第43話 また忍者
2階層にある階段は竜と戦った場所の少し奥にあった。3階層に行く前に少しの休憩と食事を済ませる。
「さて、行くか」
ダンジョン3階層へ。
そこは密林だった。樹々が生い茂り、綺麗な花も咲き誇っている。3階層の天井にまで樹は伸びており何らかの手段で上から行くのは無理そうだ。
「1階層は直通、2階層は迷路、3階層は密林か……」
樹々が多く、視界が悪い。
「ここでやり合いたくはないな……」
もし忍者が襲ってくるとしたらこの樹を利用して来るはずだ。忍者ならこの樹々の中でも楽々と移動し、樹から樹へと移動もするはずだ。忍者なら。
それに比べ俺は速く動けはするが、そんな立体機動的な事は出来ない。もしかしたら出来るかもしれないが、試すつもりはない。
「行くか……」
密林の中を進んでいくと、周囲に霧が立ち込めてきた。
「霧か……。視界がさらに悪くなるな……。これは視覚以外に頼った方が良い階層だな」
出来れば早めに抜けたい階層になった。
「周りに生えてるのは薬草とかポーション類になる物ばかりなのか。ここまで来れる実力のある薬師なら大儲け出来るじゃないか」
適当に薬草やら魔力草なんかを摘みながら進んでいく。
「この階層、だいぶ難易度高いな」
危険感知が背後から発動し、避ける。先程いた場所に何本もの針が刺さった。紫色の液体が針から出ている。まあ毒だろう。
「制限をかけた気配探知に引っかからない距離からの毒針か。やっかいな魔物もいるもんだな」
本で得た知識からスナイプビーという蜂がやったのだろうと思うが、こちらには超遠距離攻撃手段が今の所ない。ので、放置する事にした。
「一応、まっすぐ進んでいると思うんだが……どこに階段あるんだこれ……」
なかなか階段が見つからず時間だけが過ぎていく。
何か見つけるためのヒントなどはないのかと探してみても見つからない。
「……決めた。どうせダンジョンだ。元に戻るんだし、全部焼き払って霧も晴らしてやる」
現在ダンジョンに入っているのは俺だけだ。他に忍者達がいるが、どうせ敵だ。問題は無い。ここにリンとかいうウサギがいるかどうかだが、いないはずだ。幻術なんて使えるならこんな場所に隠れる必要性がないからな。
「炎纒」
あの竜が使っていたスキル炎纒を使用し、周りにあった木々に火を付けていく。火はどんどん燃え広がり、大炎上していく。
暗闇を出し、中に逃げ込み3階層に下りてきた階段の場所に暗闇を繋げ移動する。
このまま3階層にいるのは危険そうな為、一旦2階層に避難する。各階層は階段で繋がっているため酸素が常に送られている。バックドラフト現象が起こる事はないはずだ。
2階層で待ち続け、ある程度時間が経過し様子を見に行くと火はある程度収まり、焼け野原と化していた。霧も少し薄まっている。
「随分と燃えたな。霧もこれなら何とかなるか」
風魔法で適当に強い風を吹かせ、霧を飛ばしていく。新たに霧が出てくる事は無かった。もしかしたら霧を出す植物があったのかもしれないな。
「さて、この状況なら眼が使える」
3階層入り口から遠視で階段探しをする。それっぽそうなものが3つ見つかった。3方向バラバラで。全部確認すべく1つ1つその場に行ってみる事にした。
「これは……普通に階段だな。それじゃあ1個目が当たりだったか」
1つ目の場所に着くと、そこには階段があった。ちゃんと下に下りられるようになっている。階段に見せかけた罠というものじゃなさそうだ。
「こっちも、当たりなのか?どーなってるんだ?」
2つ目の場所も確認に行くと、遠視で見えた通り階段があった。こちら側も罠ではなさそうだ。下にちゃんと続いている。
「さて、3つ目はどうかと思って来たんだが、お前達か」
先程の遠視では確認出来なかった忍者達が3つ目の階段の前にいた。
「前回までと同じだと思うな?」
「何?っ!」
忍者が腕を振るい、そこから風の刃が飛び出してくる。風魔法のようだ。2階層での戦闘時は使われなかった魔法が使われた。前回とというのはそういうことでいいのだろう、きっと。
「忍者が魔法とはな。忍術はどうした?」
「それはお前が知らなくていい事だ」
前回戦った時にいた忍者が使った煙幕的なのは忍術じゃないのだろうか。
今見えている忍者が3人。他にもどこかに潜んでいると思う。
「それじゃあ、とりあえず邪魔だから死んでくれ」
雷纒、雷歩、クイックを使い、接近。短剣で人体の急所を狙ってみる。が、クナイで防がれる。そこにお返しということで風の刃を2つ縦と横で、十字の様に放つ。
忍者は風の刃で防ごうとしたみたいだが、1つしか相殺出来ず、もう1つの風の刃が腕を斬る。
「くっ……」
「魔法が使えるようになってもあんまり変わんないんだな」
前回は重力のせいで動きが遅くなったから少し苦戦したようなものだ。重力を使われないのならそれほど苦戦するような相手じゃないな。
「で、こいつはやられてるのにお前達は見てるだけなのか?」
俺と相手をしていた忍者以外動いていないのだ。何かあると思っておいた方がいい。
「片腕を失ったんだ。お前に勝ちの目はないぞ?」
「それはどうだろうな」
なに?っと反応した瞬間、自分が立っていた地面が崩れ始める。目の前にいる忍者には土魔法のスキルはない。動いていない奴らが両方共土魔法のスキルを持っていた。
「ちっ」
崩れる足場から離れ、違う足場に着地した瞬間にその場も崩れ始める。
「面倒な魔法を使ってくれるな」
足を地につけた途端に始まる魔法。この魔法のイメージをしていたから2人の忍者は動かなかったのか。
厄介だが、別に問題は無い。地に足をつけなければいいのだから。
「こうすれば特に支障はないからな」
空気を足場にすればいいだけだ。隼人が使ったという足に風を纏わせる魔法を少し自分流に改造させた魔法。あっちは思いつかなかったみたいだが、イメージさえあればこのくらい出来るってわけだ。
空中に立っている俺にクナイや魔法が大量に放たれる。
「やっぱかなりの数隠れてたか。だが、そんなの効かねぇよ」
糸に血を纏わせ、繭のように中に閉じこもる。魔法の衝撃やクナイが弾かれる音が鳴り、次第になくなっていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます