第74話 何をするべきか

「にしても通信用、しかもクラスメイト分だとすると40人……いや、39人分か。流石に材料が足らないぞ」


「うん、そこは分かってるよ。それにまず、試作品を作ってからだから材料に関してはまた後で集める事になるよ」


「おう。そんじゃ、仕分けも終わったからちゃっちゃと作ってくな」


 宗介がパーツの一つ一つを丁寧に仕上げていく。その間、僕達に手伝える事はない。手伝える事がないなら頭を使って時間を潰しておこうかな。


「王女様、召喚された人、僕達クラスメイトに一回でいいので連絡出来る手段とかってありますか?」


「一応、国が本当に危機に陥った際に招集されていただく用の招集印を召喚時に施させて頂いてます。鉄条さんの事は信用していますから話したのですが、これは一応国家機密です。口外しないで下さい」


 うへぇ……。そんなものあったの……?身体中どこ探しても見つからないんだけど。


「それって一回使ったら消えたりとかする?」


「はい。一回限りです。流石に何度もというのは無理ですから」


 じゃあここでは使えないか……。これは国にとっての保険というやつだ。それに使わせるとしたらそれ以上のメリットを示さないといけないだろう。その場合は想定だと最悪に近い状況が僕達を襲う可能性がある為にどう考えても使用には踏み切れない。


「闇雲に探すのは得策じゃないし……。集中してる所悪いんだけど、宗介、王都にはどれくらい残ってた?」


「そうだなぁ……騎士団に所属したのが5人、後はみんな冒険者だぁ。俺達がこっちに出てくる前に4人組のパーティーはいたはずだぁ。そいつらが離れてなけりゃぁ騎士団5人、その4人、俺ら5人、零含めた6人の計20人は現在地が分かってる状態かぁ?」


 半分も分かってるのか。けど、その4人が移動しないとも限らないから、抑えておきたいなぁ。


「ありがと。作業に戻ってていいよ。とりあえず、その4人を何とか王都に留まらせておきたい所だね。どっか行かれると把握に時間かかるし」


「そうですね。通信用魔法道具を作る件を父様に話していいのなら、私から父様経由でその方達を引き止める事は可能ですよ?きっとその方達も通信用の魔法道具の価値は分かっているでしょうから」


 ふむ……。それはいいかもしれないなぁ。


「それ頼んでこっちに何か要求とかして来ないよね?」


「流石にそこまで酷い事はしません。鉄条さん達を呼んだのは元々は私達です。その皆さんの安全に少しでも関わる事ならこちらもしっかりと対応しますよ」


 あぁ、それならよかったよ。


「なら、お願いするね。あ、引き止めの名義としては神代君か美智永さんの名前を出すように国王様に言っておいて。そっちの方が信頼は高いはずだから」


「神代様に美智永さんですね、分かりました」


 早速通信用の魔法道具で国王に連絡を取り始めたようだ。暗闇の中だからちゃんと動くのか?と思っていたが、無事起動したみたいだ。


「後は設計図、素材か」


 流石に同じように水晶を使う訳にはいかない。高いし、面倒だし、僕達からしたら通信用魔法道具は持っとコンパクトであるべきだ。携帯のように。


「携帯か……。うん、そっちの方面からアプローチしてみるか」


 ペンと紙を出して、設計図を何となくで描いていく。外装、つまりガワならただこんなものがいいなと思う物を描けばいいんだが、中身が問題だな、これ。


「王女様、ここの回路ってこうするとどうなるか分かります?」


「そうしてしまうと他のと繋がらなくなってしまい、2箇所から魔力を込めなくてはいけないようになってしまいます」


「あー、本当だ。ありがとうございます」


 ふむ。ならこっちの方では少し変えて……これなら一応通るか。


「マスター、活動再開致しました」


「あ、クロ。いったい何してたの?」


「少々分身で各方面を巡っておりました」


「へぇ」


 各方面って僕達が行った事ない所まで行ったのかな?


「その際、マスターと同郷と思われる方達を発見、接触し、マスターが通信用魔法道具を開発しようとしている旨を伝えておきました」


「ほんと!?」


「はい。本体が休眠中でも会話は全て分身体に伝わっております。マスターが皆に集まって欲しいという事は伝えてあり、現在地ポート、隼人様達がいる事などを説明、こちらに向かってくるそうです」


 ということは、全員ここに集まってくるってこと!?


「ありがとう、クロ!」


 ただまだ試作品も作ってないし、素材の決定等やらないといけないことは山ほどある。


「零、銃借りるぞ。こっちも新しいのに合わせて改良しておくから」


「あ、うん、ありがとう」


 僕のお願いもあるから、宗介一人じゃ手が回らない。ただ、どっかの誰かにこの話をするのはかなり面倒だ。


「報酬の件は復興してからにしたしなぁ……」


 ……ダンジョンで『錬成』のオーブ探してみるか?そんな都合良く見つかるとは思えないけど。


「クロ、ダンジョンにオーブとかってあるじゃん」


「はい。それが何か」


「それって取ったらそれでおしまい?新しいのとか出てきたりする?」


「出てきますね。あれらはダンジョンの魔力で自動的に生成されるようになっています。現在、あの魔法陣のせいでダンジョンには魔力が集まっています。修行目的で魔物はある程度は倒しましたが、それらも復活していることでしょう」


「危険かな?」


「一度下まで行けているマスターと、同等のスペックを持つ私ならば可能でしょうが、他の方の場合、2人もしくは3人で固まり1階層、2階層の捜索しか出来ないと判断します」


 1階層は直線だけだから実質2階層のみか。


「クロは分身幾ら出せる?」


「本体の活動に支障が出ないという条件であれば10体かと」


 10か……。やってみるか。


「宗介はそのまま作業をお願いしてていいかな?武器が終わったらその設計図一応見といて。かなり適当だから修正も勝手にしていいから」


「あいよ」


「ミアと王女様は協力頼めるかな?」


「もちろんです!」


「分かりました。何をお探しで?」


「オーブだ。どのくらいで見つけられるのかもわからないし、目当てのものが簡単に見つかるかもわからないけどね」


「いいでしょう」


 これで二人は確保。後は隼人達だけど。


「私が話を通しておきました。宗介以外のこの街の同郷全員ダンジョン探索に参加します」


 ありがたい。2階層は迷路だから人数はいた方がいいからね。


「ギルドには?」


「既に了承は得ています。兎も来るとのことです」


 リンも来てくれるか。


「それじゃあ、探しに行きますか!」


 ダンジョン探索開始だ。

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