第80話 スキルを使いこなそう
「……そこまで」
「強すぎないか?」
「マスターと同スペックなので、マスターも同じ事は出来ますよ?」
リンのストップがかかったので戦闘を止める。完全に圧倒された。歯が立たなかった。クロ強すぎ。
「同じ事ねぇ……」
「マスターはスキルを多く手にしているのに、1度に使う種類が少ないのです。スキル同士を掛け合わせる事でより効果を発揮する、そんな事もあります」
「あー、『雷纒(大)』と『雷歩』みたいな感じか」
「そうですね。風魔法も合わせての移動速度上昇は良いと思います。ですが、私も同じ事が出来ますので、結局の所速さは変わりません」
「んで、他のスキルを上手く使えてるのはクロの方だからクロのが強いと」
「はい。ですが、マスターは今回、銃を使用致しませんでした。銃を使えば互角か少し上にはなっていたでしょう」
なるほどなぁ。だがそれでも互角くらいなのか。
「……俺がこれから強くなるにはどうしたらいい?」
「まずは今手にしているスキルを使いこなす事ですね。使える手数が増えればその分戦術が増えますから」
増えまくったスキルを全部自分のものにしないといけないか。
「その後は『吸血』でスキルをさらに増やし、あらゆる状況に対応出来るようにする事ですね」
「ん、了解。それじゃ、今からでもスキルをものにしていきますか」
まずやるべきは『分裂』だな。これはクロも使ってる所を見た事がないから何が起こるのか全く分からん。
「『分裂』」
発動してみた瞬間、身体が二つに割れた。痛みなどはない。そしてどんどん身体が縮んでいき、ある程度まで下がると固定され、割れた方の身体が生えてきた。
「「なんだこりゃ」」
普通に喋ったら隣の俺と声が重なった。もう一人の俺の方を見ようと左を向けば、その俺も左を向いている。上を向いて横目で見てみれば隣も上を向いている。手を前に出せば、隣も手を前に出す。
「「同じ事しかしないのか」」
声が重なる。いちいちうざったいなこれ。
「基本スライム系の魔物しか持たないスキルのため、効果が分かりませんでしたが、これは面白いですね」
「「あまり面白くないぞ」」
「マスター、それで分身の術をしたら面白そうではありませんか?」
ふむ。それはまあ面白そうだな。分身にはそれぞれの意思があるし、どうなるか見てみたい。
「「分身」」
出現位置は目の前にした。分身が二人出てくる。その分身が二人とも同じ動きをしてこちらを向く。
「「こりゃダメだ」」
分身にも『分裂』の影響は出ているらしく、分身二人が声を重ねていた。俺と隣の俺、分身と分身がシンクロしているようで、4人同じ動きというわけではないみたいなのが救いか。
「「『分裂』スキルはダメだな……。流石に戦闘では使えないだろ」」
「「うんうん」」
「同じ動きはダメですね。それにマスターの背丈も縮んでいますから小さく素早くならいいとしても、火力が下がります」
『分裂』スキルダメダメだな。
「……見てる分には面白い」
「「やってる本人からしたら面白くないけどな」」
「「自分の声が重なって聞こえるのはちょっとな……」」
もういいわ。解除だ解除。分身も消えていい。
「ふぅ。やっと気持ち悪くなくなったな」
「面白くはありましたよ」
「なら、クロやってみるか?」
「遠慮しておきますね」
だよな。こんなの好き好んでやる奴なんかいないわ。
「『分裂』スキルはクソだったとして、他に使えてないスキルってなんだ?」
「『糸』『浮遊』『忍者』あたりじゃないでしょうか?『忍者』は分身くらいにしか使用していませんし」
「あー。だが『浮遊』ってどう使うよ?これ、浮くだけで動けないぞ?」
「自分以外に使用してみてはいかがでしょうか?」
対象を自分以外にするのか。んじゃあ短剣に使ってみよう。
「お、浮いたな」
「浮きましたね」
「……でもそれだけ」
……だって浮かせるスキルだし。別に短剣空中で操るなら血を付けて『血液操作』で出来るし……。
「では、アカ」
「なんです?」
クロの暗闇の中からアカが出てくる。結局、『人化』してもアカは暗闇の中にいる。なんか人の姿もいいがやはり竜の姿の方が好きらしい。
「マスター、アカに『浮遊』をしてみてください」
「おう」
アカに『浮遊』を使用すると、アカが浮いた。じたばたと手足を動かしているが、移動せず、何も出来ないようだ。
「このように対象を相手にすれば行動を阻害出来ます」
「ああ、なるほどな。でもさ」
アカが光を放ち、人から竜に姿を変える。
「翼持ってる奴には使えないな」
『浮遊』の効果は出ている。だが、アカは自由に空を飛び回っている。
「まあ、浮かせるだけですからね」
「……飛行型には役立たない」
スキルを使いこなすのはなかなか難しいな。
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