ君は私の部屋に遊びに来て下さいね。あれからまたぬいぐるみ増やしたんですよ!」


 ぬいぐるみ地獄だったはずなのに、まだ増えたのか。まあ暗闇に容量はないし、幾らでも入るからいいんだけど。


「どれくらいで、みんなを帰すことが出来るかな……」


「四天王のうちの2人はもう倒しちゃったんですから後もう少しですよ!」


「うん、そうだね。魔族といえば、ミアの家族の仇もしっかり取らないとね」


「です。私も強くなりましたから!必ず倒します!」


『あなたは魔族と戦う事になるわ。それもかなり強い。結果的に倒す事が出来るけど、その時に大切な人が死んでしまうようね。仲間を増やし、武器を作りなさい。強力な武器を。あなたの行動次第で仲間になる人数が変わっていく。人数が少ない場合、今の占い通りになってしまうわ』


 あの占い師が言っていた言葉。まだその魔族とは出会っていないらしい。僕はきちんと仲間を集めて武器を調達出来ているだろうか。


 クロやアカ、隼人達にリンまでいるけれど、安心出来ない。大切な人、ミアが死んでしまう可能性がある。今みたいに笑って未来の話をする事が出来なくなってしまう可能性がある。それだけは、絶対に阻止しないといけない。


「テツ君、そんなに気負わなくて大丈夫ですよ。私は死にません。テツ君が守ってくれますから」


「うん……そうだね。うん」


「テツ君が危なくなったら私が助けます。クロやアカ、他の皆さんだって助けてくれます。大丈夫です。テツ君にはみんながついてます」


「うん」


「私は沢山子供が欲しいです。それでいつか、故郷にいた時のような幸せな生活をしたいです。私は今、幸せですよ。これからも幸せになっていくんです。不幸な事なんて、起こりませんし、起こしません。絶対です!」


「そうだね。よし、それじゃあ頑張ろうか!……子供に関してはまた今度で」


「はい!私はいつでもいいですよ?」


「とりあえず色々片付かないとダメだからね」


「はーい」


 さて、依頼だ依頼。頑張って稼がないとね!

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