第40話 依頼詳細
みんなが寝静まった深夜。
僕は動き出す。吸血鬼状態ではない。僕の意思でだ。
まだギルド長には詳しく話を聞いてないけど、黒服なら見た目でわかるからね。さっさと依頼を終わらせたいんだ。だってここに来たのはこんな依頼をする為じゃなくダンジョンでレベルを上げる為だから。
「で、何で貴方達が部屋の前にいるんですか?」
部屋を出るとそこにはギルド長がいた。しかも2人。アンヨドとポートのギルド長だ。
「いや〜行動始めるなら深夜かなと思っていたんですよ〜」
「俺は止めたんだがな。すまなかった」
「まあ、いいですよ。詳しく聞いてませんでしたし。で、何でレオンさんがいるんです?アンヨドはどうしたんですか?」
「あー、それな。こいつが説明しただろ?友人に守らせるって。それが俺なんだわ。護衛向きのスキルもあるしな。で、アンヨドの方だがこいつに呼び出されたんで、職員に任せてきたってわけだ」
「レオンさんが護衛ですか。それなら安心出来ますね。あの時は本気出してなかったでしょうから」
あの時の戦闘はレオンが優勢だったが、今思えば本気を出しているようには思えない。
「さて、それじゃあここで話すのも迷惑ですし、ギルドに行きましょうか〜」
アンシアと共にギルドに向かう。レオンは護衛として残るそうだ。
「さて、それじゃあ依頼の話をしましょうか〜」
「ですね。捜索するのは黒服と犯罪者、黒服の方は見た目で判別がつきますけど、犯罪者の方はわかんないんですよね。教えてくれます?」
アンシアの雰囲気が変わった気がした。何かその犯罪者と関わりでもあるのだろうか?
「はい。犯罪者の名前はリン。女の子で見た目は小さな幼子です。特徴としてウサギ耳が付いてます。ウサギ耳を持つ者は基本、姿を見せないので、見つけたらリンだと思って結構です」
ふむ。ウサ耳か。獣人って事か。そういえばこっち来てからまだ獣人見てなかったよね。エルフとかも見てないし。
「まだ小さな女の子が犯罪者ですか。その子はいったい何をしたんです?」
「
「え?」
「あの子は何もしていないんです」
「それは……じゃあなぜ犯罪者に?」
「……ウサギ耳を持って生まれてしまったから、です」
それは、幾ら何でも酷すぎやしないだろうか。ウサ耳が何を意味しているのかは知らない。だけど、それを持って生まれたから犯罪者というのは……。
「私は、リンに自由を与えてあげたいと思っていました。不遇な境遇にあってしまったリンをちゃんとした、幸せな人生を歩ませてあげたいのです」
「まず、ウサ耳について聞いてもいいですか?僕はその辺り何も知らないので」
美智永さんなら何か知ってそうな感じはするけどね。
「そうですね。まず、この世界にウサギ耳を持つ個体は限りなく少ないです。同族同士で交配しない限り、ウサギ耳を持つ子は産まれてこないと言われていますから」
なるほど。だからこそ数が少ないのか。
「だけど、それならウサギ耳を持った者達が密かに隠れ住んでいるような集落とかがあるんじゃないですか?自分達の存在を隠すための」
「ええ。あるとされています。しかし、ウサギ耳を持つ者は必ず幻術といいますか、幻を見せるスキルを持っていて発見に至った人はいません」
幻か。それがあれば隠れて過ごせるだろうね。しかもみんな持っていたら見破れる人なんていないだろうし。
「そんな隠れている種族がどうして犯罪者になったんです?」
そう。問題はここからだ。自分達の身を隠して過ごしてきたのに、なぜ犯罪者になっているのか。どこかで種族そのものが犯罪者扱いを受ける大きな事件があったに違いない。
「その1人が、魔王の組織に加わったからです。それもかなりの被害を出す程の最悪な事態を起こしました」
「魔王の組織所属に最悪な事態ですか。その最悪な事態というのは?」
「大量殺人です。特に強力な冒険者や王族など、魔王に害をなすとみなされた者達を片っ端から殺されていきました」
「幻ですね?それで殺し回っていたと」
「はい。そのウサギが捕まるまで、かなりの冤罪も発生しました。そういった諸々の事情からウサギは犯罪者扱いを受ける事になったわけです」
そのウサギだけが悪いわけだが、上はウサギそのものを危険視したというわけか。まあ王族とか強力な冒険者を殺しまくった相手だし、その判断は普通なんだろうな。
「そんな理由があったんですか。でも、それキツくありません?ウサ耳持ってたら幻使えるってことは、そのリンって子も使えるわけじゃないですか。幻を見破るなんてした事ないですし、出来るとも思えませんよ?」
吸血鬼ですが、僕は一応普通の人間ですし。
「そこはその眼を使っていただければ大丈夫かと」
眼っていうと、鑑定だよね。
「あの、一応なんで知ってるか聞いていいですかね?」
「私達ギルド長はお婆様と関わり合いがありますので」
お婆様ってあの?宿屋の?あの人何者だよ。
「はぁ。鑑定使えばわかるんですね?」
「はい。ですから貴方に依頼したわけです」
そこまで考えられての上ってわけね。
「ま、わかりましたよ。それじゃあ探してきます。そちらもお気をつけて」
「はい〜。そちらこそ〜」
僕はギルドを出て、とりあえず1番高い建物の上に立った。闇雲に探すのは面倒だからね。
黒服はこっちの気配があると絶対見つからないように消してくるから、隠蔽かけて、遠視である程度の距離を見えるようにする。その後は気配探知と鑑定の魔眼だ。
「うっぷ………」
吐きそうになった。何これ人いすぎ。アンヨドでこうならなかったのは人がそんなにいなかったからか。
「これ、どーするのさ……」
気配探知が使えないって人探し辛すぎなんだけど。どうやって探せっていうんだよ、これ……。
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