第39話 みんなに

 どう説明しようかねぇ。何言われるか……。

 とりあえず、みんながいるギルドの受付まで戻ってきた。


「待たせちゃったみたいだね」


 みんなはもう冒険者達の手当てなどを終わらせて待っていたようだ。


「いや、そこまでじゃないさ。今さっき終わったくらいだからな」


「そっか。それじゃ、宿に戻ろうか。ちょっと話さないといけない事もあるし」


「ん、そうだな」


 みんなで宿に行く。途中、また何か見られているような感覚があった。いったい何なんだろうか。




「さて、それじゃ話さないといけない事ってなんだ?」


 宿に着くなり、隼人がそう切り出してくる。


「うーんと、依頼を受けたんだよね。指名依頼」


「……それだけか?」


「そんなわけ。内容が内容なんだよね。まず、今回の事件にあたってギルド側はダンジョンを一時封鎖、街の出入りも禁止するみたいなんだ」


「それは……」


「そんな事したら冒険者はギルドに殺到するんじゃないのか?」


 神代君が僕がギルド長に言った事を言う。


「うん。僕もそう言ったんだけどね。それよりも死者が出るかもしれない方が問題だって言ってね」


「それはまあそうだな。つまりギルド側は、この街で起きたこの事件を解決するまで人1人外に出さない事に決まったって事でいいんだな?」


「うん。それでいいと思う。ダンジョンで起きたからには街の中に犯人がいるだろうって考えだろうからね」


「でも、犯人がダンジョンの外、街の外からこの事件を引き起こしたって可能性も無くはないんじゃないかしら?そこはどうするつもりなの?」


 美智永さんの疑問も尤もだ。


「そこで僕が請けた依頼に話が戻るわけだ。内容が犯罪者の捜索。僕が街の外に出る許可は貰ってある」


 黒服の事は伏せることにした。だってそれで隼人達が狙われたらダメだし。


「なるほどね。そういう事。で、それは鉄条君1人でって事なんでしょう?」


「うん。まあそうなっちゃうかな」


「なるほどな。で、話したからには俺たちになんかして欲しいんだろ?」


 さすが隼人。よくわかってる。


「うん。もしかしたらみんなが狙われる可能性もある。だからなるべく宿から出ないでほしいんだ」


「俺はまあダンジョンも行けない、外にも行けないってなったらやる事もないし、宿から出ないかもな」


「私もそうね。まだ読んでない本もあるし時間を潰すには丁度いいわ」


「私もだね。特に用事もないし」


「だな。俺もだ」


「私もまあ従いましょう。借りがありますからね」


「ま、俺も最近はずっと依頼をしてたし、たまには休んでもいいか。鉄条、力が必要だったら言ってくれよ」


「うん。その時はよろしく」


「ミアもですか?」


「うん。ミアには怪我をしてほしくないからね」


「わかりました!」


 ふぅ。よかったよ。みんな素直に従ってくれて。もっとなんかあると思ってたけど。


「にしても、やる事もねぇしなぁ。あ、そうだ。鉄、あの黒球出してくれ。3つほど」


「ん?いいよ。はい。けど、いったい何に使うの?」


「まあちょっとな。実験だよ実験」


「ふーん。あ、黒球で思い出した。武器作ったんだよ。はいこれ」


 暗闇に入れてあった武器を取り出す。神代君が来る前に作ったから神代君の分はないんだ。女子の分も。


「お、サンキュー。事件解決したら試し斬りだな」


「この大剣今使っているのより軽いな……」


「あれ、軽いとダメだった?」


「ああ、いやそんな事はないぞ。軽いとその分動きやすくなるし、扱いやすくもなるからな」


 ふーん。大剣にも色々あるんだねぇ。今度作る時は重さとか考えてみようかな。


「私達にはないの?」


 美智永さんが聞いてくる。


「今回作ったのは僕のと隼人のと近藤君のだけなんだよね。神代君が来る前に作ったから神代君の分は無し。女子組の方は何使ってるのかわかんないから」


「私のは知ってるはずだよね?」


「うん、スタッフだよね。けど、さすがに鍛冶では作れないんじゃないかなぁ」


「なるほどね。ちなみに私の武器は3つね。剣でもいいし、槍でも、弓でもいい。よろしくね」


「あ、はい」





「ミアちょっと」


「はい。なんですか?」


「少しの間ここにいてくれる?」


 今いるのは男子部屋だ。女子組はミア以外全員部屋に戻っている。


「いいですよ。待っていればいいんですよね!」


「うん、ありがと」


 ミアを男子部屋に残し、女子部屋に行く。ノックをするとすぐ開けてくれた。


「それで?私達に何の用なの?」


「あー、うん。ミアに贈り物をしたいんだけど、何を渡せばいいのかなって思って」


「同じ女子の私達に相談に来たってわけね……」


 小っ恥ずかしくなるので、早めに済ませたい。


「うーん……。そういえばミアちゃんっていつも花の髪飾り付けてるよね」


「あー、あれね。アンヨドでミアと買い物してる時に買ったやつだよ。ミアが気に入ったみたいだから買ってあげたやつ」


「……もうそれ、贈り物してるんじゃないんです?」


 王女の言葉でそういえばって思った。あれって対外的に見れば贈り物になるのか。そっかー。


「前回のは買ってあげただけだから、まだ贈り物はしてないってことで。それに今回は一応付き合うって事になったから贈ろうと思ったわけだし」


「なかなかいい心がけですね。それじゃあ何がいいか考えましょうか」


 王女も考えてくれるのは嬉しいが、王女だしなぁ。金銭感覚狂ってなきゃいいけど……。


「宝石なんてどうです?」


 はいきた。ダメだこりゃ。


「そんなの持ってないし、買うお金もないから!」


「そういえば、そうでしたね」


 はぁ。もっとまともな案は無いのだろうか。


「うーん、ミアちゃんなら何でも嬉しいんじゃない?」


「うん、喜んでくれるだろうけどさ。何でもっていうのはちょっと……」


「それなら、自分で作ってみたらどう?鉄条君は作れるようなスキル持っているでしょう?」


「ああ。確かに。そうだね。うん、それにしよう。ありがとう、美智永さん」


「どういたしまして」


 お礼を告げて、男子部屋の方に戻る。ミアはちゃんと待っていた。隼人達に色々質問されていたようだが。


「ミア、もういいよ。ありがとうね。戻っていいよ」


「あ、はい。わかりました」


 ミアが部屋を出ていく。ミア1人なら他にも用事はあったんだけど、ここには隼人達もいるからね。


「鉄ー、据え膳食わぬは男の恥って知ってるかー?」


「それくらいは知ってるけど、いきなり何さ?」


「いんやー、なんでも」


 ……。はぁ。もういいや。今日の所はもう。明日からはどうするかわからないけどね。

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