第41話 捜索
(気配探知を最大で常にやるからそうなるんだ。範囲を絞れ)
範囲を絞る?そんな事が出来るの?
(出来るに決まってんだろ。ちょっと変われ)
変われと言われたからには変わる。僕にはやり方わからないし。
「これは適当に範囲を決めて、それ以外を全部シャットアウトするんだ。その範囲に集中するためにな。あとはまあ気合いでどうにかなる。わかったか?わかったならやってみろ」
うっわ。説明下手か。最後諦めて気合いって……。まあ、やってみるか……。
えーっと範囲を絞るだっけ?うーん?こんな感じか?
頭の中で適当に自分の周囲20mと勝手に決めてみた。そこから先に意識がいかないようにその20mの中だけを隈なく、探るような感じで気配探知を使ってみた。
「おおっ!気持ち悪くならない!こんな事が出来たとは……。凄いな……」
(元々本に書かれてあった事だし、気配分かっただけじゃ黒服とかウサギ探すなんて出来ねぇんだけどな)
あ、そういえばこの前借りた本にそんな事書いてあったような……。それとそんな事言わないでください。気配探知無しで探すよりは気配探知有りの方がまだ楽だから!
とりあえず、20m範囲内で気配がある所を適当に周っていく。
20m範囲内を探っていたのだが、どうやらいないようだった。まあ簡単に見つかるとも思っていなかったので、いいんだけどね。
そんなわけで自分が調べた所以外の場所で20m限定気配探知を使い、調べていたのだが、
「うわっ、朝か……。結局今夜は見つからなかったな……」
朝になり、結局黒普通1人も見つからずに宿に戻る事になった。そのまま探していたいが、眠いからしょうがないのだ。人間、睡眠を取らないと倒れるものだし。あ、吸血鬼探してくれたりする?
(いいが、あのクラスメイト達への話し方とか変えるつもりはないぞ?面倒くさいし、吸血鬼だってバレてるんだからな)
あー、うん、それでいいならまあいいや。じゃあお願い。僕が寝たらその後頑張って。
目を瞑り5分もすると、意識が切り替わった。
「ありゃあだいぶ疲れてるな。ま、無理もないか。いきなり竜を相手にしたんだしな」
なのに普通に依頼を受けて休まずに夜から探し出すってんだからなぁ。
「人間人間と思っているんだろうけど、だいぶ、怪しくなってるんじゃねぇのか?僕の方よ。少しは自分の事を考えろっての」
「大丈夫です。私がテツ君の事を把握してますから」
自分に言い聞かせるように話していたのだが、後ろから声をかけられてしまった。
「そうかい。ならミアからも言っておいてくれよ。俺が言ってもそこまでちゃんと受け取らないだろうからな」
「わかってますよ。吸血鬼の状態のテツ君も無茶はしないで下さいね?」
「わかってるっての。ってか普通に会話してっけど、俺が吸血鬼状態だってよく分かったな」
見た目は変わっていないから、口調とか仕草、態度などしか変わらないのだが。
「私は視えますからね。見分けるくらいどうって事ないです。それに吸血鬼テツ君と話すのはこれで2度目ですからね」
2度目ってつまり1度目の宿の時のあれはバレてたって事か。
「あれバレてたなら言えばよかったのに。まあいいけど。そんじゃ、行ってくるな。他の奴ら頼む」
「言われなくてもわかってます!テツ君の大切な仲間ですからね」
さて、とりあえず手当たり次第なのは変わらないわけだが、やはり隠れたり出来そうな場所っていうのを探すのが一番だと思う。
この街で一番隠れやすそうといったらここ以外ないと思う。
そう、ダンジョンだ。
現在、ダンジョンは封鎖中で、常にギルド職員が2人体制で見張っている状態のようだ。
「すまない。ギルド長、アンシアからの依頼でダンジョンに入りたいんだが、いいか?」
「ギルド長が直接ですか?何か、証明出来るものはありませんか?無い限りここは事件のために封鎖中なので、通す事は出来ないのですが」
ちっ。ギルド職員には伝えておいてほしいな。
「その事件のための依頼なんだが……。ま、いいか。証明出来るものがないから、貰ってこよう」
「では、お待ちしております」
はぁ。全く。とりあえず、ギルドだ。
「ギルド長に鉄条 零が話があるって伝えてくれ」
「ご用件は何でしょうか?」
「依頼の件についてだ」
「かしこまりました」
程なくして職員が戻ってきた。後ろにはギルド長の姿もある。
「私に何の用でしょうか〜?お話するべき事はもうしたと思うのですが〜」
「依頼の証明書みたいなのをくれないか?ダンジョンの中とか探りたいんだが、封鎖中の今、証明出来るものないと入れてくれないわけだ」
「あぁ〜そういうことですか〜。それでは少し待っててください〜」
それから5分くらいすると、ギルド長が戻ってきて、紙を手渡してきた。
「これが証明書です〜。調査で必要な時はそれを出してください〜」
「わかった。それじゃ、またな」
さて、証明書が手に入った事だし、ダンジョンに入れてもらうかね。
「これが証明書だ。入ってもいいか?」
「はい、確かに確認しました。お手を煩わせてしまい、申し訳ありません」
「別にいいさ。それが仕事だろうからな」
さて、ダンジョンだが、記憶だと2階層までしか行ってないんだよな。
とりあえず入って気配探知をしてみたが、1階層には魔物以外の気配は無いらしい。
「あんまし、邪魔するなよな」
出てきた魔物に対して血針を放つ。1階層程度の魔物なら血針が通用する。下に行く程強くなる為どこら辺で銃を出す事になるかわからないが。
雷歩を使い、すぐに2階層へ下りる。
誰もまだ到達した事がないというダンジョンの奥深くで話し声がする。
「こちらの仲間になれ」
そう言ったのは黒い忍者装飾を身に纏った男だ。
「……イヤ」
黒忍者の言葉に対し、否と答えたのは白色の髪に、特徴的なウサギの耳を持ったとある少女、リンであった。
「何故断る?ウサギは犯罪者扱い、こちらならそれが変わるのだぞ?」
「……リンは構わない。アンシアは優しくしてくれるから、他の人がどう思ってても」
アンシアは常に心配をしてくれてた。リンがどんなに突き放しても世話をし、他の人が止めた方がいいと言ってもアンシアは止めなかった。
「ほう……。ならば、そのアンシアとやらを殺すか」
「……それは無理。貴方達みたいな私の幻術も見破れない人達は返り討ちにあうだけ」
「我らが幻を見破れないと?」
「……この首輪を付けた時点でそう言ってるのと同意」
リンの首には傍目から見ればピンクの可愛らしいチョーカーが付けられているが、それはただの偽装された呪具でしかない。
「我らが無理でも主様ならば簡単に捻り潰せるぞ?」
「……虎の威を借る狐ね……」
「ハハッ。それは異世界の諺だネ。ウサギの君がどうしてそんな事知ってるのかネ?」
「これは!主様!」
黒忍者は跪き、リンは睨む。
「おやおや、そんな睨まないでくれヨ。別に君を殺したり、ウサギを滅ぼす訳じゃ無いんだからサ」
「……私を連れて来た理由はなに?」
「そこの忍者が言ったように仲間になって欲しいからサ。かつて、ある一匹のウサギがしたような事をして欲しいだけサ」
「……そんな事、するわけがない」
「ま、だろうネ。だからこそ、君の希望を潰してあげよウ。そうすれば、君は僕達に従わざるを得ないのだからネ」
「……アンシアは貴方達みたいな奴には絶対に負けない」
「ほうほう、それは楽しみだヨ。丁度今、誰かがダンジョンに入ってきたようだネ。しかも1人デ。そのアンシアとやらかもネ」
「……」
「黒、始末に行って来なさイ。いくら連れてってもいいでス。死体は必ず回収してくるこト」
「ハッ!了解しました!」
その場から瞬時に黒忍者が消える。
「さてさて、楽しみですネ。いったい何処まで来れるのカ」
黒忍者に主と呼ばれた緑髪の男は薄気味悪く笑うのだった。
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