第78話 様々な鉱石

 緑光石の他にも色々出来ないかと、色々な物に『錬金術』を試していたら面白いものが出来た。


「紅竜石?」


 竜の鱗に『錬金術』を使用したらそんな物が出来た。


「紅竜石ですか。マスター、それはとても珍しい鉱石です」


 クロが紅竜石について説明してくれた。どうやらこの鉱石は竜の体内で生成される鉱石のようだ。しかも、年老いた竜の体内からじゃないと排出されることはなく、かなりの希少価値を誇るという。


「マスターは簡単に倒したようですし、従えましたが、竜というのは本来脅威の対象となる魔物です」


 その竜の老体しか排出しない鉱石かぁ。


「どんな特徴があるの?」


「これは元が火を操る竜だったため、火の親和性が高いですね。剣などにして、『火魔法』の魔法式を組み込めば魔剣として扱う事が可能かと」


 ほう。つまりその剣に魔力を込めるだけで『火魔法』のスキルを持っていない人でも『火魔法』を扱えるというわけだ。しかも剣だから近接戦闘も出来る。


「魔剣、いいかもね。作ってみようかな」


 出来れば数を揃えてみんなに渡したい。生存率に関わるだろうからね。


「あっ、今度は氷石なんてのも出来た」


「そちらは氷に親和性が高いものですね。火などに近づけると溶けるため鍛治には向きませんが」


 むむ、じゃあ紅竜石と同じく魔剣に、ってのは出来ないのか。


「ただし、こちらは低温で形を変える事が出来るため、極寒の中でなら剣などの形にする事が出来るでしょう」


 無理、無理無理無理。寒いのなんてやだよ。暑いのもやだけど。


「こっちは保留かな……。っと、これは普通の鉄かぁ」


 前の二つのように特別な鉱石が出来る時もあれば、鉄のような普通の鉱石が出来る場合もある。しかし、この素材を使えばこの鉱石になる、というものは決まっているため、1回特別な鉱石が出来れば、その素材は全て同じ鉱石に出来る。


「でも、これ種類多すぎだなぁ。ちょっとメモしよう」


 試すにしてもその素材の量が多すぎる。自分が暗闇に入れておいたものから、クロの暗闇に入っていた物、みんなが何処かから集めてきたものもあり、凄いことになっている。


「マスター、心配ありません。私の方で全て把握しています」


「ありがとう。あ、そうだ。アカ、ミア、ちょっと」


「ご主人!なんです!」


「なんですか?」


「血を貰えない?血も『錬金術』で使えるんじゃないかなって思ったんだけど」


「いいですよ。テツ君の頼みですから。はいどうぞ」


 そう言って、ミアは懐から小瓶を取り出した。中には紅い液体が入っている。


「えっと、なんで既に用意されてるの?」


「え?いつ言われてもいいようにと思って用意していたからですよ?」


 僕、そんな血を求めてると思われてたかな?確かにスキル増えたりするから求めてるっちゃ求めてるけどさ。


「まあいいや。うん。アカの方は流石に無いはずだから、はい、これ使って」


 アカに針を渡す。他のみんなもいるから普通の針だ。


「はいです!」


 アカが針を受け取り、指先にぷすっと刺そうとする。そして、ピキッという音を立て、針が折れた。


「はい?」


 ちょっと理解出来ない。なんで針折れたの?


「あ、ご主人!硬さが足りないです!」


「硬さが足りない?」


「です!私、『人化』しても皮膚硬いみたいです!鱗のせいです!鱗切れるくらいの硬さがないと傷付けれないです!」


 皮膚が鱗みたいなものと。そう言ったか。つまり常に鎧着てるのと同じみたいなものじゃん!


「流石に鱗を突き破れるような針は持ってないよ……」


「マスター、刀を借りればいいかと。あの刀なら鱗は豆腐のようにスパッといけます」


 そっか。今はちょうどリンもいるし、望月か朔月のどっちか借りて来よう。


「リン、ちょっと刀どっちか貸してくれない?」


「……いいけど、何するの?」


「アカの血が欲しくて。普通の針だと折れちゃったから」


「……ん、わかった」


 リンが腰に差していた朔月の方を貸してくれる。


「ありがと。アカ、これでお願い」


「分かったのです!」


 指にスゥッと刃を走らせると、ちゃんと切れたようで血が出てくる。


「ありがとう」


 礼を言いながら、『回復魔法』で指を治し、ミアの血とアカの血にそれぞれ『錬金術』を使用してみた。


「これは……?」


「……すみません、マスター。私の知識にもありません。そして『鑑定の魔眼』でも分かりません」


 謎の鉱石が二つ、作り出された。


「マスター、万が一があるため、触れないでください。私が保管しますが、よろしいですか?」


「うん、わかった。どうにか調べておいて」


「了解しました」


 クロが触れずに暗闇の中に収納していく。


「えっと、私達の血を使った鉱石って何か問題があったんですか?」


「いや、分からなかったんだ。だから安全を考えてクロが持っとくって。どんなものか分かれば使えるから大丈夫だよ」


「そうですか。あ、クロ、今外は何時くらいですか?」


「もうすぐ陽が沈む時間のようです、奥様」


「本当ですか!?夕食の準備をしないと!」


 ミアが慌てて暗闇から出て行く。それに合わせてみんなも解散となった。

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