第93話 契約の理由
「マスター、日付が変わりました。もう影響は出ないと思われます」
魔法式の解析を行っていたら、クロが声をかけてきた。だいぶ集中していたようで身体が痛い。
「んっ、ふぅ。そう?じゃあちょっと村長のところ行ってくるよ」
「私も同行します」
ということでクロと一緒に村長のところまで来た。もう酔いの影響は出ていないようで、村の住民全員で片付けやらをしている。
「すみません。ちょっと伺いたい事があるんですけど」
「あぁ、はい。何でしょう?」
「いや、昨日この村に来たんですけどね、この村全体が酔っ払ってたみたいで。原因とか探っちゃってたら契約書まで辿り着いちゃいまして。どうしてこんな事をしてるのかって聞きたくて」
「あぁ、それはすみませんねぇ……。それは驚いたでしょうねぇ。まぁ理由としては、休み、ですかねぇ」
「休み、ですか?」
「えぇ。儂ら村人には基本的に休みなんて無いんですわ。村を維持するにも働かなきゃならないですから。そんな状態が続けば誰もが嫌になってくるもんです。ですから年に1度でもいいから無理矢理休みを作ってしまおうって訳ですよ」
あぁ。なるほど。
「それじゃあ、驚かすっていうのは?休みとは関係ないですよね?」
「あぁ、それはまあ、楽しみってやつですよ」
「楽しみ?」
「えぇ。さっきも言いましたがやっぱりずっと働いてますからな。娯楽ってものが無いんですよ。休みがあったとしても、どうしても心は荒んでいきますからな。それを癒すためのものですわ」
へ、へぇ。よく考えて契約したんだなぁ……。そんな事全然思わなかった……。
「それだけですかな?」
「あ、はい。ありがとうございます」
「いやいや、儂らも何も説明せんで巻き込んでしもうたからのぉ。別にええんよ」
「あの、どうせなら村の入り口とかに立て看板みたいなの立てて書いておいたらどうです?」
「あぁ、そんな意見もあったんですがねぇ。やっても読まない輩が多いんですわ。だったら置かなくてもってなってしまったんですよ」
「なるほど……。ありがとうございました」
「ええよ。若いもんと話したのは久しぶりだったからのぉ。だいぶ口が回っておった」
今まで街にしか行った事なかったけど、村には村のやり方とかがあるんだなぁ。
「マスター、どうします?この村に一度留まるかすぐに旅に戻るか」
「それはまあみんなの意見を聞いてだね」
暗闇に戻ってみんなに村長と話した事を伝え、この村に留まるかどうか聞いた所、すぐに出る事に決まった。
どうも、また何か起きて足止めをくうのは嫌らしい。ゆっくり行こうって言ってたのに。
「というわけで、僕達は失礼しますね。また機会がありましたら寄らせていただきます」
「そうかい。ぜひ来てくださいな。迷惑かけた分、それなりの対応はさせていただきますからな」
「分かりました。ありがとうございます」
さて、どうもみんな『雷纒』ですぐに移動するみたいだ。どうしたんだろう?
「みんな、どうしてそんな急いでるの?」
「ん?ああ、この道をもっと行くと町があるらしいんだけどさ、そこで競売やるらしいんだよ。開催日が近いらしいから早くしないとな」
へぇ。競売か。色々な物が出品とかされるんだよね。なら、そこに『十字架に悪魔と鎌』のマークが付いてるやつもある可能性はあるね。
(金は大丈夫なのか?)
う……。も、もしその競売が一般も出品オッケーなら僕が色々作って出品すれば多分、大丈夫、なはず。
(しっかりしてくれよ……)
しょうがないじゃん……。お金はどうしたって消えていくんだから……。
「にしても、みんなよくそんな情報手に入れたね」
「ああ、これはクロさんが教えてくれたんだ」
「なるほどね……」
クロならもうどこにいても驚かないよ……。クラスメイト集めてくるほどだもん。
「マスターの立ち寄る場所ですから下見は大事です」
下見の割には今回の村では酔ってたけどね……。
「マスター、あれは不覚をとっただけです。以後はありません」
なら、いいんだけどねぇ。
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