第61話 寝ていた一週間

 あれから1日が経ち、ミアは動けるようになった。


「お世話しますからね。してほしい事があったら何でも言ってください!」


「それじゃあみんなの事手伝ってきてあげて」


「テツ君のお世話じゃない!?」


 だって今別にしてほしい事なんて無いですから。動けるようにしてくれる何かがあるのならやってほしいけども。


「わかりました……。それでは手伝ってきます……」


 がっくりとしながらミアが去っていった。度々戻ってきて何かする事はないかと聞いてきたが。




 もう1日経ち、普段なら動けるようになっているくらいだが、今回はまだ動けるようにはならなかった。


「やっぱり、動けないか」


「それほど、今回は無茶をしたって事なんだろ」


「そう言われると何も言い返せない……」


 だってしょうがなかったんだ。そうしないとこっちもやられそうだったんだし。


「まあ鉄は休んどけよ。働き過ぎだからな。俺らにも仕事をくれないと困っちまう」


「はいはい。でも動けるようになったら必ず働くからね」


「わかってるって。っと、そうだ。これ持ってきたぞ」


「ありがと」


 隼人に持ってきてもらったのは義手に使えないかと思っている材料だ。全部暗闇の中にしまう。そういえば暗闇の中にはアカ(竜のこと)がいるんだったなぁ。外に出してあげないと。


「それと何時までも怪我人を外で寝かせる訳にはいかないから、片付けた場所に簡易的な家を建てようとしたらしいんだが、どうも木材が足りてないらしい。燃えちまって使い物にならなくなったそうだ」


 木材かぁ。木材はないなぁ。森はアンヨドの方面だしダンジョンのは魔法陣の調査以外は何があるかわからないから入れないし。どうしたものか。


「あ、そうか。取ってきてもらえばいいじゃん」


 暗闇からアカを出してあげる。隼人は初めて見る竜に驚いた後に目を輝かせている。周りの起きていた怪我人達はザワザワしだす。


「鉄!これって竜だよな!?ドラゴンだよな!?」


「そうだよ。ダンジョン5階層のマグマ火山地帯にいたやつ。なんか懐かれちゃって」


「すっけぇ。初めて見た。触っても大丈夫だよな?」


「大丈夫じゃない?アカ、触られても抵抗しないで襲ったりしたらダメだからね」


『グォォ』


 素直に言う事を聞いてくれるアカ。うむうむ。いい子だな。


「で、いきなり竜なんて出してどうしたんだ?」


「木材足りてないんでしょ?取って来させようかと思って」


 あ、でもアカだけで行くと持っていく量に問題があるか。


「ついでで隼人も乗って付いていってよ。僕の鞄持ってっていいからさ」


「了解了解。そんじゃちょっくら行ってくるか……。まずは事情説明からだな」


 隼人がアカに乗って空へ旅立って行った。半日もせずに隼人とアカは帰ってきた。木材は大量に手に入れたらしい。




 それからさらに3日。腕は動くようになっていたが、足はまだ動かないでいた。流石に動けなさ過ぎではないかということで診てもらったが特に異常はないそうで、反動が強く出てるのだと思う。

 そして、レオンさんが冒険者と研究者を連れてきた。王都にいた凄腕らしい。


「俺の名前はリックだ。よろしく。レオンさんに聞いたんだが、一応確認のために。最下層である7階層にある魔法陣の調査が目的でいいか?」


「はい。5階層から6階層に行くためには山を一つ越えなければいけないので、飛んだりなどの徒歩以外の移動手段があるといいです。そして、6階層から7階層の階段はすみませんが自力でお願いします。あそこは視界が悪すぎて案内が難しいので」


「聞いてた通りだな。それで、最下層にあるダンジョンクリアボーナスだが、俺達が取れる場合は貰ってもいいのか?」


「構いません。僕が取らなかったのが悪いですし、今回は調査を優先させたいので。それに、その方が貴方達の意識も高くなるでしょう?」


「まあ確かにな。最後の確認だが、ボスはいないんだな?」


「確実にいない、とは断言出来ません。ですが、私ともう一人が辿り着いた時にはボスのような魔物は見当たりませんでした」


「ん、そうか。わかった。それでは行ってくるよ」


「お気をつけて」


 ふぅ。リックさん達のパーティーはどうやら4人のようだ。そこに学者さんが1人加わった5人で行くようだ。ランクも全員金と僕より高い。これなら安心して任せられるだろう。




 そこからさらに2日後ようやく動けるようになった。まさか1週間もかかるとは思わなかった。1週間も経てば瓦礫もある程度撤去され、建築も始まる。


「寝てただけで、ここまで進んじゃうなんてなぁ」


「国単位でならともかく街だけですからねぇ。この街にいた人は全員頑張っていますし、魔法を使えばそこまで難しい事も無いですから」


 ミアが僕の呟きを拾う。だよなぁ。魔法なんて便利なものがあるんだからそうなっちゃうよねぇ。


「僕が出来る事ってあるかな?」


「うーん、人手が足りないって場所は無さそうですよ」


 手伝える事が無いのか……。


「うぅむ……。なら魔法道具でも作ろうかなぁ」


「テツ君の魔法道具ですか!?今度はどんな物を作るんですか?」


「とりあえずは義手かなぁ。その後は役立ちそうな物でも」


「義手、ですか?もしかしてアンシアさんの?」


「うん。一応少しはお世話になった訳だし、片腕ないと不便だろうから」


 それにギルド長という立場も危うくなるかもしれないからね。繋がりはとっておきたい。


「ミアに出来る事は無いですか?」


「なら腕の太さと長さとか測ってきてくれないかな。僕が行くと色々問題が出そうだし」


「わかりました!あ、一応義手って事は秘密にしておきますね!」


「あー、うん。お願いね」


 多分、バレるんじゃないかなぁ……。アンシアさんが気付かなくてもどうせリンが気付くだろうから……。

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