第60話 魔法陣のこと
「で、今は僕達が戦ってから何日くらい経ってるのかな?」
「わかりませんねぇ。私もテツ君が起きる少し前に起きたばかりですし」
「あれから2日後だな」
僕達に答えをくれたのは隼人だった。
「隼人か。2日後ってそんなに経ってないんだね」
「ですね〜」
「こっちはこの2日間瓦礫撤去に行方不明者捜索と大変なんだがな」
なるほど。まだまだ復興には程遠い状態なのか。
「動けるようになったら僕達もすぐ手伝うよ。まあ僕は多分後2日は確実に動けないだろうけど」
「私はどうなんでしょうね。初めてなのでわかりません」
「二人はゆっくり安静にしてていいさ。ここからは俺たちが頑張る番だからな。あ、飯とかいるか?」
「あ、お願い。それと、レオンさんかアンシアさんを連れて来てほしいんだけど」
「あいよ。ミアさんは?」
「そうですねぇ。それじゃあお水でもお願いします」
「了解っと。じゃあな!」
隼人は駆け足で去っていく。もう少し現状の事を聞きたかったんだけど……。
「……暇、だなぁ」
「ですね〜」
綺麗な青空を眺めるだけしかする事がない。
「僕ら、元々はダンジョンでレベル上げに来たんだったよなぁ」
「そうでしたねぇ。色々あって、それどころじゃ無くなっちゃいましたけど」
「かなりの火災だったけどダンジョンは無事だったのかな?もしかして入り口が崩れてたりなんてしないよね?」
「大丈夫じゃないですか?ダンジョンなら壊れても直りますし。入り口でもダンジョンの一部なら、ですけど」
うーん、心配だなぁ。これから調べてもらわないといけないのに。
「おー元気そうじゃねぇか。ほれ、水と飯だ」
「テツジョウさん、この度はありがとうございました」
「……よかった」
現れたのはレオンさんとアンシアさん、それにリンだった。
「あー、飯は動けないんで食べさせてもらえると嬉しいです。あと急にお呼びして申し訳ありません」
「なに、あいつをやったのはお前だ。だからなんかあるんだろうと思っただけだ。気にするな」
「それで〜、用件はなんでしょうか〜?」
「今、ダンジョンに入る事は可能ですか?」
これはまず聞いておかなきゃならない。
「ダンジョン、ですか〜?一応入れますけど立ち入り禁止ですよ〜」
「そうですか。なら良かった。リン、あれについて報告した?」
「……すっかり忘れてた」
だろうなぁ。報告してたらダンジョンって言った時点でこっちの言いたいことを理解出来たはずだし。
「現在、ダンジョン最下層に謎の魔法陣が描かれています。魔法式が沢山ありましたので、研究者などを派遣して調査をお願いします」
これは言っておかないと。あの魔法陣にどんな効力があるのかわからない以上早く調べないと手遅れになるかもしれないんだから。
「了解した。俺が王都まで行って派遣しよう。腕利き冒険者も連れて来る。それでだ、最下層と言ったな。それは何階で、どうやっていくんだ?」
「最下層は7階です。5階層の火山マグマ地帯の一番大きな山の麓に6階層に行く階段があります。そこまで行くのに一つ、山を越えないと行けないので飛行などの移動手段が必要です。6階層は吹雪地帯。視界がかなり悪い。で、階段までの道のりなんだけど……リン、わかるよね?」
「……わかる。でも、冒険者を連れて来る場合、私は同行出来ない」
「へ?なんで?」
「……今、幻覚使えないから。兎だってバレる」
「幻覚使えないってどういう事?」
「……あの時、大人になって溜めてた月の力を全部使っちゃったから」
月の力ってなんだ?魔力みたいなものかな?後で聞くか。
「それじゃあどうしようか。僕は動けないし、リンも行けないんじゃあ6階層から7階層まで案内出来る人がいない」
どうしようか。僕のはあと最低でも2日はかかるはずだ。リンの月の力っていうのがどれくらいでどの程度溜まるのかもわからない。でも、月の力っていうくらいだし夜じゃないと溜まらないと思う。
「そこは冒険者に自力で見つけてもらおう。研究者も連れて行く都合上、護衛という事で人数が必要になる筈だからな」
「あ、そういえばダンジョンクリアボーナス的なのって貰えないんですか?剣とか鎧とか」
元々このダンジョンでレベル上げが目的だったけど、クリアボーナスの方も目的ではあったんだよね。
「ダンジョンの最下層に扉無かったか?その中にあるって話だが」
扉?扉ねぇ………。あ、魔法陣の所為であったけど中覗いてない……。
「そういえば、あった気がする……」
「あー、どうするか。仕様がわからないからどうなってるのかわからないが、依頼の時頼むか?」
「……今は魔法陣の調査の方が大切なのでいいですよ。取れそうならその依頼を受けた冒険者達のもので。一応実力で最下層まで行ってもらう訳ですし」
「了解した。それでは行ってくる。一旦アンヨドにも寄ってくるから、アンシアしばらく任せたぞ」
「元々ここは私のギルドがあった街ですから任せるも何もないのですが〜」
……確かに。何だかレオンさん、護衛やらアレウスの動き止めたりと、かなり働いてるけど、ここアンシアさんのギルドがある街だよね。……なんでそこまでしてるんだ?まあ平和とかそういうののためとかだったらわかるけど。
「あ、アンシアさんにも話があるんですけど」
「はい〜、報酬の件、ですよね〜」
察しがよくて助かります。
「そうです。で、報酬なんですけど、また後で、具体的にはこの街が復興したらって事でお願いします」
流石にこんな状況で貰うなんてあり得ないし、どうせ復興させて本来の目的を果たす迄はいるつもりだし。
「わかりました〜。出来るだけ良いものを集めておきますね〜」
ありがたいね。
「それじゃ、こちらの用件はもう終わりましたけど、そちらは何かあります?」
「そうですね。リンを助けていただきありがとうございました」
アンシアさんが頭を下げる。リンも揃って頭を下げてきた。
「別にいいですよ。そんな。だって元々は依頼だったわけですし、リンにもかなり助けられましたから」
アレウス戦では特にね。抑えてくれてなきゃ危なかったし。
「そうですか……。では、1日でも早く回復するのを待っていますので」
「はい。早く協力したいですから」
「それでは、また」
アンシアさんとリンは去っていった。そういえば、アンシアさん片腕欠損してたな……。義手って作れるかな?
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