第62話 贈り物

 ふぅ……。出来たぞ!義手が!長かった!長かったよ……!といっても2日しかかかってないんだけどね。いや、普通の特に何もない義手だったら1日どころか半日くらいで出来たんだよ。ちゃんと動くし、実際の腕みたいになるやつが。でも、ねぇ。作ってみたらなんか気に入らなくてさ。色々と改良を加えていったわけですよ。そしたらこんなかかってしまったと。


「というわけで、はいこれどうぞ」


「リンから義手を作っているのではないかと言われてわかってはいたのですが〜」


 あ、やっぱりバレてたのか。ミアが笑顔で気付かれませんでした!って言ってたから本当か?って思ってたけど、バレてたじゃないか。


「どう付けるのですか〜?」


「あ、肩部分に少し触れるだけで勝手に付きますよ。魔力で接合されるようになってるんで。その分魔力を永続的に使われますけど、普通の人の回復力ならマイナスになったりする事は無いので、魔力欠乏が起きたりはしません」


「そうなのですか〜」


 アンシアさんは躊躇いなく義手を装着した。指を動かしたり、握ったり、振り回したりしている。


「感覚もちゃんとあって、細かい動きも出来るのですね〜」


「そこら辺は最低条件だと思ってましたからね。あ、痛覚だけはシャットアウトしてあるので。してないとちょっとした事で不便になったりするんで」


「そうですか〜。それはこの色々付いてる魔法式と関係が〜?」


「ええ、まあ。アンシアさんにはギルド長を引き続きしてもらいたいですし、その為のものですね」


「なるほど〜。後で試してみましょう〜」


「なら街の外でやった方がいいと思いますよ。大変な事になりますから」


「わかりました〜」


 さて、これで義手の方は済んだかな。あとは……。


「リンにはこれを」


 リン用の三日月をイメージしたペンダントを渡す。


「……これは?」


「『隠蔽』とその他色々を詰め込んだペンダントだよ。付けてれば自動的に発動するようにしてあるんだ」


「……ありがとう」


「どういたしまして」


「むぅぅ………」


 隣を見ればミアが思いっきり顔を膨らませていた。どうしたというんだいったい……。


「……嫉妬?」


「です!なんでミアには何もないんですか!?」


 リンが見事正解を引き当てたらしい。って言われてもなぁ……。


「ミアのはミアので用意はしてあるよ。でも、今は手元にないっていうか……」


「テツ君なら鞄に入れているはずです!ってあれ?鞄はどうしたんですか?」


「隼人に貸出中。だから今は本当に手元にないんだよ」


 何でも瓦礫を片付けたりと復興に色々役立っているそうなのでそのまま貸しているのだ。当然後で返してもらうけど。


「そうなんですか………。なら、今度でいいです……」


「というわけで、用事は全部済んだんですけど、何かやる事無いですかね?」


「今の所ないですね〜。瓦礫も魔法の鞄のおかげで撤去が楽になったと言っていましたし〜」


 自分で自分の仕事を減らしていく……。何て事をしたんだ……。


「そうですね〜。では、ダンジョンに行ってきてはどうでしょう〜?」


「ダンジョンにですか?みんなが復興作業をしているのに?」


「ダンジョン3階層の密林にある薬草類を取ってきて欲しいんですよ〜。怪我人への対応があまり出来ていないので、ポーション類を〜」


「なるほど。そういう事ですか。なら行ってきます」


 3階層ならすぐに辿り着くし。というか薬草類って確か少し取ってあったような。


「隼人に貸してる鞄の中に多分少しですけど薬草類入ってたはずです。それで出来る分は作っておいてください」


「わかりました〜」


 さて、行くか。






「はい、3階層です」


 1階層は直通、2階層は迷路だけどもう道は完璧に頭に入ってるから迷う事もなくすぐに抜ける事が出来る。


「よかったよ。元に戻ってて」


 前回は思いっきり焼き払っちゃったからね。元に戻ってなかったらどうしようかと……。


「あ、これだね」


 魔眼のおかげで何がどういう薬草なのかがわかって集めるのが楽だ。摘んでいったものは片っ端から暗闇に入れていく。


「っとと。魔物も復活してますよね」


 背後から狙ってきた針を避けつつ反撃して撃ち落とす。敵の正体はスナイプビーだ。


「一応回収しておこうかな。後で使うかもしれないし」


 その後も魔物の相手をしつつ薬草類を回収していく。


「うん、このくらいでいいかな、って、ん?」


 気配感知に反応ありだ。しかも4階層の方から。これはあの人達だね。合流しようかな。


「どうも、お疲れ様です」


 やはりリックさんとその仲間達だった。何故か一人、謎のメイド姿の女性をお姫様抱っこ状態で持っているけど。


「あ、君は。もう動いても大丈夫なのかい?」


「はい。それより、もう調査は終わったんですか?」


「ああ。もう帰る所だよ。調査結果は後でギルド長を交えて話そう」


「わかりました。ならここを通ってください。1階層に通じてるので」


 まだあの暗闇を解除していなかったので使えるワープ手段だ。


「えっと?入ればいいのかい?」


「はい。ほら、1階層ですよ」


「本当だ!凄いな!」


 というわけでダンジョンから帰ってきました。


「とりあえず、ギルド長に報告をしようか」


「ですね。となるとギルドはまだ建ててないから仮ギルドに行きますか」


「場所が分からないから案内してもらえるかな?」


「お安い御用ですよ」


 リックさんらを連れてギルドの仕事をしている建物を目指す。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る