第47話 首輪破壊
あれから数分。リンと戦い続けながら細工をした。時々ウサギ耳がピクピクと動くので気付かれたかと何回か思ったが、そんな事は無かったようだ。
「さて、準備完了だ」
「……もしかして、この魔力反応のこと?」
……バレていたらしい。ちゃんと隠蔽をかけていたんだが、まあしょうがないか。
「ああ。そうだ。これでいけるはずだ!」
土魔法を発動させ、リンの足を捕らえようとする。が、身のこなしの良さで回避される。しかし、ここからが俺の仕掛けた罠だ。リンが足をついた瞬間、地面がぬかるみ、足をとられる。急いで脱出を図っているようだが辺り一帯全ての地面がぬかるんでいる。
「これでお前の機動力は落ちた。その次だ」
ぬかるみで足をとっても腕は動く。なので、今度は腕だ。黒球を生成、長剣の相手をさせ、その隙に糸を腕ごと身体に巻きつける。血を纏わせてあるため切れる事は無いだろう。
「これで、お前は行動出来ない」
「……すごい。私と剣を打ち合ってる時にここまで用意してたなんて」
「そうでもないさ。負担をかけていいならもっと早くやる方法だってあるからな」
鑑定でリンが魔法を使えない事は分かっている。そのため選んだ方法が動きを封じるというものだ。こうしてしまえば攻撃手段が無くなるからな。
ちなみに負担をかける方法というのは最高出力の雷纒と雷歩で首輪にずっと斬りかかる方法だ。終わった後の反動を考えればこの策は使えない。
「んじゃあさっそく、取り掛かるとするか」
俺は風魔法で空気を足場にしながら首輪をいじる。どうやったら取れるかなどと考えながらやってみるが首輪は完全に1周しており、何処にも隙間のようなものは無かった。付けるためには何処かが開くようになっているはずなんだが………。
「……この首輪、外せないよ。付けた本人じゃないと。それ以外だと壊すしかないの」
なるほど。それじゃあ壊すか。
「少し熱かったり冷たかったりするかもしれないが我慢してくれよ」
「……わかった」
首輪に対して炎纒、氷魔法を交互に使っていく。熱して冷やす。歪みができて脆くなり、簡単に壊せるようになるわけだ。
「うんじゃらほいっと」
脆くなった部分を短剣で斬りつけ、首輪が割れ、外せるようになった。腕を縛ってあるため首輪を外してやる。
「ほらよ。これでもう大丈夫か?」
「……ん、大丈夫。敵意もなくなった。もう自分の意思で動ける」
そういう事なら解放するか。糸を解いてやり、ぬかるみから出してやる。
「よし。これでアンシアのとこまで連れてけば依頼達成だろ。案外長かったな」
時間にしてはそれほど経っていないが、忍者との戦闘もあり、長く感じた。
「……少しだけ、待ってほしい」
「ん?どした?」
リンが何やらあるようだ。
「……貴方の元へ敵が行っていた。あれ、全部倒した?」
「ああ、忍者のことか?それなら来たやつは全部倒したと思うぞ。その後に襲われてないし」
3階層ではかなりの数の忍者を倒したのだ。まだいるとしたらどんだけいるんだと思う。それと4階層、そしてこの5階層で襲ってこないのはおかしいしな。
「……なら、敵の親玉、倒しに行こう」
「あ、そうだったな。そういや忍者には主とかいうやつがいたんだっけか」
「……何か、怪しい儀式みたいな事もしてた。それも確認しないといけない」
「儀式ねぇ……。それで、居場所は何処だ?かなり距離あったりするか?」
「……距離は短い。次の次の層にいるから。そこがこのダンジョンの最下層だし」
全7階層って事か。初心者が挑むダンジョンだって言ってたし、短いのはそのせいかね。まあこの層の階段を見つけられてないから誰も辿り着けていないのだろうが。
「それで、この層から次の層へはどうやっていくんだ?リンは下から来たんだしわかるだろ?」
「……うん。あの山見える?あそこの麓に階段がある」
リンが指さしたのは火山の中でも一番大きな山だった。どうやら階段はそこの麓にあるらしい。しかし、麓なら誰かが見つけていそうな気もするが、どうしてだろうか。
「あの山、行くのに上からじゃないと無理。貴方みたいに空気を足場にするか、竜に運んでもらうしかない」
なるほど。そういう事だったのか。冒険者がそう都合良く俺みたいな魔法の使い方をしているとは限らないし、そもそも魔法を持っていないという事もある。竜に関しても倒すべき魔物であり、運んでもらうなんて考えは出てこないだろう。まず、あの山に階段があること自体を知らないのだからな。
「それじゃあ行くか」
俺が風魔法で行こうとしたら、背後からグォォと声がした。振り返ってみれば腹を見せていたあの竜がいた。だから一体なんなんだ、こいつは。
「……ん、この竜服従してる。言えばきっと運んでくれる」
服従ですか。あの腹を見せていたのは服従のポーズだったわけか。
「そんじゃ、まあ利用するか。おい、俺とリンをあそこまで連れてってくれ」
俺とリンが竜に跨り、目的地を言うと、グォォォと竜が鳴き、翼を広げ空高く飛び上がった。
「ははっ。自分で空気を足場にして歩くのとは全然違うなっ!」
「……あれは多分、地面を歩いてるのとあまり変わらないから」
そうだな、と笑いながら飛行を楽しむ。そして、あっという間に階段に到着した。
「お前はどうするか………」
階段は人が通れるサイズであり、巨体である竜が通れるような大きさはない。せっかく服従してくれているのにダンジョンに置いていくのも何だかな。
「そうだ。暗闇の中にいてもらうか」
暗闇の中に空間があったのはあっちの記憶でわかっている。あそこなら広い狭い大きい小さいが関係ない。
「俺たちはダンジョンの下に行く。お前はこんなかにいてくれ」
暗闇を大きく作り竜が通れるようにした。俺の言葉で竜は暗闇の中に入っていき、寝るように態勢を崩した。
「よし。んじゃ、6階層目行くか」
「……うん」
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