第79話 月の力をマスターしよう
それから数日。銃を完成させた宗介は通信用魔法道具の開発に、他のみんなは街の復興に、僕とミア、クロ、アカ、リンは修行に精を出していた。
そしてようやく、月の力を使った修行が始められる時が来た。
「……まずは、体内に留まってる力をコントロール出来るようになること」
「魔力を操るみたいに?」
「……そう。それが出来ないと何にも出来なくて漏れ出ていくだけだから」
なるほど。でも操るっていってもパパッと出来るような事じゃないよね。魔力の方はこっちの世界に来て何となく使い方が分かった感じがあったから使えるけど。とりあえず魔力と同じようにやってみよう。
「ん……くっ…難しいな、これ……」
魔力と同じようにやってみても魔力しか操れない。魔力とは違う感じなのかな。
「リンはどんな感じでやってるの?」
「……わかんない。その、私は生まれた時から出来てたから」
「さいですか……」
さて困ったなぁ。自力でどうにかやり方を見つけないといけないのか。身体の中に流れてる血、魔力、月の力、この3つの扱いの違いから考えてみようか。
血は身体の一部みたいに自由に動かせるんだよね。身体よりも自由か。
魔力は血と同じで身体中に流れてるけど、血みたいに自由にとはいかない。
月の力はまだ感じる事が出来るだけっと。
簡単に考えるとこんな感じ?血の操作の仕方と魔力の操作の仕方に特に違いはないと思うし……。
「あ、そっか。スキル使ってやってるから同じなのか」
血には『血液操作』が、魔力には『魔力操作』がある。月の力に操作スキルはない。だから違う感じになるのか。
「あれ、でもそうすると『血液操作』は最初からあったから出来てる訳だけど、魔力の方はどうなんだ……?」
えーっと、まず最初に魔力を使ったのっていつだっけ?ガルルを狩った時だ。『土魔法』が使えるようになってて、あの時は吸血鬼の方が表に出てたんだっけ。その感覚があったから普通に魔力が使えたんだ。そうだそうだ。
って事は、吸血鬼に頼めば出来るんじゃ?おーい、吸血鬼。月の力取得に協力してくれない?
(別にいいけどよ、最近行動出来てねぇから暇を持て余してんだ。クロとやってもいいか?)
まあ、月の力を扱えるようになるなら……。あと、クロに了承は取ってね。
(分かってるよ。そんくらい)
なら大丈夫かな。うん、変わろうか。
「あぁ、久しぶりに動ける」
最近はずっと抱き着かれてて行動出来なかったからな。今日は目一杯行動してやる。
「……変わったの?」
「おう、こっちでは久しぶりだな」
リンに会ったのは俺の方が最初だからな。気付くか。
「マスターの吸血鬼バージョンですか」
「おう。今回はあっちが頼んで来たんで変わってやった。えっと、何だったっけか、月の力の扱いだよな」
「……ん、そう」
「マスターだとなかなか難しいようでした」
まあ、あっちは半分吸血鬼っていっても人間の方が強いからな。
「ん、まあ、こんなもんだろ」
コウモリとオオカミが横に出現する。どちらも1匹ずつだ。
「……もしかして、もう使えるように?」
「ああ。あっちの僕の方は人間味が強い。んで、俺の方は吸血鬼が強いって訳だ。だから、吸血鬼としての月の力ってやつ?は俺の方がやりやすい」
「吸血鬼系統のものは吸血鬼のマスターの方が効果が高い、効果を発揮する、ということですか?」
「そう思ってくれていい。血とかの扱いもあっちより上手いし、『自己再生』での再生力も俺の方が高いはずだ」
(僕そんなの知らなかったんだけど)
てっきり気付いてるとばかり思ってたんだが……。まあ、そういう事だ。
「それで、マスター。そのコウモリとオオカミは何が出来るのですか?」
「こいつらか?コウモリの方は『隠蔽』と『吸血』専門で、オオカミの方は戦闘専門だな」
「その2匹、自律的に動く事は可能ですか?」
「ああ。じゃないと意味無いだろ?」
こいつらは眷属みたいなもんだ。けど、そこまで強い訳じゃないが。
「……あなたの力は眷属召喚、でいい?」
「ま、それだろう。そこまで強くないみたいだけどな」
「……手数が増えるのは貴重。月の力はもう大丈夫?」
「俺は大丈夫だが、あっちはどうだろうな」
(何となくの感覚は分かったような気もするから練習するよ)
「練習するから大丈夫だとよ」
「……そう。なら私が教えられる事はもう無い。完璧に制御出来るようになれば膜も要らなくなるから」
「この血の膜か。まあ、まだ付けとくかね。よっし、クロ、修行だ修行」
「手合わせですね、了解しました」
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