第73話 通信用もお願いします

「それで、どんなのを作って欲しいんだ?」


 宗介が机に向かって紙を広げ、僕に聞いてくる。


「まず、今使ってるこれと同じ様な感じで扱える物かな。2丁拳銃にしたいから」


 今まで片手は銃でもう片手が短剣等の近接武器を持っていたが、魔族に対して短剣はあまり有効でないと思う。その為、2丁拳銃にしたい。


「なるほどなぁ。まあそれを作ってからこっちでも改良は進めてたからそれは可能だな。で、お次は?まず、って言うからには他にもあるんだろ?」


「次だけど、これとそのもう一つの銃より威力が強い銃を作って欲しい」


 普通の銃でも威力は相当な物だが魔族対策は万全にしておきたい。それに、かなり硬い魔物などが出たら今の銃じゃ太刀打ち出来ない可能性があるからだ。


「いいぜ。ならマグナムだな。とりあえず材料出してくれ。使えそうなやつ全部だ。そっから厳選していくから」


 全部ね。とりあえずぬいぐるみの邪魔にならないように出せるだけ出してみるか。


「うん、このくらいかな」


「……すげぇな。よくこんなに倒せたな」


 出したのはドラゴン丸々1体や、『吸血』用に取っておいたやつから素材だけを取り除いたやつなど。


「まあダンジョンに潜ってたしね。その時に出てきたのは大体入ってるかな」


「ダンジョンのか……。なんか俺にとって酷いネタバレになった気がするが、気にしないでおく……」


 めっちゃ気にしてるよね、それ!?でもダンジョンで出てきた魔物の方が使えそうなんだからしょうがないし、全部出せって言ったのは宗介だし……。


「はぁ、まあいいや。よし、やるか」


 宗介が素材を吟味して仕分けしていく。今の所4つくらいに分けられてるね。


「一番左のが銃弾だ。普通のとマグナム用で特に分ける事はしてない。次は2丁用の銃。その次がマグナム用の。最後に右のが今回使わないやつだな」


 今回使わないやつには3階層の虫系やら植物系の魔物が沢山だ。まあ、火に弱いし、しょうがないよね。


「あ、仕分け中に悪いんだけどさ、こう、携帯みたいな遠距離通信用の魔法道具って作れたりしないかな?」


「わかんねぇな。俺は銃に関しちゃ知識もあるし、色々試行錯誤したから作れるが、携帯は専門外、しかも遠距離通信用だろ?実物みたいなのがあればもしかしたら出来るかもしれねぇがなぁ……。もしあったとしたら量産して普及されてるんじゃねぇか?」


 だよねぇ……。あったとしたら少なくとも国王様なら持ってるはずで、王女を預かった際に連絡用とかで渡してくれるはずだよねぇ。って事はないのか……。


「遠距離通信、の魔法道具ですか?私、確か見たことありますけど」


 と、僕が諦めようとしていた所にミアが光をもたらしてくれた。


「ほんと!?それいつ!?何処で!?」


「テツ君、落ち着いてください!えっと、あれは確かお城だったと思います。そうです、テツ君が1人で魔族と戦った時です!」


 王都に、しかも城にある、だって!?


「確かあの時はメネアさんが持ってたはずです」


 よし、ちょっと王女連れてくる。




「というわけで連れて来ました」


「理由を聞かせてもらってもいいでしょうか?」


 無理矢理連れて来たからだいぶ怒ってらっしゃるようです。


「えっと、遠距離通信用の魔法道具を作りたくて、ミアが王女様なら持ってるっていうから」


「というかどうしてそんなホイホイ王女様を連れて来られたんだよって思ってるんだが」


 あ、宗介は知らないか。


「今王女様と一緒に行動してるからね」


 パスンッと音が鳴って宗介が僕に撃ってきた。痛みもないゴム弾みたいだったけど、いきなりなんなのさ。


「ハーレムか!?ハーレムなのか!?死んでくれ!」


「「「違います」」」


 僕と王女とミアの声が重なった。


「王女様が好きなの神代君だから。僕が好きなのミア。ミアが好きなの僕。おK?」


「そうです。私は神代様が好きなのです」


「ミアはテツ君が好きですが、他の人がテツ君の近くにいるのは許しません!ハーレムなんて反対です!一夫一妻が良いんです!」


 それぞれがそれぞれの主張を言う。それを聞いた宗介は、


「うん、とりあえずだが話はわかった。とりあえず零、爆発しろ」


 僕とミアの関係を聞いて爆発しろだなんて言ってきた。酷いもんだ。こっちは危険が沢山だから本当に爆発したらどうするつもりだ。


「……?クロは?こういう時話を面倒な方向に誘導してくるあのメイドはどうしたんだ?」


「あっ、クロなら少しやる事がって、言ってそこで休眠してますよ」


「やる事?なんだろ。まあいたら知識が役立つけど、その分変な方向にいきそうだし、いないならいいか」


「それで、遠距離通信用の魔法道具でしたか?私は所持していますが」


「見せてくれない?」


「それは構いませんが、作るのはなんのためですが?正当な理由が無い限りは許可出来ません」


 なんだ、理由か。それならちゃんとあるさ。


「クラスメイト、一緒に召喚された仲間全員と話すためだよ」


「なるほど。みんなの現状を把握したいって事かぁ」


「うん。王都にいた宗介なら知ってると思うけど、土井が死んだ。今の所他のみんなが死んだなんて報告は聞いてない。こんな言い方しちゃ悪いけどまだ1人だけで済んでる。今のうちに連絡手段を取って助け合えるようにしないといけないと思うんだ。みんな帰りたいと思ってるなら、協力した方がいいだろうからさ」


「なるほど。そういう理由があるんですか。それならいいです。お見せしますよ」


 王女が懐から水晶のような物を取り出した。


「これが、通信用の魔法道具です。私のこれは国王、つまり父様に繋がるので下手に魔力は込めないようにお願いします」


 王女から国王様への連絡手段はあったのかよ。それじゃあ、僕が報告しに行かなくても知ってたんじゃないの!?


「ほうほうほう。なるほどなぁ。おもしれぇ構造してるじゃないのぉ」


「これは……難しそうだね」


 かなり複雑な構造をした魔法道具のようだ。


「作れそう?」


「まあやってみよう。俺には『錬成』があるからなぁ!作ってみせるぜ!」


 頼もしそうでなによりだ。これさえ作れれば、誰かに危険が迫った時、助けに向かえるかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る