第48話 6階層
6階層は雪が積もっていて、吹雪が吹き荒れている。
「視界が悪いな……」
「……ん、だけど私、階段の場所わかるから大丈夫」
「そりゃあ頼もしいな」
今回の視界の悪さはどうしようもなさそうだからな。
「というか1層1層でダンジョンの特徴変わり過ぎじゃないか?1個上に火山があるのにその下が雪って」
「……こういう特徴を持ってるダンジョンが各大陸に1つはあるってアンシアは言ってた」
ギルド長が言うんならそうなんだろうなぁ……。
「……冒険者が環境に慣れる為じゃないかって言ってたよ」
軽い予習みたいなものか。
「それにしても、ここには魔物はいないのか?見かけないんだが」
「……ちゃんといる。スノーマンとか。けど、私が来る時にある程度殺しちゃったから今いないだけ」
「なるほど」
竜をあれだけ殺していたし、ここの魔物を倒していても不思議じゃないか。
「にしてもこの視界不良の中よく迷わずに行けるな」
「……私の耳で何処に階段があるか掴んでるから」
ウサ耳を見てみれば、ピクピクと僅かに動いているのがわかる。
「そういう種族特有のやつってなんかいいな。役立ちそうで」
「……私達より吸血鬼の力の方が何倍も役立つと思うよ。使い方次第だけど」
他人から見ればそう映るんだろうな。やっぱ。俺はこの世界に来た時に出来た人格で吸血鬼という役割を与えられただけなんだけどな。
「っていうか俺が吸血鬼ってなんで分かった?」
「……耳で感じとった。普通の人とは違ったからすぐに分かったよ」
これでもハーフ吸血鬼って事なんだが……。
「……ん、魔物来た」
俺にはまだ感知出来ていないが、ウサ耳が感知したらしい。
「……後ろ思いっきり!」
リンの言う通りに、後ろに力を乗せた蹴りを放つと、真後ろに雪の塊が出来ており、それを雷歩の雷で溶かした。溶かした後、ひし形の物体が落ちる。なんだと思い拾おうとしたが、雪の中に沈んでいってしまった。
「……今のがスノーマン。けど、壊したのは雪の部分だけ。あの系統の魔物は核を壊さないと周りにある物で体を作っていくから狙うなら核」
へぇ。今のがスノーマンなのか。あのひし形のやつが核か。周りにある物って言ったし、この核を土とかに触れさせたら土で体を作ったりするのだろうか。スノーマンなのに。
「色々知ってるんだな。リンは。それに強いだろ。ギルドにずっといたんじゃなかったのか?」
「……知識はアンシアが教えてくれた。必要になる時が必ず来るからって。戦い方もアンシアが秘密裏に外に出してくれた時に教わった」
アンシア結構危ない事して無いか?それバレたらギルド長の地位とか剥奪されそうな気がするが。
「……アンシアは後ろ暗い事を隠すのが得意。多分バレないから大丈夫」
それは大丈夫なのか?まあ、そういう事なら是非俺の方にも協力してほしい事があるのだが。っと。
「お、やっと目覚めたのか。大丈夫か?」
(ん〜大丈夫だよ。少し寝ぼけてるけど。で、どんな状況?)
そのくらい記憶を漁ればすぐにでも分かることなんだがなぁ。
「ダンジョン潜って今6階層。リンを見つけて保護。7階層でなんかあるらしいから追加で捜索って感じだ」
この状況、側から見れば俺がぶつぶつと独り言を言っているようにしか見えない。リンもいきなり話し始めた俺に対してどうしたんだ?という顔をしている。
(は、早くない?僕がやった時は全然いってなかったはずだけど……)
「お前と俺とで考え方とか行動とか違うからな。それじゃ、変わってくれ。お前の依頼だし」
………。ふう。まさかそんな進んでたなんてなぁ。人探し、物探しするってなったら今度から吸血鬼に頼ろう。
「っていうか、雪!寒くないけど!それに、君がリン?」
僕が話しかけたらウサ耳がビクッと反応した。少し可愛いな。
「……反応が変わった。今度のは人間?でも、少し吸血鬼も残ってる。ハーフ?」
吸血鬼の方は何も言わなかったのか。まあ、そんな人にポンポン言う性格でもなければ、言うような事でもないしね。
「あー、僕は多重人格ってやつで、僕は人間、さっきまでのは吸血鬼ってわけ。秘密にしといてくれない?」
本人の前で変わったんだから隠す必要もないでしょ。秘密にしといてもらえれば。
「……ん。わかった。現状把握は出来てる?」
記憶を探って大体のことは把握出来た。
「うん、大丈夫かな。7階層に行くんでしょ?」
「……そう。もうすぐ階段に着く。さっきの独り言みたいなのから判断して寝起きだと思うけど、気を引き締めて」
「ん、分かったよ」
ふむ。結構しっかりしてるのかな?にしてもだ。記憶漁ってて思ったけど、色々とやらかしてるな……。竜を手懐けるってどういう事だよ……。それに忍者。もっと色々すれば簡単に倒せるのに……。
それから2、3分歩くと階段に着いた。
「……ここが階段。次が最後の7階層だけど、ダンジョンボスはいないはず。代わりの敵はいるだろうけど」
「ボスはまた今度って事だね。そっちは他の機会に倒すとするよ。今は忍者達の主だ」
リンと僕は階段を下りた。
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