第82話 クラスメイトが来た

「……なあ、これどういう事だ?」


「どういう事、と申されましてもマスターが魔物狩りを望んだからでは?」


「いや、そうなんだけどよ、こう、何で付いてきたクロ達は傍観してんだ?」


 現在多種多様の魔物が俺を中心に集まっており、クロ、アカ、リンは遠くからこちらを眺めているだけだった。


「……元々修行が目的。私達も後でやる」


「ご主人!頑張るです!」


 いや、まあ別に大して強い奴もいないから普通にやってて勝てるんだけどさ。


「効率悪くね?」


「魔物を釣って来て、他の人を狙われないように幻をかける。一度に複数やるにしても必要人数が足りませんよ、マスター」


 魔物を釣るにはある程度の速度がいる。幻はリンにしか無理。確かに足りないな。


「む……。じゃあこういうのはどうだ」


 魔物を全て処理し終えた後、『土魔法』で人形を作る。造形は特に気にしない。


「こうやって人形を作りまくって倒すのはどうだ?これならみんなでゴーレムを用意して始めれば一気に出来るだろ?」


「マスター、それでは魔物への対処などが学べません。ただの人形だけでは修行になりません」


 そうか。もう少しいい方法があるかもしれないと思ったんだがな。


「マスター、一度戻りましょう。どうやら同郷の方が数人来たようです」


(そういうことらしいから変わってもいいかな?)


 いや、ちょっと面白そうだからこのままでお願いする。別に危害を加えるつもりもないし、いいだろ?


(まあ、別にいいけど……。バレるような事はしないでよ?)


 分かってる。バレたら少し厄介だからな。





「おう、神代!」


「長康に他のみんなまで。一体どうしたんだ?」


 俺たちがダンジョンから戻って来た時には既に神代達と接触していた。合計人数9名。騎士団の鎧を付けた奴がいるから場所が分かっていた9人だな。


「どうしたって、お前が呼んだんだろ?」


「俺が呼んだ?いや、俺は特に何も言ってないんだが……」


 おい、名前使ったなら話くらい通しておけよ。


(う……すみません)


「悪い!呼んだのは俺なんだ」


(口調だいぶ違うんだけど……)


 大丈夫だって。平気平気。


「お前は……鉄条か?」


「ああ。呼んだのはそろそろみんなで連絡の一つでも取れるようにした方がいいんじゃないかと思ってな。その為の魔法道具を開発してるからなんだよ」


(僕、最初に設計しただけでその後宗介に投げっぱなしだけどね。というより、僕クラスメイトを基本覚えてないみたい。誰だっけこの人)


 出来ないんだからしょうがないだろ。同郷くらいは覚えとけよ。


「連絡が取れるのか!?本当か!?」


「お、おう。宗介が今頑張ってるよ。もうすぐ試作品も完成らしい」


 そんな詰め寄って来るな。暑苦しい。9人全員がそんな来たら押し潰されるだろ。


「理由は分かったが、何で神代の名前を使って呼び出したんだ?肝心の神代も何も聞いてないみたいだが」


「そうだ。俺もそれが聞きたかった。どうしてだ?」


「いや、俺の名前より神代の名前の方がみんな集まるだろ?」


「いや、多分鉄条の名前の方が集まったんじゃねぇか?」


「俺もそう思う」


(え?なんで?僕そこまでクラスメイトに何かしたっけ?)


「俺たちの目的に一番貢献してるのが鉄条だからな。風の噂で色々聞いてるぜ?魔族を倒したりしたそうじゃないか」


「あ、ああ。まあ」


 すげぇ。ギルドなんて基本個人情報は洩らさないから本当に噂で聞いたんだろうが……まさか脚色されずに伝わっているとは。


「なんかメイドさん?みたいな人がそんな事を話してるのを聞いてな」


「クロ、そんな事してたのか?」


「少し遠出した際にマスターの事を広めただけです」


 なんてこったい。っていう事は俺の実力をある程度理解してるって事だよな?


(まあ、多分そうなるね。クロのことだから吸血鬼って特定されるような事は言わなかっただろうけど)


「そうそう、あんたみたいなメイドさんだったな」


「その節はどうも。私はクロと申します。マスターである零様に仕えております」


「あんただったんだな。ありがとよ。あんたのおかげでどうやら1番乗りらしいからな」


 1番乗りとか競争でもしてるのか?それだと遠い奴は可哀想だな。


「鉄条、お願いがある」


「なんだ?」


「俺たちと手合わせしてくれないか?」


「手合わせ?なんで急に」


「実際に魔族と戦ったのはまだ鉄条だけだ。しかも鉄条は魔族を倒してる。どのくらいの強さにならないといけないのか、知りたいんだ」


(強敵とまだ戦った事がないんだろうね)


 まあ冒険者だと基本安全第一、騎士団なら基礎から始めるだろうからな。


「別にいいけど、1対なんでやる?」


「え?1対1じゃなくていいのか?」


「いや、俺も修行中だしな。なるべく人数が多い方が練習になるんだ」


「じゃ、じゃあ1対9でも大丈夫なのか?」


「うーん、ま、大丈夫じゃないか?」


「俺も混ぜて欲しいから1対10だな」


 神代も混ざるのか。まあ、いいか。


「そんじゃ、移動して早速始めようぜ」

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