第75話 オーブ探し
「隼人達には2階層を隈なく探して欲しい」
「いいぞ。鉄達はさらに下だろ?」
「うん。みんな、安全第一でお願いね」
それだけ言うと僕とクロ、リンだけ先行してダンジョンに入る。他のみんなはゆっくりだ。
「……最短距離で2階層突破。この3階層、どうするの?」
すぐに3階層まで辿り着いたが、3階層は密林。普通に探していたら全ての階層を調べるのは、時間がいくらあっても足りないだろうね。3人だけだったらだけど。
「クロ、支障が出ない数、最大出して」
「承知しました」
クロが分身を10体出す。僕も分身を3体出す。これで16人だ。7階層は探す必要がないため、3階層、4階層、5階層、6階層の4つ、16人なので、1つの階層に4人使える。
「僕本体とクロ本体、リンとクロの分身で6階層を調べる。他の階層は分身に調べさせよう」
「……ん、分かった」
分身にもスキルは使える。『鑑定の魔眼』があれば分身でも十分探せる。
「6階層までノンストップ。意見は?」
「……なし」
と言う事で、全速で6階層に辿り着く。吹雪で視界が悪い。
「クロ、分身体から何か報告あった?」
「いえ、御座いません」
「こっちもまだ無いからまだまだって事か。とりあえず、手分けして探す?」
「……それが早そう。入り口に目印を付けるから迷ったらそれを頼りに」
「了解。それじゃ行こうか」
全員がバラけて6階層内を探す。『鑑定の魔眼』で怪しそうな場所や不自然な場所を探すが、なかなか見つからない。
「魔眼使っても簡単に見つかる訳じゃ無いんだなぁ……」
そこまで簡単に出ると思っていた訳じゃないが、ちょっと頑張れば見つかるんじゃないかとは思っていた。だが、分身体からの発見の報告も未だ無し。少し甘く見過ぎていたかもしれない。
「確か、『鍛治』のオーブでも100金くらいするんだったっけ。そりゃ、簡単には見つからないか」
気を取り直して、辺りの捜索を開始する。たまに出てくる魔物も相手にしているが、雪などで出来た魔物が多く、血を持つ魔物がほぼいない。『吸血』が使えない魔物ばかりで正直、相手をするのが面倒になってくる。
「ん?」
進行方向に空間の揺らぎとも言うのか、ゆらゆらと揺れているものが見えた。『鑑定の魔眼』無しで見てみると、揺らぎは見えない。
「これは、当たりかな?」
慎重に罠が無いか確かめながら近づいていく。周囲に罠などは無く、空間の揺らぎに到着。試しにと触れてみると、全身が空間の揺らぎの中に入ってしまった。
「うわ……。なんだこれ」
そこは神秘的な空間だった。木々や色とりどりの花が咲き誇り、小川が流れ、日が差している。真っ直ぐ道が出来ており、その道を進んでいくと、石で出来た大きな台座があり、その上にオーブが一つ、置いてあった。
「こんな風に、置いてあるんだなぁ」
オーブを手に取る。その際に、このオーブに込められたスキルが頭の中に入り込んで来た。
「マジですか……。『空間魔法』ね……」
『空間魔法』それは僕がかなり欲しいと思っていた物だ。欲しかった、確かに欲しかったが。
「今は『錬成』の方が嬉しかったかなぁ……」
今回の目的は『錬成』のオーブを見つけて、通信用魔法道具作製をする事だ。
「とりあえず、成果だし持ち帰るけどさ」
暗闇の中にオーブをしまい、来た道を戻って空間の揺らぎを出る。
「うわぁ、あの光景の後にこの吹雪はちょっと……」
空間の揺らぎから出ればそこは6階層。当然吹雪が吹いているわけで。空間の揺らぎも、出てしまったからか無くなってしまい、先程の神秘的な空間はもう行けなくなっていた。
「……探そう」
一応オーブが見つかって嬉しかった筈なのに、吹雪のせいで一気にテンションが落ちた。
その後も探し回ったが見つからず、目印を辿って、6階層入り口に戻れば、既にリンとクロが待っていた。
「クロにリンも戻ってたんだ」
「オーブを見つけたので、一度戻る事にしたのです」
「……私も」
二人ともオーブを見つけていたのか。
「そのオーブの中身は!?」
「残念ながら、『家事』スキルでした」
『家事』なんてスキルあったんだ……。主婦には必須スキルだね、うん。
「……こっちは『回復魔法』」
『回復魔法』か。だいぶ当たりの方だと思う。
「マスターは如何でしたか?」
「僕の方も一つ見つけたよ。中身は『空間魔法』だった」
「……それは、凄い当たり」
「ですね。使用はされないので?」
「みんなのオーブ次第だからね。とりあえずは使わないで取っておくよ。とりあえず、戻ろうか」
「……了解」
分身体を回収しながら2階層まで戻り、隼人達と合流する。
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